4月4日に豊橋技術科学大学入学式を挙行しました
イベント報告 | 2025年4月 8日
4月4日に豊橋技術科学大学入学式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。若原学長はアカデミックガウンを着用し、式に臨みました。
- 2025年度入学式(大学公式YouTubeチャンネル)
若原学長からの式辞は次のとおりです。
豊橋技術科学大学は、今年度 学部1年次、3年次、大学院博士前期課程、博士後期課程 総計931名の入学者を迎えました。皆さん、入学おめでとうございます。また保護者の皆様、今まで一生懸命に育ててこられたお子様のご入学、心よりお喜び申し上げます。この祝福すべき日に、学長として祝辞を述べさせていただきます。
本学の名前になっている技術科学とは、技術を科学的アプローチで分析し、新たな理論体系を作り、これに基づいて新規な技術を生み出していく学問です。分かりやすい実例を挙げて説明すると、ライト兄弟がフライヤー号で初飛行した時代には、流体力学や航空力学と行った学術的な理論はありませんでした。しかし、飛行実験を重ねてデータを収集し、科学的アプローチで分析し、数学的表現を構築していく中で、流体力学や航空力学といった新たな学術領域が創出されました。この理論を用いて航空機が高度化さて、わずか50年の短期間で超音速機や超大型の旅客機が実用化されました。つまり、理論が先に有るのではないのです。工学の領域は、科学(サイエンス)で導かれた理論を技術として応用する分野と思われていますが、イノベーションは常にモノづくりを基盤とする技術的な挑戦から始まっています。
さて、大学は学問の最高学術機関であり、自ら問いかけ、学び、そして興味を突き詰められる場です。日本は1980年代には産業界も学術界も世界トップクラスでした。現在は、各国の発展もあり、トップとは言えない状況ですが、毎年日本人のイグノーベル賞受賞者が出ている事から分かるように、世界に認められる独創的な研究が行われています。また、スポーツや芸術、文化の領域で世界最高クラスの若者が多数輩出されています。メジャーリーガーの大谷翔平さんを代表とするように、世界で活躍している人々の共通する点は、自らの意志で、明確な目標を立て、目標達成に向けて挑戦する若者という点です。本学においても、ロボコン同好会が昨年NHK学生ロボコンを3連覇し、ABUロボコン世界大会は2023年に念願の初優勝を遂げるなど大変アクティブに活動しています。ロボコンに限らず本学の学生は、海外での実務訓練や、欧州の大学とのダブルディグリープログラム、海外で開催される国際会議での発表など、世界へ挑戦する学生が多数います。皆さんも、在学期間をフルに活用して海外へ挑戦してみてください。
次に、現在の世界状況は、武力紛争、エネルギー問題、災害など急激な環境の変化、SNSやサイバー空間の活動に於ける誹謗中傷などの懸念が広がっており、価値観の相違を合議ではなく主張を通すことで解決する様相が続き、先が読めない状況にあります。このVUCAと呼ばれる時代を生きていくためには、既成の常識にとらわれることなく、問題の根本となる原因を掘り下げて、解決策を導く知恵が重要になります。
皆さんは、インターネットを駆使して新しい知識を獲得し、AIを使って問題を解くことができます。しかし、AIは、解の無い問題をどの様に解いていくかという知恵は導いてくれません。AIを使いこなして、社会の課題を解決していく高度な技術者や研究者を目指す皆さんは、問題解決法を導く知恵を獲得することが在学中の課題になります。講義や実験に加えて、サークル活動や研究における試行錯誤や、相手の意見に耳を傾けた議論を尽くすことで、課題発掘力や目標設定と課題解決の方法論やマネジメント力などの知恵を養うことができると思います。
また、現在は急速に展開するAIやリアルタイム遠隔操作等が、社会の在り方を変えつつある時代でもあります。将来を見通すに際して、現在の様相が、1970年代に、電卓用に開発されたワンチップマイコンが、日々新しい応用分野を切り拓き、旧来の固定電話やテレビなどの中央集約的な社会システムから、現在の個人携帯型の情報端末を基盤とする分散型ネットワーク型社会へと大きな転換を導いた経緯が参考になると思います。重要なことは、この変革を牽引したのが、当時ベンチャー企業であったインテルやマイクロソフトを立ち上げた若者たちの挑戦であったということです。AIの社会応用も、若者の挑戦的な取組に追うところが大きく、これまでの常識を打ち破る新たな概念や制度が生み出されていくことでしょう。皆さんは、自分のアイディアで世界を変えるチャンスにあふれた時代に学びの場を得ている世代です。自分の専門に加え、新しい技術や学問に積極的に挑戦することをお願いします。皆さんの若く柔軟な発想に基づく斬新な研究により導かれた発明や発見が、次世代のイノベーションに繋がると期待しています。
ところで皆さんは、技術・科学の分野に取り組むための、明確な目標をもっていますか? まだの人は、焦らずに基礎を固めながら情熱を傾けられる目標を見つけてください。
私は高専を出て大学に編入学したのですが、高専3年生までは何を目指すべきか迷っている状況でした。高専時代に半導体工学に出会い、新しい機能を実現できる可能性にひかれて大学進学を決心しました。大学では、新たな友人、恩師との出会いが私を育ててくれました。 大学での学びと研究模索の過程で、光と電子による演算機能を融合した光電子集積回路の具体化というテーマにたどり着きました。 研究を進めるに際して、所属課程の講義では学べない知識が必要になることがありましたが、サークル活動や学生宿舎で知り合った他課程の友人の支援で学ぶことができました。また、多くの失敗も経験しました。指導教員は、私の失敗を責めず、解決策を自分で見出せるよう、「上手くいかないときには、じゃあどうする」を考えるのが、工学部だよと励ましてくれました。すばらしい恩師や友人との出会い、書物との出会い、失敗を乗り越えた成功体験が財産となりました。当時の友人とは、今も問題に直面した時に連絡を取り合って、切磋琢磨できる関係が続いています。本学の学生生活を通じて、専門分野の枠を超えた生涯の友といえる友人を作ってください。また、失敗は学生の特権です。 失敗を恐れて挑戦しなければ新しい発見はありません。毎日新たな出会いを大事に、常になぜを問いかけて、興味があることは「わかる」までとことん突き詰めることが大事です。突き詰めることで、得た深い洞察が、新たな気付きを導き、本当に自分がやりたいことへと繋がります。『失敗を恐れず未来に向かって挑戦し、世界にはばたけ』。この言葉を、これから学生生活を送る皆さんの新しい門出に際しての餞の言葉とします。