概要
無線電力伝送用コイルなどの高周波受動デバイスの回路モデリングを行う研究を行っています。具体的には、モーメント法と呼ばれる数値電磁界解析手法を基にした独自手法である「インピーダンス展開法」を用いており、これにより事前の数値データなしに回路モデルの素子定数を特定することができます。
従来技術
①古典的な公式を用いる方法
②フィッティングを用いる方法
③部分要素等価回路法
優位性
①とは異なり、複雑な構造にも適用できます。
②とは異なり、事前の数値データが不要です。
③よりも小規模な回路モデルが得られます。
特徴
例えば、右上図のような無線電力伝送システムをモデル化対象として考えます。送電・受電コイルは先端が開放された構造をしているため、その電流分布は不均一になります。そのため、(1)の代表的方法である「ノイマンの公式」によるインダクタンスの特定はできません。また、(3)の部分要素等価回路法では、解析対象を小さな電流要素と電荷要素に分割し、それらを未知数とする回路モデルを立てるので、右上図のように構造が複雑だと回路モデルの規模が大きくなってしまいます。
一方、独自手法であるインピーダンス展開法では、まずコイルのモード電流を求めるこで、システム全体の電流要素数を削減します。その結果、右下図のような小規模な回路モデルが得られます。このように回路モデルに落とし込むことにより、送電側と受電側の力変換回路との一体的な回路シミュレーションによる設計が可能となります。
また、コイルの周辺に金属・誘電体・磁性体があっても、回路モデルのトポロジーは不変で、パラメータの変化として表せます。
実用化イメージ、想定される用途
・無線電力伝送用コイル・電極
・電力変換回路用変圧器
・プリント基板上配線間クロストークのモデル化
実用化に向けた課題
・誘電体や磁性体の損失の考慮
・誘電体や磁性体の不均一性や異方性の考慮
研究者紹介
羽賀 望 (はが のぞみ)
豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系 准教授
researchmap
研究者からのメッセージ(企業等への提案)
本手法は、アンテナ工学と電力工学の間にあるギャップを埋めるためのものです。電力関係の方でアンテナの知識が必要な方にはお力になれるかもしれません。
知的財産等
掲載日:2024年11月12日
最終更新日:2024年11月18日