2015.07No.140(オンラインNo.22)

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Chapter1「グローバル技術科学アーキテクト」養成キャンパス創成への歩み出し

スーパーグローバル大学推進室長
高嶋 孝明(たかしま たかあき)

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www.sgu.tut.ac.jp スーパーグローバル大学公式ホームページ開設

スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)に採択されて、はや6ヶ月以上が経過、構想の実現に向けてSGU推進室を設置、執行部・関連委員会などと連携を取りながら、様々な活動が全学的に開始し始めました。それらについて、構想の柱となる3つの施策ごとに進行の概要を紹介します。

■「グローバル技術科学アーキテクト」養成コース(GAC)の新設

2017年度(平成29年)から3年次編入生、その翌年から1年次入学生の受入開始に向けて、教育システム・入試制度の設計を開始しました。教育制度委員会のワーキンググループの熱い討議を経て、構想の軸となるバイリンガル講義と語学・リベラルアーツ教育のフレームワークが策定されました。バイリンガル講義は本年度より一部試行を開始しています。また、入学者選抜方法研究委員会の下、募集人員と選抜方法等の討議を重ね、2016年度実施の3年次編入生入試からの変更概要を順次決定し公表していきます

コース新設で増員を図る新しい人材像の学部1年留学生獲得に向け、ASEAN諸国の協定校を中心に訪問して構想を説明し、優秀な学生獲得に向けた情報収集と連携構築を開始しました。

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バイリンガル講義の試行風景 マレーシアChung Ling高校での大学説明会

       

■ グローバル学生宿舎の新設

多国籍の学生が共同生活を営むシェアハウス型学生宿舎建設に向け、資金調達・事業手法・基本要件等を施設マネジメント戦略本部の下で協議を進めてきました。来年度着工に向け、本年度は業者の選定と具体的設計を開始します。また、キャンパスグローバル化構想の共有と全学の参加意識を高め、学生・教職員の優秀なアイディアを建築案に盛り込むために、デザインコンペ(名称部門・設計部門)を実施しました。

 

グローバル学生宿舎デザインコンペ

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最優秀受賞グループ 応募作品展示風景

 

                  

■ 重層的な人材循環

学生・教員・事務職員全員の英語力アップを支援するために、eラーニング教材の充実、英語学習アドバイザー常駐による個別相談から各種セミナーや講座の常設、バイリンガル講義向けた英語での教授法特別セミナーなどを実施しています。これらは無料で誰でもが利用できる制度です。また、教員・職員がニューヨーク市立大学クィーンズ校に4−6週間集中滞在して、英語研修の受講とあわせて共同研究・業務研修を行うプログラムを作成し、本年度より教員4名と事務職員1名の派遣を開始、今後人数規模を増して継続実施する計画です。

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ニューヨーク市立大学クィーンズ校での研修風景

ここに紹介した取り組みはその一部であって、今後多くの新しい活動と乗り越えなければならないチャレンジが待ち受けています。その道のりは決して平坦ではありませんが、その先には世界に通用する豊橋技術科学大学が見えています。学内全員の理解と参加、学外の皆様のご理解とご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

便利情報:スーパーグローバル大学に関する各種資料・情報の収納先

■ スーパーグローバル大学公式ホームページ http://www.sgu.tut.ac.jp

■ 調書・パンフレット・概要・紹介ムービーなど

 (日本語) https://www.tut.ac.jp/superglobal.html

 (英 語)  https://www.tut.ac.jp/english/news/4230.html

■ 掲載記事など

 Science誌
  http://www.sciencemag.org/site/products/advertorials/Global_Japanese_Univ_19mar15.pdf

 東洋経済 http://toyokeizai.net/articles/-/68538

 Japan Study Support(留学生向け日本の大学情報サイト) http://www.jpss.jp/ja/univ/45/161/

■ スーパーグローバル大学紹介 パワーポイント資料(日本語・英語)

 (学内専用) http://www.office.tut.ac.jp/syo/kouho/ppt/ppt-2.html

Chapter2博士課程教育リーディングプログラム履修生の大学間連携・交流

電気・電子情報工学専攻博士後期課程2年 

中村 和樹(なかむら かずき)

はじめまして。本学博士課程教育リーディングプログラム 第一期生の中村和樹です。私は、『脳科学・医療応用を目指した広視野角3次元ディスプレイの開発』をテーマに、他の履修生の皆さんとリーディング学生ゼミ等で議論をしながら、研究を進めています。

さて、私達リーディングプログラム履修生は、今年4月に名古屋大学で開催されたInterdisciplinary Workshop for Leading Students 2015 :IW4LS2015に参加しました。

