豊永 憲治(とよなが けんじ)
研究紹介
固有値は、自然科学、工学の分野にとどまらず、近年さまざまな分野で重要な意味をもち利用されてきている。代数的な固有方程式の解である固有値と、幾何的なグラフ構造の間の関連性について研究し、幾何的な構造から代数的な固有値の分布についての新しい知見を導くことを研究している。テーマ1:スペクトラルグラフ理論の研究
概要
離散数学の分野において、行列の固有値とその行列の非零要素が表すグラフ構造に関するグラフスペクトル理論の研究が進んできている。特に固有値の多重度はグラフの構造に多くの制約をうけることがわかってきた。幾何的な構造から固有値の存在に対する制約を考察することで、さまざまな分野で必要とされる代数的な固有値を幾何的な側面から研究することを目的とする。グラフが木構造の固有値の分布についてはよく解析されているが、一般のグラフ構造をもつ行列に関しては、固有値の多重度とグラフ構造の関係は十分な研究結果が得られているとは言えず、それには固有値解析の難しさが関係している。一般のグラフ構造をもつ行列に対し、固有値とそのグラフ構造の関連性、およびその摂動における固有値の変化について研究を行っている。
キーワード
固有値、グラフ、多重度
テーマ2:グラフスペクトルの工学への応用
概要
グラフスペクトル理論は、化学や工学の分野で利用されてきている。代数的な固有方程式の解である固有値と、幾何的なグラフ構造の間の関連性をもとに、グラフスペクトルの性質を数値計算分野へ応用することを検討している。特に、解をある区間に包み込むことで、数学的に解の存在を保証する精度保証付き数値計算への応用を試みる。扱うシステムが多重度の高い固有値をもつ場合は、扱う行列が非正則になり、従来の方法では狭い区間の中に固有値の存在を保証することが難しい場合がある。グラフスペクトル理論を用いることにより、多重度が大きい固有値に対してその精度保証付き数値計算が期待できる。また今後、グラフスペクトル理論の工学、情報学分野へのさらなる応用を検討中である。
キーワード
固有値、数値解析