2021.07No.152(オンラインNo.34)

文字サイズ

特集

ホーム > 特集

もくじ

Chapter1ギカダイ発 ベンチャーの星!阿部先生に突撃インタビュー!!

tempaku152abe_1.jpg

株式会社パワーウェーブ代表 阿部晋士氏

<主なプロフィール>
2015年3月 仙台高等専門学校専攻科 電子情報システム工学専攻 修了
2017年3月 豊橋技術科学大学大学院 博士前期課程 電気・電子情報工学専攻修了
2019年3月 豊橋技術科学大学大学院 博士後期課程 電気・電子情報工学専攻中退
2019年4月 豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系 助手(~2021年3月)
2021年3月 株式会社パワーウェーブ 設立・代表取締役社長就任
2021年4月 豊橋技術科学大学 未来ビークルシティリサーチセンター 特任助手 着任



■ベンチャー企業の立ち上げはいつ頃から考えていましたか?

ベンチャー企業の立ち上げを考え始めたのは博士後期課程在学中です。研究室で企業との共同研究を担当させていただき、研究室で培ってきた技術が社会に求められていることを実感して起業を考え始めました。しかし当時は日本学術振興会の特別研究員に採用されていたため副業・兼業が認められておらず、実際に活動を始めたのは教員採用後です。 教員の立場で豊橋市内の様々なイベントに参加させていただいたり、名古屋大学のスタートアップ支援や愛知県の重点研究プロジェクトを通して起業への準備を進めたりしていました。

■ベンチャー企業の発起人とパワーウェーブの設立年月日を教えてください。

発起人は私(阿部晋士)、大平孝特任教授、 水谷豊特任助手、豊橋市でITベンチャー企業を経営している種田憲人の4人。株式会社パワーウェーブを設立したのは、2021年3月22日です。

■立ち上げに向け、行ったことやその過程で大変だったことはありますか?

会社を立ち上げるにあたり、経営について必死に勉強しました。完全に専門外の事ばかりで知らない単語だらけの世界でしたが、研究で培ったわからないことにも諦めず立ち向かう根性でなんとか乗り切りました。一方でどうしても全てを勉強しきれないこともありました。「これは専門家に任せよう」と割り切り、専門家に相談できるところまで勉強することに決めて広い知識を身につけることにしました。やはり研究者なので深く気になってしまう部分もありましたが、なんとか好奇心を抑えました。
勉強だけでなく計画も重要になります。 技術については自信がありますが、それが売上にならなければ会社とは言えません。 また、売上が出ても経費が上回っては会社が成り立ちません。これまでの性能至上思考だけでなく、どうやったらそれがお金になるのかを考えました。さらに「それを実現するにはどうすればよいか」、「それを実行する人や道具、環境は?」とどんどんと考えを広げていきました。
必ずしも自分一人では答えは出ませんし、結論の正しさもわかり得ません。そこで、 定期的に経験者や専門家に相談し、考えを説明し、どんどんと精度をあげていきました。
数学の問題集とは違うのでどうしても絶対に正しい答えというものは得られません。自分が出した答えを信じて、十人十色の他人の助言を程よく吸収しながら進めていく不安も大変だったことの一つです。巻末の模範解答がついていない問題集をイメージしていただくと不安さがよくわかってもらえると思います。

■パワーウェーブという社名にはどのような意味があるのですか?

わかりやすいカタカナの単語を二つ組み合わせました。パワーは力、ウェーブは波です。私たちの会社は電力(パワー)をワイヤレスで伝えるワイヤレス給電技術が重要な役割を担っています。このワイヤレスの働きは電気を波(ウェーブ)として捉える波動工学が活躍しています。この2つを組み合わせて「パワーウェーブ」という名前にしました。
また、1965年に IEEE Trans. MTTに掲載された論文 Power Waves and the Scattering Matrix において電力を伝える波として登場するPower Waves という名前も参考にしています。

■パワーウェーブの事業内容について教えてください。

株式会社パワーウェーブでは、技科大で培った研究内容を基に「ワイヤレス電力伝送技術をシーズとした未来の基幹インフラの構築」を目指しています。これからの社会では自動運転や自動ロボットなど移動するビークルや物が急速に増えていきます。現在は人の手でバッテリを充電したり充電ケーブルを繋いだりして充電しています。台数が少ないうちはなんとかできるかもしれませんが、今後台数が増えてくると対応しきれなくなってしまいます。充電担当の人を増やせばよいかもしれませんが、自動化のために人を増やしていては本末転倒です。 そこで私たちはワイヤレス給電インフラを整備し、人手を介さず自動で充電される社会を構築します。
現在は受託研究・受託開発、回路設計によるライセンシングを行なっていますが、だんだんと製造販売の準備を進め、最終的には現在の電力会社のように利用料金を課金するようなビジネスにしようと考えています。

■カーボンニュートラルの達成については日本自動車工業会からもその道筋について度々指摘がされています。 パワーウェーブ社の事業は日本経済にどのような一石を投じると思いますか?

エネルギー効率から考えると、カーボンニュートラルの達成に向けて自動車の電動化は非常に重要な事項だと考えています。しかし、充電の不便さからなかなか普及が進みません。パワーウェーブは給電を自動化することで電動化のブレークスルーとなり、カーボンニュートラルの達成に向けて貢献できると考えています。

■今後の会社のビジョンやご自身の目指す次なる目標・夢を教えてください。

これからの社会は、ますます賢いコンピュータが活躍していきます。このコンピュータが自動運転を代表とするさまざまなシステムの自動化を進めて行くと考えています。そこで重要になるのが「いかにしてこの賢いコンピュータに電気を供給するか」です。過去の産業革命はハーバーボッシュ法による食料の生産・安定供給によって実現されました。私たちの技術が自動運転ビークルに対して安定した電力を供給することで次なる産業革命を支えたいと考えています。

■起業を目指す学生に向けてメッセージをお願いします。

大学での研究や勉強が重要です。起業だけならやる気があればできます。しかし、他社には真似できないコア技術や独創性は、よほどの天才でなければやる気だけではどうにも準備できません。他社に負けない商材を作るために必要なことは研究と勉強です。「起業するぞ」というモチベーションは大事ですが、勉学をおろそかにせずに技科大で誰にも負けない技術を手に入れて羽ばたいてもらいたいです。



これまでの大学発ベンチャー振り返り

発行お知らせメール

天伯の発行をメールにてお知らせします。

ページトップへ

今見ている号のトップへ戻る