2020.03No.149(オンラインNo.31)

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『天伯之城 ギカダイ』

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もくじ

Chapter1天伯之城 ギカダイ

天伯之城 ギカダイ

 豊橋技術科学大学はエフエム豊橋(84.3MHz)とのコラボレーションにより、FMtoyo.png
本学のアクティビティを広く皆様にご紹介するラジオ広報を放送しています。その名も「天伯之城 ギカダイ」。
 https://www.tut.ac.jp/castle.html ←こちらより視聴可能
 エフエム豊橋の人気パーソナリティ渡辺欣生さんが、毎週、本学のいろいろな研究室、サークルなどを訪問し、普段、素朴に思う技科大の「なに?なぜ?どうして?」を分かりやすく紹介しています。

Chapter2マイクロLEDが拓く未来、 そしてバイオ応用

電気・電子情報工学系准教授 関口 寛人(せきぐち ひろと)

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Q いつの間にか周りの電球はすっかりLEDに替わりましたね。
A 最近は「マイクロLED」と言って従来のLEDより1/10、1/100、もっと小さいLEDを集積化させる技術があるんですよ。
  数センチ角の面積に数千万個が並ぶっていうスケールです。
  まだ研究室の段階で市販されてはいないですが、もう2~3年の間に様々なところに使われると思います。身近なものではスマホの画面でしょう。液晶は使わず一つ一つの画素をLEDにすることでバッテリーの持ちが格段に良くなります。

Q で、実はそのマイクロLEDを使った躯体が我々の前にあります。
  黒い箱の上でさっきから青い光の点がピカピカ点滅しています。

A これは我々が作ったもので、1センチ角の中に1万5千のLEDを敷きつめてランダムに光らせています。この部屋は結構明るいかと思いますが青い光がはっきり見えますよね。これは青色ですが、赤でも緑でも作れます。

Q 関口先生は今、マイクロLEDでどんなことをしようとしてるんですか。
A 私はこれをバイオに応用したいと考えているんです。特に「脳」の活動を調べるのにマイクロLEDを使うことを考えています。脳の特定の場所に光で刺激を与えることで、脳のどこを刺激するとどこの脳の活動が活性するのか調べるのにマイクロLEDを使おうと研究しています。今までは薬や電気で刺激して調べていたんですが、薬は次の刺激を与えるとき前の薬が完全に抜けるのを待たなきゃいけないし、電気は刺激した場所以外にも影響を与えてしまう。光なら「特定の場所へのオン/オフ」が簡単にできます。だから「今刺激した場所でどこの脳が活性化したのか」正確に調べることができるんです。

Q 脳の中って普段真っ暗だと思うんですが、光に反応するって面白いですね。
A 実は実験に使う脳は、遺伝子工学の技術を使って、光に反応する脳の神経を遺伝子的に作ってあげてるんです。

Q 脳神経に光で刺激を与える実験自体は昔からあったんですか。
A そうですね。ただし従来は光ファイバを組 織に刺して実験していました。
  それだとマイクロLEDの10倍の太さで脳に刺すことになり、脳にダメージを与えていました。

Q結構深くまで刺すんですか。
A マウスの実験では数ミリです。
  またマウスがデバイスを頭にのせて自由に動き回れる大きさにしないといけないので、デバイスは配線含めて2g以内になるようにしています。

Q デバイスを頭に乗せたマウスがもういるんですね。で、何かわかったんですか。
A まだ今はデバイスの完成度を高めているところです。
  この研究は、医療や半導体など様々な分野をまたぐ難しさがあって、薬学・医学など他大学の専門家とコラボしながら進める感じなんです。

Q 薬学・医学の先生も、今まで調べられなかったデータが出てきたら大興奮ですね。
A そうなることを願って研究しています。

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Chapter3ものが燃えるときに現れるパターンについて

機械工学系准教授 松岡 常吉(まつおか つねよし)

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Q フィンガリングパターンとは何ですか。
A 物が燃えるときに現れる指のような模様のことです。その模様がどのようにできるのか、どういう条件でできるのか研究しています。
 ( 動画を見ながら)これはプラスチックの板を燃やしているんですが、周りの酸素の流れをすごく小さくしたり、隙間をすごく狭くしたりすると、それまで一様に燃えていたのが、あるところで分裂してランダムに動きながら複雑な模様を作るんです。

Q あ!ほんとだ。アリが巣を掘っていく感じですね。
A こうした模様は、不安定性が生み出しています。不安定性とは、ちょっと動くとすごくズレるみたいな状態です。
  山の頂上にボールを置くことをイメージしてください。ボールをちょっと押すとダーっと崖に落ちていきますが、これが不安定な状態。
  反対に谷底にボールを置いた場合は、ボールを動かしても結局谷底に戻ってきますよね。これが安定性が高い状態です。一見同じように燃えていても、実は安定なところと不安定なところが混じっていて、安定な場所はどんどん燃え続けて、不安定な場所は消えてしまう。こうしてパターンができます

Q 先生はどんな研究をしているのですか。
A 紙みたいな薄い物が、消えかけギリギリの条件で燃えるときにフィンガリングができるというのは知られていたんですが、プラスチック板みたいな厚みの素材で観察した例がなかったんです。その理由は、物体が厚いときは不安定性が出るより先に火が消えてしまうからです。そこで酸素の濃度を濃くしながら燃える場所を狭くするということをしました。要するに、激しく燃やしつつ燃えにくくするというちょっと矛盾するような条件を作り出すことで、プラスチックみたいなものでもフィンガリングパターンができることを世界で初めて観察しました。

Q すごい! とは思うのですが、ラジオをお聞きの皆さんからは「だからなんだ」って声が聞こえてきそうですが(笑)。
A これが将来、火災現場の科学鑑定に役立ったり、物を燃やすとき、イメージした通り燃えてくれる技術につながるわけです。火災現場の科学鑑定なんてすごく難しいんですが、フィンガリングの研究が進めば、現場に残った焼け跡(パターン)から、どこで火が発生してどういう風に燃え拡がっていったのか推定するみたいなことも可能になるんじゃないかと期待しています。

Q 指模様の研究が、そういうことにつながるタネになるんじゃないかなーってぐらいの距離感ですか。
A 「 そこまでだいぶ遠いだろ」っていうご指摘ですね(笑)。
  そうです。すごく遠いとは思います。でもその第一歩がここかもしれないのです。

Q 燃焼の世界は奥が深いですね。
  炎を見つめる先生の目がキャンプファイア を見る少年の目になってます。

A キャンプに行くといつも私が火を燃やす係ですよ(笑)。

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