2021.07No.152(オンラインNo.34)

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ラジオ番組『天伯之城ギカダイ』

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Chapter1天伯之城 ギカダイ

天伯之城 ギカダイ

 豊橋技術科学大学はエフエム豊橋(84.3MHz)とのコラボレーションにより、FMtoyo.png
本学のアクティビティを広く皆様にご紹介するラジオ広報を放送しています。その名も「天伯之城 ギカダイ」。
 https://www.tut.ac.jp/castle.html ←こちらより視聴可能
 エフエム豊橋の人気パーソナリティ渡辺欣生さんが、毎週、本学のいろいろな研究室、サークルなどを訪問し、普段、素朴に思う技科大の「なに?なぜ?どうして?」を分かりやすく紹介しています。

Chapter2"目"は口ほどに物を言う?瞳孔から見るヒトの認知

情報・知能工学系教授 南 哲人

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Q モニターには、白バックに2つの黄色いドーナツ模様が表示されていて、一方は穴の部分がただ白く抜けているだけですが、もう一方はボカした感じでフワッと光ってるように描いてあります。
A もちろんどちらも実際に光っているわけではないですが、
光ってるように描かれている方を見ると、瞳孔が小さくなることがわかっています。

Q 眩しい「気がする」だけで瞳孔に変化があるってことですか。
A はい。さらに言うと「火」とか「太陽」とか眩しさを伝えるような言葉を見たり聞いたりするだけでも、瞳孔は小さくなるんです。明るさだけじゃないですよ。例えば「蛇」を見たときは瞳孔は大きく開きます。感情の高ぶりによって瞳孔に変化が起きるんです。

Q 明るさ以外の要因でも瞳孔に変化が起こるんですね。
A はい。数学が苦手な人が延々と数学の問題をやらされている場合も瞳孔が開きます。しかも面白いのは、3桁の問題を解いてる時より4桁、4桁の問題を解いてる時より5桁の問題を解いてる時のほうが、瞳孔の開きが大きくなるんです。つまり負荷量に応じて開き具合が変わるんです。ところで渡辺さん、これは何の絵かわかりますか。

Q 画面には白と黒のパターンが荒く描かれて、何が描かれているのかパッと見ただけではわかりませんが・・・あ!牛ですか。
A そうです。実はこういったものを見せて「わからないなー」「あ!わかった」という時の瞳孔の変化を調べたかったんですけど、瞳孔は明るさの変化にも反応しちゃうので、正確な結果を出すには見せ方を工夫しないといけなくて、こういった絵を用意しました。

Q なんか印刷をアップにしたようなドットのパターンが見えます。ところどころドットの密が変えてあって、何かが描いてあるようです。あ!ドットが動き始めました・・・あ!野球帽ですね。
A  そうです。これならドットが移動してるだけなので、明るさの変化の影響を受けにくく「わかった!」っていう時の瞳孔の変化が見られるわけです。で、もう一つ工夫したのが、これ6秒の動画なんですが、1.5秒経過したところで止めて「わかりますか」って訊くんです。で、また6秒まで見せるんです。そうすると、1.5秒の段階で「わかる・わからない」、6秒の段階で「わかる・わからない」というパターンが発生するわけです。1.5秒でわかった人の瞳孔はドーンと開いてます。
これだけでも面白いですが、もっと興味深いのは、6秒段階でわかった人とわからない人の瞳孔の変化が、1.5秒の段階でもう明らかに違うんです。つまり本人は1.5秒の段階で「わからない」と言っているのに、瞳孔は6秒後にわかることを予測しているんです。

Q えー!何ですかそれ!
A さらにもう一つ。瞳孔の変化で英語の能力を判定できるんです。
日本人はLとRの聞き分けが苦手ですが、被験者に「Right」と「Light」の音声をひたすら聞いてもらって、その間の瞳孔の変化を記録しておきます。
最後にテストを受けてもらって瞳孔の変化との関係を調べたんです。テストで20点満点とれた被験者の瞳孔は0.17大きくなっていて、7点だった被験者は瞳孔の変化ゼロでした。他の被験者のデータを合わせたものを表にすると、法則性が見えてきて、つまり、学習中の瞳孔の変化の大きさで、その後のテストの点数がある程度予測できるということなんです。

Q 「目は口程に物を言う」を実証するお話でした。

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Chapter3未来のロボットの人工筋肉ー高分子アクチュエーター

機械工学系教授 高木 賢太郎

tempaku152takagi.jpgQ 先生が研究する「人工筋肉」ってどんなものですか。
A 人工関節みたいに体に埋め込んで使うものではなく、ロボットを動かすためのものです。ロボットってたいてい電気モーターで動いていますけど、いくつか課題もあって、例えば電源が切れると固まっちゃって外から動かしにくくなります。
人工筋肉なら電源が切れたとしても外から柔らかく動かすことが可能です。人工筋肉のロボットは電源が入っているときも柔らかく動くので、人と触れ合うことが得意です。

Q "人工筋肉"って何で出来ているんですか。
A いろいろですが、例えば電気を流すと変形するプラスチック材料や,熱で収縮するプラスチック材料があります。
空気圧を利用するものもありますが1つ欠点があって、空気をためておくタンクや空気を送り込むためのコンプレッサーが大型になるので、ロボットが小さくても装置全体が巨大になってしまいます。その点、私たちが研究する高分子アクチュエータの人工筋肉は、人間の筋肉に似た特性があってコンパクトです。

Q 先生が取組んでいる人工筋肉にはどんなものがあるんですか。
A 今日は3つ紹介します。1つは「イオン導電性高分子」を使ったものです。厚さ0.2ミリのプラスチックの膜の両面に金メッキします。これに2~3Vの電圧をかけると動きます。

Q 水が入ったシャーレに四角いプラスチック片が浮かんでいます。電源を入れると・・・あ!左にキュインって動きました。先生が電気のプラスマイナスを変えると、あ!今度は右に90度動きました。なぜ電気が流れると動くんですか。
A イオン導電性高分子は水とイオンをたくさん含んでいて、電圧がかかるとイオンが片側にビュッと動きます。水はイオンと仲良しなので水もイオンが動いた方に移動します。このプラスチックは水を含むと膨らむ性質があるので
焼いたイカが反るようにプラスチックの板がキュッと曲がるんです。では次に「釣り糸人工筋肉」を紹介します。

Q よじったナイロン製の糸が20センチメートルほど、おもりをぶら下げて垂れています。これ、もしかして本当に釣り糸ですか。
A はい。ネットで買った普通のナイロンの釣り糸をよじったものです。これにドライヤーで200℃弱の熱風を当てます。(ゴ~)

Q あ!ゆっくりとおもりが上がっていきます。ナイロンの糸が縮んでいるんですね。これよじってないといけないんですか。
A よじらないと収縮は小さいんですが、よじってコイル状にすることで収縮が大きくなります。で、冷ませばまた元の長さに戻ります。最後にもう1つ、別の釣り糸人工筋肉を紹介します。同じくナイロン糸に銀メッキされたものに電気を流すと、ジュール熱で収縮するという人工筋肉です。では今から25Vの電圧をかけます。

Q はい、すぐに収縮し始めました。おもりがゆっくり上がっていきます。銀メッキすれば、ドライヤーがなくても電気で動くんですね。
A 私たちはこういった人工筋肉を使って、ロボットはもちろんハンディキャップを持つ人の補助をする装具の実現を目指しています。
補助装具も電気モーターのものがありますが高価なので、イオン導電性高分子や釣り糸の人工筋肉で安価な装具を作り、例えば薬局で買えて、汚れたら使い捨てるように使えるものを夢見ています。


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