2015.07No.140(オンラインNo.22)

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トップ記事:世界で通ずる技術科学を目指して -豊橋技術科学大学の挑戦-

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Chapter1豊橋技術科学大学憲章と大西プラン2015

学長

大西 隆(おおにし たかし)

140tokyusyu001.jpg今年度、新たに標記の憲章とプランを作りました。若い世代の人口が減少し、国の財政も巨額の債務を抱えているという国立大学にとって厳しい時代を迎えています。その中で、本学の進むべき方向を示すものとして、学内へ浸透させるとともに、学外にもアピールして本学への支援を得たいと思っています。

憲章では、本学の基本理念を改めて定めました。特に、「技術科学」が技術を支える科学であり、その探求を通じて新たな技術を開発することが本学の使命であるとしました。技術科学は慣れ親しんできた本学の名称ですが、その意味を改めて共有することによって、技術科学の深い学理を探りつつ、社会に役立つ技術の開拓を目指すという本学の特長がより明確になったのではないかと思います。この理念の下に、教育、研究、国際化、社会貢献・連携、大学運営、役員・教職員、健康・安全管理、環境配慮、情報公開・情報発信、法令遵守の10の目標を定めました。

憲章が示す進むべき道を具体的に開拓していく挑戦課題とそのための活動を示したものが、大西プラン2015です。年号が入っているように、これは、課題の達成や新たな課題の出現に対応して改訂していくべきものと考えています。挑戦課題としては、「多文化共生・グローバルキャンパスの実現」、「技術科学によるイノベーション創出人材育成」、「融合研究を軸とした研究力強化」、「安全・安心な社会の形成に資する技術の創出」、「研究者の継続性と流動性の促進」と書きました。特に、日本の大学の高い教育研究水準を考えれば、多数の留学生を受け入れたり、世界の諸研究機関をと共同研究を行ったり、各国の大学と連携プログラムを設けたりすることによってグローバル化を進めることは最も重要なテーマです。多文化共生という考え方の下で、着実にグローバル化を進めていきたいと思います。

研究では、オープンアプリケーションという用語を造りました。大学発の発想、研究成果、新技術を、大学外の研究者、企業と協働して磨き上げることによって、社会により有用な成果とするように、多角的な連携を図っていこうと思います。もちろん、こうした活動を通じて、論文発表という形をとる成果も充実させていかなければなりません。

キャンパスのあり方では、心の体の健康を増進できる環境を整えることに挑んでいきたいと考えています。学生・教職員が相当な時間を過ごすキャンパスが潤いや活気に満ちて、やる気を起こさせる雰囲気を保つように様々な試みを行っていこうと思います。

来年は本学が40周年を迎えます。上記のような憲章やプランの下で、技術科学を世界に通ずる教育研究分野とするべき、皆さんとともに、大きな飛躍を遂げたいと考えます。

Chapter2大学憲章の制定 

教授会議長
環境・生命工学系教授
角田 範義(かくた のりよし)
教授会副議長
総合教育院教授
加藤 三保子(かとう みほこ)

「憲章」について国語辞書を引いてみたところ、重要で根本的なことを定めた取り決め。特に、基本的な方針や施策などをうたった宣言書や協約。(小学館、大辞泉)という説明がありました。今まで、本学はこれに代わるものとして以下に示す「基本理念」に従い、教育研究を行ってきました。

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技術を支える科学の探究によって新たな技術を開発する学問、技術科学の教育・研究を使命とします。この使命のもと、主に高等専門学校卒業生及び高等学校卒業生等を入学者として受入れ、大学院に重点を置き、実践的、創造的かつ指導的技術者・研究者を育成するとともに、次代を切り拓く技術科学の研究を行いま す。さらに、社会的多様性を尊重し、地域社会との連携を強化します。これらを通じて、世界に開かれたトップクラスの工科系大学を目指します。

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並行して、学章、コミュニケーションマークを制定し、プレゼンスの向上も図っています。最近では、文部科学省から「ミッションの再定義」を求められ、本学の在り方について考える機会が与えられました。様々な本学の特色が発信される中、理念やミッションを俯瞰する道標(憲章)の必要性が系長等懇談会から提案されました。

