ラジオ番組『天伯之城ギカダイ』より
もくじ
- 天伯之城 ギカダイ
- 静電気・大気圧プラズマの 生物応用
応用化学・生命工学系助教
栗田 弘史 - "自分の身体"を認知する
情報・知能工学系助教
上田 祥代
Chapter1天伯之城 ギカダイ
天伯之城 ギカダイ
豊橋技術科学大学はエフエム豊橋(84.3MHz)とのコラボレーションにより、
本学のアクティビティを広く皆様にご紹介するラジオ広報を放送しています。その名も「天伯之城 ギカダイ」。
https://www.tut.ac.jp/castle.html ←こちらより視聴可能
エフエム豊橋の人気パーソナリティ渡辺欣生さんが、毎週、本学のいろいろな研究室、サークルなどを訪問し、普段、素朴に思う技科大の「なに?なぜ?どうして?」を分かりやすく紹介しています。
Chapter2静電気・大気圧プラズマの 生物応用
応用化学・生命工学系助教 栗田 弘史
Q 実は私、クルマに乗るとき結構な確率でバチバチッとなるんです。
A あー。バチバチッとなったとき、みんな「静電気がおきた」って言ってますけど、あれは厳密には間違ってて、正しくは「放電がおきた」と言うべきですね。
Q なるほど、静電気が起こること自体は何ともなくて、放電するときにバチバチッとなるわけですね。青い光が出て。
A これは一種のプラズマですね。物質は、固体・液体・気体、そしてプラズマになるんですがプラズマの状態になると、イオンと電子が バラバラに動いてすごいエネルギーをもった状態となります。
雷や太陽もプラズマです。宇宙の99%はプラズマだと言われています。圧力が低いほどプラズマが発生しやすいんです。
Q じゃあプラズマを起こすためには真空状態を作り出す装置があれば簡単ですね。
A その通りです。ただ我々の研究では1気圧のもとで発生するプラズマ「大気圧プラズマ」「 ラバーハンドイリュージョン」の研究をしています。それだと真空装置なしでプラズマを発生させることができます。
Q どうしたらそんなことができるんですか。
A 実は複雑な装置は不要で、二枚の電極板の間に交流高電圧を印加した場合、片方の電極板をガラスとか誘電体で覆って電圧をかければ、こんな感じでキレイなプラズマが発生します。
Q わー。電極の周りが青紫色に光っています。プラズマが発生してるんですね。
A 大気圧プラズマは真空にする必要がないので、生き物に当てることもできます。あと大気圧プラズマは熱くないのでやけどの心配もありません。
Q プラズマを体に当てるなんてことがあるんですか。
A プラズマの応用として殺菌作用があることがわかっています。虫歯治療とか、最近では、癌細胞をやっつけて癌を小さくするのに使えるかもしれないとか。あと農業分野ではシイタケの成長を促進させたり、ミカンのカビを生えにくくさせたり、いろんな応用が研究されています。
Q キノコは成長して、カビは死んじゃうって都合良すぎじゃないですか。
A そこはそれぞれの目的に合わせてプラズマをコントロールするんです。プラズマを当てる距離とか、当てる時間とか、かける電圧とかを工夫して我々が求める結果を出してくれるように制御するんです。
プラズマが生体に与える影響って複雑で、例えばプラズマを生体に当てることで細胞内を酸化させることがあります。
細胞の種類やプラズマの当て方によって細胞死が起きたり、逆に増殖が促進されたりすることもあります。プラズマの当て方次第で、からだに良くも悪くもなる可能性があるんです。
Q 今日もクルマのドアでバチッとなるかもしれないので、体にいいプラズマの受け方を早く解明してくださいね。
Chapter3"自分の身体"を認知する
情報・知能工学系助教 上田 祥代
A 「 ラバーハンドイリュージョン」っていう実験を聞いたことがありますか。
Q 手品の名前みたいですね。
A 日本語で言うと「ゴムの手の錯覚」。まず片方の自分の腕を机の下に隠します。
そしてその腕が本来あるべきところにゴムの手を置きます。
最初はゴムの手はゴムの手としか思えませんが、二本の筆で自分の手とゴムの手と同じ部位を同じタイミングでなで続けると、だんだんゴムの手が自分の手に思えてくるんです。そうするともうゴムの手を金づちで叩こうとしようものなら被験者は驚いて逃げようとしたり、怒ったりします。
Q な、なんなんですかその実験。
A 普段自分の手がなぜ自分の手と思えるかというと、触られるのを見て、かつ触られる感覚が経験できるからなんです。なので、同じことがゴムの手でも生じれば、ゴムの手を自分の手と認知してしまいます。
Q シビれてたりして触っても感じないときは自分の腕と思えないときもありますもんね。
A 別のやり方でも自分の身体と思える感覚を生み出すことができます。私たちの研究室では、自分の動きをモーションキャプチャーで読み取って、VR上のアバターに反映させます。自分が手足を動かすとアバターの手足も同じように動けばアバターが自分の身体だという感覚が生じます。
Q なでてないのに?
A はい。その手法だとアバターの肌の色や年齢などを変えても自分だと思えます。さらに、楽器を奏でる動きをする場合、アバターの見た目をミュージシャン風にしたほうが上手に演奏できることや、肌の色の違うアバターに身体所有感を持ったあとは、人種の違いによる偏見を示す評定値が下がることがわかっています。
私たちの研究室では、どこまで変えても自分と思えるかを調べていて、アバターの手足のみを提示した透明な身体や、不自然に長い腕でも、身体所有感が生じることが示されました。
Q すごい!先生の研究の先にはラブ&ピースな世界が待っているんですね。
A そうやって楽しんで研究ができたらと思います。いま自分の研究としては、アバターの存在が現実の自分自身の空間認知にどのように影響するのかを、行動や感覚的な変化の観点から調べています。
誰もまだやっていないことなので、どういう実験をすればいいのかを考えるのが面白くてたまりません。
Q 楽しそうですけど大変なんですね。
A 以前はもっと大変でした。
今はモーションキャプチャーやVRなど実験環境が手軽に用意できるようになり、遅延なく同期させられるようになりました。
アバターの見た目もリアルに変えられるようになって、いろんなことがどんどんわかってきています。進行中のことはなかなかしゃべれませんけど(笑)
今度また教えてください。