IW4LS2015は、情報系リーディングプログラムに採択されている早稲田大学・筑波大学・名古屋大学との連携強化、学生交流を目的とした合同シンポジウムです。

本シンポジウムには、4大学で合計66名のリーディングプログラム履修学生が参加し、会場となった名古屋大学の施設紹介・各リーディングプログラムの紹介を経て、9つの混成チームに分かれてグループワークを行いました。このグループワークでは、『名古屋大学実世界データ循環学とのコラボレーション』をテーマに、各大学の学生がアイディアを出し合い、活発な意見交換を行いました。

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プレゼンテーションの様子

私の参加したグループGは、Female Artificial Intelligent Robotという共同プロジェクトの立ち上げを提案し、Unique Idea Awardを受賞することができました。これは、ブレインストーミングによって出てきたアイディアの中から、もっともありえない組み合わせを探すという、非常に面白いまとめ方を採用したことと、経歴や専門が大きく異なるメンバーが集まっていたことが受賞につながったと考えています。また、アイディアのプレゼンテーション時に寸劇を用いてシチュエーションを説明する等、ユーモア溢れるメンバーであったこともプラスに働いたと思います。

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ブレインストーミングの様子

IW4LS2015は、同じリーディングプログラム履修生という立場でありながら、異なる環境や背景の方々と交流することができ非常に良い刺激になりました。今度は私達リーディングプログラム履修生が、今回得たものを大学に還元できるように努力したいと思います。

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受賞での集合写真

Chapter3私たちはこんな仕事を通して豊橋技科大の研究力強化に貢献しています!

研究推進アドミニストレーションセンター
URA 井藤 優子(いとう ゆうこ)
CD 田中 恵(たなか めぐみ)
URA 大久保 陽子(おおくぼ ようこ)

RAC(研究推進アドミニストレーションセンター)には、本学の歩むべき研究の方向付けや具体的な研究戦略の立案、また研究プロジェクトの企画・運営、知的財産創出、広報等の活動を推進する役割を担うURA(University Research Administrator)や科学技術コーディネーター(CD:Science & Technology Coordinator)が在籍しています。ここでは、3名の女性URA・CDから、その活動トピックスを通じて本学RACの活動内容を紹介したいと思います。

研究推進アドミニストレーションセンター「研究戦略室」は、国内外の学術研究動向・科学技術政策、社会のニーズ、学内の研究ポテンシャル等を分析し、研究戦略案を策定する役割を担っています。私(井藤)は、本学より発表された論文の数と質を多角的に分析し、研究力強化に向けて研究戦略の策定に役立つデータを作成しています。また、研究者および学生の英語論文作成をスムーズに進められるよう、「英語論文校正・英語プレゼンテーション指導」を企画し平成27年6月より運用を始めました。さらに、英語論文の国際情報発信(プレスリリース)業務も担当しています。

研究推進アドミニストレーションセンター「研究・産連推進室」「知財管理室」は、競争的資金獲得支援・技術移転活動、知財創出から権利化・活用までの総合的な知財支援の役割を担っています。平成26年度は、私(田中)が、支援を担当してきた総合教育院 武藤教授の研究テーマが、内閣府のSIP「革新的設計生産技術」の24テーマの1つに採択されるという嬉しいニュースがありました。本プログラムは「イノベーションスタイル」の実行というユーザーを巻き込んだ研究活動が求められるため、採択後から実施体制の中に入り、研究会の立ち上げ~運営、知財戦略に対する支援を行っています。

研究推進アドミニストレーションセンター「技術科学支援室」は、本学の有する研究機器を効率的に利用することを目的として、研究機器の共用を推進するシステムの構築に取り組んでいます。平成26年度には、学内にある約230台の共同利用可能な研究機器をデータベース化し、「研究機器一覧」としてホームページ上で公開しました。現在、私(大久保)は、技術支援室と協働で、ユーザーの利便性向上のため、Web上で機器の利用予約と利用料金の集計を連動させた本学独自の「予約課金システム」を開発中です。本システムは、今年10月からの運用を予定しています。

RACでは、互いに連携してチームとして活動し、今後も、研究者が心強いと思えるバックアップができるよう日々研鑽していきます。

研究推進アドミニストレーションセンター

RAC集合写真

Chapter4マレーシア教育拠点(ペナン校)活動アップデート

国際課国際教育支援室長 

黒田 清彦(くろだ きよひこ)

前回(第139号)でのご報告以降、ペナン校を拠点として、学部学生の海外実務訓練(1-2月12名)、特別推薦学生18名の海外研修(3月18名)、国立高等専門学校教員10名が参加したグローバルFD (※1)のペナン研修 、長岡技術科学大学・本学・高専事務職員を対象としたSD (※2)他が行われました。グローバルFD事業は、高専教員・本学教員が本学での約3か月間の英語等研修及びニューヨーク市立大学クィーンズ校で約6か月間の英語教授法等の研修の後、高専教員はペナンでマレーシア科学大学(USM)、Seberang Perai ポリテクニク(PSP)他で地元学生向けに英語での講義実践を行うという、国立大学が行う研修プログラムとしてはユニークなものです。生活・講義環境が異なるペナンでの研修ということで、参加された高専の先生方にはご苦労が多かったのですが、無事終えることができました。

