研究シーズの泉

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火災を「吸い込んで」消す!

真空吸引消火法の開発

ステータス 基礎 実証 実用化準備

概要

私たちは火災場に粉末や液体の消火薬剤を吹き付けて消火するのではなく、掃除機のように発生有毒ガスと共に火災源を一緒に吸い取り消火する手法を開発し、その有効性および有効条件を理論的に導くことに成功しました。この手法の最大の利点は、火災場に撒かれた薬剤や水による二次被害を出さないため、直ちに現状復帰が可能な点です。宇宙空間に限らず手術室などの閉再生の高い特殊環境での活用が期待されます。

従来技術

特殊環境下(例:宇宙)での消火の問題
・酸素ボンベの着用が必須
・消火剤(粉末、CO2ガス、水)や毒性の高い燃焼生成物が密室内に残留
・「くすぶり」が残る可能性がある
・消火有効時間が限られている

優位性

・空気を薄めない、直ちに消火活動可能
・消火剤を放出しない速やかな現状復帰を支援
・火災物を火災場からまるごと取り除く
・水使用が禁忌な金属火災にも適用可能
・消火後の廃棄物の処理が容易
・連続した消火作業が可能

特徴

私たちは火災場から迅速に火災を除去するために、酸素の損失を最小限に抑えながら即時に消火活動を行うことができる新しい真空消火法(VEM:vacuum extinction method)を開発しました。基本コンセプトは問題があるガス噴霧を行わず、①真空吸引によって発火物を火災場から吸い出し、②潜在的な危険物(有害ガス、CO、PM、煙など)を容器に集め、③その中で適切な処理(消火など)を行うものです (図1)。

【VEMの有効性検証結果】

  1. 吸引流が十分に大きい場合は瞬間的な消火(MODE I)し、吸引流があまり強くないが十分大きい場合は比較的ゆっくりとした消火(MODE II)という異なる消火モードが存在する (図2)。
  2. MODE Iでは、消火後に未燃焼の溶融固体試料が大量に残存しているが、MODE IIでは残存量が少ない (図2)。
  3. 炎と真空の相互作用だけでなく、吸引流による物理的なプロセスも加わり、消火を促進することができる(MODE III) (図3)。
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図1 真空消火器法 (VEM) の概念図
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図2 吸引動作による消火の時系列挙動
上:MODE I、下:MODE II
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図3 吸引時のシュリーレン画像
燃焼物(電線被覆材)もパイプ内に吸引されている

実用化イメージ、想定される用途

・換気が制限される「超」気密空間(例:宇宙船、潜水艦内など)
・消火時に二次損害が想定される管理区域(例:病院の手術室、クリーンルーム内など)
・その他、燃焼によるガス排出が問題となるような空間

実用化に向けた課題

・導入をスムースにするための法整備
・開発・導入コストの削減
・真空を作り出す設備との併用性(=応用用途が限られる。ただし宇宙の場合は不要)
・初期火災用のため、火災検知との連携を密にすることが望ましい

研究者紹介

中村 祐二 (なかむら ゆうじ)
豊橋技術科学大学 機械工学系 教授
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研究者からのメッセージ(企業等への提案)

従来の吹き付け方式にはない多くの特徴と利点があり、現状では対応できないケースにも適用できます。共同開発あるいは技術アドバイザなど、様々な形での協力が可能です。

知的財産等

掲載日:2022年02月21日
最終更新日:2022年02月21日