そこで、21世紀の時代を切り開き、理念にある「世界に開かれたトップクラスの工科系大学」を目指すための基本的な方針をうたった宣言書として、「豊橋技術科学大学憲章」の策定を教授会から発議しました。策定の過程で、憲章は普遍的なものであることを考慮して簡素化することとし、最終的には10の目標からなる大学憲章が平成27年3月23日に制定されました。学長の施策、時代に対応した大学の戦略の制定の際に拠って経つ立つ理念と目標がこの大学憲章に書かれておりますので、是非ご一読をお願いいたします。

本学は、スーパーグローバル大学として積極的な海外展開を図っています。そのため、海外の方にも憲章を通して本学を理解してもらえるよう、英語版の大学憲章「The Charter of Toyohashi University of Technology」も作成しました。憲章は、日本語版、英語版のホームページに掲載しています。

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https://www.tut.ac.jp/about/charter.html#anc01

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https://www.tut.ac.jp/english/introduction/charter.html

Chapter3豊橋技術科学大学の国際戦略

国際協力センター教授
穂積 直裕(ほづみ なおひろ)

大変な時代になったものです。誰でも高速インターネットで世界と繋がることができます。フィリピンにいる学生さんのアルバイトは英語教師で、日本の大学にいる学生さんが毎日ネットレッスンを受けています。この原稿を書いている横でも、インドネシア人と日本人の学生さんが普通に英語で会話しています。外国との往来も加速度的に拡大しました。そのうち「外国」という概念もなくなってしまうかも知れません。

学生さんが就職したらというと、企業の研究開発・設計・生産は、国境を越えたチームで行われています。部下も上司も同僚もクライアントも日本人とは限りません。工学部の学生さんは、技術を学ぶだけでなく、世界の人と自由につきあえる視野、教養と語学力を養う必要があります。

このような状況のもとで、本学には、高い技術力と科学的素養をもつだけでなく、社会のグローバル化にも十分対応できる上級技術者・研究者を育成することが求められています。研究活動においても、新たな価値の創造、地球規模の社会的課題解決などへの関心から、融合研究を軸に、世界トップレベルを目指すことが求められています。そのために、研究者の多様化・多国籍化を進め、発想の多様性を向上させる必要があります。

本学の国際戦略はそのような中で策定されました。10年後の豊橋技術科学大学のあるべき姿として、「多文化共生・グローバルキャンパスを有する大学」を描き、それに向けた研究・教育と国際貢献に関する取り組みを示しています。

「教育」では、グローバルな課題を発見し、分析・解決するための俯瞰的な構想・設計力をもち、具体的なもの作りを主導できる人材の育成を目指します。そのために、グローバルコミュニケーション能力、多様な価値観のもとでの課題解決能力と、世界に通用する人間力を強化します。

「研究」では、研究者の多様化・多国籍化を進め、発想の多様性を向上させるとともに、グローバルな発信力を強化し、各分野において世界トップレベルの研究を推進します。

「国際貢献」では、平和で豊かな社会の実現を目指す国際社会の課題解決に対し、世界トップレベルの研究と教育システム及び、これを通じて輩出した人材を活かした国際貢献を進めます。

これらを実現するため、教育面では授業のバイリンガル化や海外インターンシップの拡大を進めるとともに、研究面では海外共同研究の推進や研究者の海外派遣などの具体的な施策を実施します。併せて、教育・研究成果を活用した国際貢献諸事業への参画や、事務組織と学内インフラの国際化対応などを全学的に展開します。近年採択された国立大学改革強化推進事業(三機関が連携・協働した教育改革)、スーパーグローバル大学創成事業などを通じ、これらの施策は既に開始されています。

「国際戦略」は読みやすくコンパクトにまとまっています。本学ホームページからご覧いただけますので、是非一度目を通していただきたいと思います。

豊橋技術科学大学国際戦略: https://www.tut.ac.jp/about/charter.html#anc03

バイリンガル授業の様子

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