※1 FD(ファカルティ・ディベロップメント) 教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称

※2 SD (スタッフ・ディベロップメント)事務職員や技術職員など職員を対象とした、管理運営や教育・研究支援までを含めた資質向上のための組織的な取組

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PSPでの高専教員の講義の様子

ペナン校で高専教員と本学教員の

グローバルFD締めくくり意見交換会

昨年7月から今年4月まで、ペナン校に常駐し、主にペナン校の運営管理実務に従事しておりましたが、グローバルFD、その他のペナン諸事業を進展させることができたのは、本学の関係者はもとより、USM、PSP、Wawasan Open 大学、DISTEDカレッジ、ペナン技術開発センター(PSDC)等の教育研究機関、地元企業(日系、ローカル、多国籍)、また、ペナン州、日本国総領事館、ペナン日本人会、日本人学校関係者等の公的機関・団体他の御協力・御助言を頂いていることが大きく、大変ありがたく思っております。

今年4月からは、京兼・国際教育センター特任教授(前明石高専校長・前国立高等専門学校機構理事)が現地に常駐するとともにMs Angelineが現地スタッフとして加わり体制が強化されました。今後、地元協力機関・協力者との連携を維持・強化しながら、USM等との共同教育プログラム、海外実務訓練、高専との連携事業等、一層活発な活動が展開されると期待しております。

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ペナン校でのUSMと本学の定期協議会後

DISTEDカレッジと本学との協議後

Chapter5実用的なトルクを出せる世界最小のモータの開発に成功

エレクトロニクス先端融合研究所

テニュアトラック助教 真下 智昭(ましも ともあき)

カテーテルや内視鏡などの小型医療デバイスへの搭載を目指して、世界中でマイクロモータの研究開発がなされています。例えば、カテーテルの先端が血管の分岐点に差しかかった時に血管を選ぶことは、熟練の医師でも時間のかかる作業ですが、マイクロモータでカテーテル先端を動かすことで、このような作業を効率化できます。しかし、このような機器に搭載できるほどにモータを小型化することは簡単なことではありません。一般的によく使われる電磁モータでは、コイル、磁石、ギアなど複雑な部品が多いため小型化は難しく、小さくしても直径1.5mm長さ5mm程度の大きさが限界です。静電気の原理を用いたモータでは、MEMSの技術を使って1mm程度の小さいものを作ることはできますが、実用的なトルクを出すことはできません。

そのような中、私たちは、1ミリメートルほどの大きさの「マイクロ超音波モータ」の開発を行っており、今回、新たにステータに取り付ける機構を工夫することで、実用的なトルクを世界で初めて発生することに成功しました。一般に実用的なトルクの目安は10μNm(マイクロニュートンメートル、半径1mmで1gの力が出せるトルク)で、医療用などに使われる小型の部品を動かすのであれば十分に大きいトルクです。本モータでは、低電圧でトルク10μNm、最大で30μNmを発生することができます。これほど小さいサイズで、このくらいのトルクが出せるモータは世界を見ても他にありません。同様のサイズの先行研究例と比べると、200倍以上の力を発生できるトルクです。

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米粒とマイクロ超音波モータ

小さな部品を、どのように加工するか、把持するか、組み立てるかも、研究課題でした。1mm以下の部品は加工時に変形してしまいます。ピンセットでつかもうとしても、手のごくわずかな振動がピンセットの先に伝わって、思うようにつかめません。なんとか部品をつかめても、今度は表面張力の影響で部品がピンセットにくっついてうまく離れません。追い打ちをかけるように、経験豊富な先生からは、「小さいモータは上手くいかないよ」と言われることもありました。(それも一理あって、1mm以下のサイズではスケール効果という物理法則によって、回りにくくなることが知られています。)

しかし、超音波振動の原理をよく知っている私にはそれなりに自信がありました。うまく作ることができれば、このモータは回るはずであると。そこで、加工しやすいシンプルなモータのデザインを考案し、1mm以下の部品であっても把持・組立を容易にするマイクロマニピュレータを製作し、「マイクロ超音波モータ」の試作に成功しました。さらに、マイクロバネ構造をステータに取り付けることで、実用的なトルク(低電圧で10μNm、最大で30μNm)を発生することができるようになりました。その他のモータの性能は、回転数が約3000rpm、効率が1~2%の値が得られています。効率はまだ低いですが、今後の研究で、効率を改善することによって、さらにモータのトルク向上が期待されます。このモータが、実際の世の中で役に立つことを目指して、今後も研究開発に取り組んでいきたいと思っています。

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テレビ取材を受ける真下テニュアトラック助教

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