2022.03No.153(オンラインNo.35)

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ラジオ番組『天伯之城ギカダイ』

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もくじ

Chapter1天伯之城 ギカダイ

天伯之城 ギカダイ

 豊橋技術科学大学はエフエム豊橋(84.3MHz)とのコラボレーションにより、FMtoyo.png
本学のアクティビティを広く皆様にご紹介するラジオ広報を放送しています。その名も「天伯之城 ギカダイ」。
 https://www.tut.ac.jp/castle.html ←こちらより視聴可能
 エフエム豊橋の人気パーソナリティ渡辺欣生さんが、毎週、本学のいろいろな研究室、サークルなどを訪問し、普段、素朴に思う技科大の「なに?なぜ?どうして?」を分かりやすく紹介しています。

Chapter2Lab in a Bento Box 弁当箱サイズの小さな血液分析装置の開発

機械工学系 助教 岡本 俊哉

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Q 先生は"お弁当箱サイズ"の血液分析装置を開発中ということですが
体格のいい先生のお弁当箱と僕のお弁当箱では大きさが違いそうです。

A この装置はだいたいCDケースの大きさです。病院では血液を使って抗体検査やアレルギー検査をしますが、今の検査装置は巨大で数億円もします。大きな病院にしか置けず、結果がわかるのに時間がかかります。小さくて数万円のものができれば"まちのクリニック"にも置かれるようになって検査のハードルがぐっと下がると思うんです。

Q そもそも装置はなぜ大きくて高額になっちゃうんですか。
A 検査は血液や唾液を試薬と反応させたり、反応させた容器を洗浄する複雑な工程を絶妙なタイミングで正確に行うことが求められるので、装置がどうしても大きく高価になるのが理由でしょう。そこで我々は、こういう"マイクロ流体チップ"を作って、小さくて安価でしかも複雑な操作をこなす装置の開発を進めています。

Q はい。ここにそのマイクロ流体チップがあるんですが、ホントにCDケースの大きさです。ていうかホントにCDケースですよねこれ。マイクロチップって聞いたのでLSIみたいなのを想像していたんですがCDケースにCDのようなディスク状のものが入っています。ディスクには透明のゴムのような厚さ3mmほどのものが貼ってあって、よく見るといくつかの小さい穴があいていて、そこから透明の線みたいのが複雑なパターンで回路みたいに巡らされています。
A この穴に試薬などの液体を注入してCDみたいに回転させると、張り巡らされた流路を液体が遠心力で流れていきます。抗体検査は時間差でいろんな工程を手順よくこなす必要があるんですが、複雑な流路は水時計みたいに絶妙なタイミングで検体と試薬を反応させたり容器を洗浄したりするよう設計してあります。これは我々が5~6年前に考案した独自のシステムで「ウォータークロック回路」と呼んでいます。

Q すごいですよ皆さん。細い流路が金管楽器の管みたいに納められてるパターンが芸術的に美しくて、拡大して壁に貼ってインテリアにしたいです。
A このパターンは検査の種類で変わります。いま研究は精度を上げる段階に入っています。マイクロ流体チップ上では、液体の表面張力の具合に影響されやすく、温度湿度の違いで結果が変わってしまいます。実用化を目指し、その影響を想定した上でより高い安定性をもった制御方法の開発に取り組んでいます。

是非頑張って下さい。

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Chapter3再帰反射材の研究

建築・都市システム学系助教 袁 継輝

tempaku153_yuan.jpgQ 今年の夏も暑くなりそうですが、先生は暑くならない研究をしてるとか。
A はい。地球温暖化やヒートアイランド現象でますます暑くなっている都会ですが、建物の壁が日中に太陽の熱を吸収して、夜になると放熱して都市を暑くするんです。それを防ぐため、いま建物の外皮には高反射塗料が使われていることが多いです。

Q そうなんですか!それで建物が熱くなるのを抑えているんですね。
A はい。しかし、反射した熱がほかの建物や道路に当たって吸収されて「都市のキャニオンに熱がたまる」という現象が起きています。

Q それでは結局ヒートアイランドのままですね。
A そうなんです。それなら反射する方向を、全部再び太陽に向ければいいだろうという発想があります。材料としては「再帰反射材」となります。再帰反射材の塗料を建物に塗れば、建物に当たった太陽光の45%以上を、もとのルートに返すことができるといわれます。でも再帰反射材の塗料はまだ存在しないんです。

Q そこで先生たちが研究しているんですね。研究の糸口はあるんですか。
A はい。実は道路標識の表面は再帰反射材の原理を使っています。

Q あ!だから標識って夜道を走るクルマのヘッドランプにあんなにくっきり浮かび上がって見えるんですね。
A はい。ここに標識で使われている標識のサンプルがあります。このウロコ状のパターンにガラスのビーズが無数に入っています。ガラスのビーズは道路のセンターラインの塗料にも使われている材料です。再帰反射材の材料としては、ビーズの他にプリズムもあります。これがビーズのサンプルです。

Q わー!先生が様々な大きさのビーズのサンプルをケースに入れて持ってるんですが、可愛くてきれいで、これ絶対小さい女の子が喜びますよ。
A たくさんのビーズの球の中に入った太陽光が球の中で反射して、出るときにはもと来た方向に出ていくという仕組みです。このサンプルの場合、50%が元のルートに返せます。欠点としては、太陽高度が高くなると鏡面反射が強くなることがあります。そうするとまぶしくて、人の健康や暮らしに影響を与える恐れが出てきます。それをどう抑えるかも今、研究しているところです。ビーズのメッキを半分にしたり3/4にしたり・・・

Q ビーズにメッキするんですか。
A はい。ただ、小さなビーズはメッキが難しくて。化学とかバイオとか、いろんな分野の先生と相談しながら鏡面反射を抑えたビーズを開発中です。

ありがとうございました。



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