概要
Li-(Ta,Nb)-Ti-O系材料は、ユニークな周期構造(超構造)を発現します。この材料を原子レベルで均質性を観察しながら合成し、0.35MPという常圧の3~4倍程度の圧力で、今までの合成時間に比べ1/6程度の時間で、均質材料の合成ができることを初めて見出しました。この合成手法を用いて、結晶構造・組成制御による母体設計を行い、様々な蛍光体酸化物の合成を行っています。また、高度な観察・解析技術により、材料の正確な物性の機構解明を行い、その知見を材料設計にフィードバックしながら研究を進めています。
従来技術
短時間合成には様々な手法が報告されてきましたが、大型の装置が必要な場合も多く、よりコンパクトで、より使いやすい技術が求められます。
優位性
加圧ガス雰囲気炉は、常圧の3~4倍程度の圧力で、汎用タイプの電気炉焼成に比べて、約1/6の時間での焼成ができることを見出しました。そのメカニズムについては論文を参照ください。Materials2018, 11, 987; doi:10.3390/ma11060987
特徴
【研究成果】
1.Li-Nb-Ti-O(LNT)系固溶体による加圧場を使った低温・短時間合成の確立と機構解明
LNT(Li1+x-yNb1-x-3yTix+4yO3)材料のユニークな周期構造(図1)は、Tiの拡散により進行しますが、均質な材料合成には長いもので10日間焼成に時間がかかりました。そこで、加圧場(図2)を使用し、低温・短時間合成を試み、0.35MPにおいて短時間での均質材料合成に成功しました。(加圧ガス雰囲気炉は2019年2月特許登録)
2.紫色励起Li-Ta-Ti-O(LTT)系赤色蛍光体の実用化に向けた取り組み
LTT:Eu,Sm 蛍光体について、400nm 励起による色純度の高い赤色発光を示す材料の開発を行い、高温・高湿度試験、材料の安定性、内部量子効率98%を示すことができました(図3)。しかしながら、発光中心イオンのEu3+による時間応答性は、YAG蛍光体に比べて低く、この点を補うための改良が課題です。
3.透過型電子顕微鏡等による原子レベルでの正確な分析と機構解明
材料の物性は、結晶構造や組織と密接に関わっており、原子レベルでの正確な解析により、「なぜ高い物性値を示したのか?」という機構解明をすることができます(事例:図4)。材料のメカニズム解析には最新装置も必要ですが、それ以上にTEMの観察・解析の高いスキルも必要となりますので、私たちはその解析力の向上を目指して研究を行っています。(日本セラミックス協会 2010年学術賞受賞)
実用化イメージ、想定される用途
加圧雰囲気炉については、すでに実用化しており、0.3~0.4MPaという範囲で、他の材料系でも焼結時間の短縮が実現できています。様々なセラミックス材料の合成に利用できます。
実用化に向けた課題
赤色蛍光体については、Eu3+イオンの時間応答性が低いという課題があります。今後、透明セラミックスの合成ができれば応用範囲も広がる可能性に期待しています。
研究者紹介
中野 裕美 (なかの ひろみ)
豊橋技術科学大学 教育研究基盤センター 教授
researchmap
研究者からのメッセージ(企業等への提案)
この技術にご興味をお持ちの企業の技術相談や、共同研究等をご検討の際にはご連絡ください。
知的財産等
掲載日:2021年04月23日
最終更新日:2021年04月23日