2023.03No.155(オンラインNo.37)

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ラジオ番組『天伯之城ギカダイ』

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もくじ

Chapter1環境DNAから土壌生態系を探る

応用化学・生命工学系教授 浴 俊彦

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Q 土壌生態系の分析というと、オケラとかミミズとか土の中の生物を調べる研究ですか。
A そういう大きいものから目に見えない小さなものまで土の中にいる全ての生物の種類や数を、DNAを分析して解析する研究です。
生物1匹1匹のDNAを調べるのではなく、土をまとめて採ってきて、土ごと中の生物をすりつぶし、出てきたDNAと土の混合物からDNAをきれいに取り出して分析します。



Q そんなことしたら生物全部のDNAがごちゃまぜになるのでは?
A なりますが、たくさんのDNAの塩基配列を調べることで、ごちゃまぜの生物を見分けることができるんです。我々は「リボソームRNA遺伝子」というもので分析しますが、その生物独特の部分が必ずあって、そこを含むDNAをPCR法で増幅して調べます。DNAってたくさんないと分析器にかけられないんです。その後は、技科大には短時間でごちゃまぜのDNAを1本1本分析できる装置があるのですぐ調べられます。



Q 土壌生態系の分析は、なにか私たちのくらしにも関係してきますか?
A はい。たとえば医学の分野では、腸内細菌の生態系は人間の健康にかなり密接な関係があることが明らかになりつつあります。それと同じロジックで、土壌生態系はそこに育つ植物との関係が密接にあるだろうと考えられます。もちろん植物が育つ要素は生物だけじゃなく、栄養素的なこと、pH、物理性などいろいろありますが、そういった部分は簡単に分析できるわけです。
生物を要因とする部分は、今まで調べる方法がなかったので議論にならなかったんです。つまり土壌生物について科学的に調べたという報告があまりないんですね。そんなことで、土壌生態系の研究は土と植物の関係に新しい知見をもたらしてくれると信じています。



Q 研究の成果が楽しみです。ぜひ豊橋の農家の皆さんにもご協力いただいていろんな畑の土壌生態系を調べられたらいいですね。
A いま日本の農業は、科学的なアプローチでやっていこうという流れがあります。 同時に有機農法を取り入れる流れもありますが、有機農法の今までよくわからないことが多かった部分にも今回の研究で科学的な答えが出せると考えて研究を進めています。



Q ありがとうございました。



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Chapter2干潟の地形を測る:大きな変化から小さな変化まで

建築・都市システム学系教授 加藤 茂

tempaku155_radio_kato2.jpgQ 先生の研究対象を教えて下さい。
A 干潟の砂の移動や地形の変化を調べています。
砂はサラサラで自由に動けるので、そこに波が当たったり流れがあると砂が動いて地形が変わるんです。もちろん見る見るうちにってことはありませんが、しっかり測っていくと変化していることがわかります。




Q 具体的にはどうやって調査するんですか。
A ドローンを使って空撮します。ちょっとずつ視点をずらした写真をたくさん撮って、そのデータをコンピュータで処理して写真の二次元的なデータから三次元的な地形のデータに変えています。なので、上から見た干潟のカタチだけじゃなくて凸凹の変化もわかります。数字で把握しているので、いつどこがどれだけ変化したか測れています。



Q いつから調査してるんですか。
A 2017年からですから5~6年。調査を始めたきっかけは、地元漁協の人たちが"ここら辺の干潟は少しずつ東に移動するんだ"と話すのを聞いたことで、調べてみると、普段はちょっとずつ東に移動しているのが、夏に台風が来ると西に押し戻されて、またちょっとずつ東に移動し始めるというのがわかって、この行ったり来たりの差し引きで、全体的に東の方に移動してきているんだということがわかってきました。 三河湾って冬になると北西の風が強く吹いて、それでできた小さな波が砂を少しずつ東に運ぶというのがあるかと思います。



Q 干潟の移動は、風による波が砂を運んで起こるんですね。実際に砂が動くのも確認されているんですか。
A 砂漠の風紋みたいに海底には"砂れん"と呼ばれる縞模様ができますが、あれは砂が運ばれている証拠だと我々は思っています。その動きが干潟の移動と関係あるのかどうかはまだわかりませんが、干潟の移動を見るような全体的な調査と、砂れんが示すような局所的な砂の動きの調査と両方調べてデータ化しています。



Q 空撮に加えて、水中の観測もしているんですね。
A はい。固定カメラの他、流速計、水圧計などを干潮時に設置して、満潮時に計測、また干潮時に回収してデータを集めています。水中カメラの前をヤドカリが横切ったりカワイイ画像も撮れてますよ。



Q 今後の調査も楽しみですね。
A ありがとうございます。先ほどもお話したように干潟の移動は台風の影響もあるので、夏秋の調査が重要ですが、今後は冬の調査もやりたいです。調査は学生が中心になってやってくれますが、海なので無理に連れて行くのも危ないので「誰か行ける?」と聞いて積極的に集まってくれる皆さんにお願いしています。冬は気候など厳しい条件下での調査になるので、学生との折合いを調整しながら頑張ります。


ありがとうございました。



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天伯之城 ギカダイ

豊橋技術科学大学はエフエム豊橋(84.3MHz)とのコラボレーションにより、tempaku_watanabe.png
本学のアクティビティを広く皆様にご紹介するラジオ広報を放送しています。その名も「天伯之城 ギカダイ」。
https://www.tut.ac.jp/castle.html ←こちらより視聴可能
エフエム豊橋の人気パーソナリティ渡辺欣生さんが、毎週、本学のいろいろな研究室、サークルなどを訪問し、普段、素朴に思う技科大の「なに?なぜ?どうして?」を分かりやすく紹介しています。

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