輝くギカダイ卒業生
Chapter1日本製鉄株式会社 品質管理部 橋本元仙さん

鋼板製造の入口(研究)から出口(お客様対応)まで
橋本 元仙(はしもと もとのり)2012年3月 機械工学専攻 博士前期課程修了
日本製鉄株式会社 瀬戸内製鉄所 品質管理部 薄板管理室 熱薄管理課 課長
豊橋技術科学大学で学んだことや印象に残っていることは何ですか?
強く印象に残っていることは研究室での活動です。毎日のように考え、昼夜を問わず自ら実験し、試行錯誤した経験は社会人になってしまっては体験し難い貴重なものと感じています。また、出来の悪かった私に先生から頂いた厳しくも温かいご指導は、今でも技術的に困ったときの思考の基軸になっています。
研究室での活動以外では当時受講させていただいたMOT(Management Of Technology)コースの内容が印象に残っています。正直、当時は理解しきれていませんでしたが、大学院生の視野を広げてくれる非常に貴重な体験でした。
今まで、どのような仕事を経験されてきましたか?
鋼板の研究開発から設計(成分や製法など鋼板の製鉄所で造るレシピを決める)、お客様対応などの業務を行なっています。鉄鋼材料の知識だけではなく、工場での製造現場の知識やお客様での鋼板の使われ方、最終製品に求められる性能まで、幅広い知識が求められる部門です。
この幅広い業務は正直大変なところも多いですが、面白いところも多いです。鋼板製造の入口(研究)から出口(お客様対応)までの一貫した業務をしていると、自分の開発した鋼板を売り込み、量産化される経験もできました。これは、まだ短い会社人生の中でも非常に良い思い出になっています。
仕事でのやりがいや、仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
我々の製品は日本の幅広い産業に関りを持ち、規模が大きなものです。ただ、その規模故に大味なモノづくりになってしまうことが珍しくありません。個人的にはそこに甘えてしまっては良くないと思っており、鋼板の設計をする際はお客様が鋼板をどのような製品のどこに使うか、その用途では鋼板に何を求めているか、お客様の顔と部品を頭に思い描くようにしています。また、お客様が何を求めているかを考えるときは、原理原則を意識し、工学的な解を自分なりに導き出すようにしています。
座右の銘、好きな言葉などがあれば、教えてください。
大事にしている言葉は「巨人の肩の上に立つ」です。みなさんもGoogle Scalarで見たことがある言葉だと思います。歴史が長い分野で働いているせいでもあると思いますが、自分が新しいと思っている研究アイディアや泣きたくなるような仕事のトラブルでも、99%は過去の人が経験し文書化してくれているように感じます。先人の力を借りスピーディーに効率的に物事を進め、いつか、自分の知見が新しい1%に入ることを祈りながら仕事を進めています。