2019.03No.147(オンラインNo.29)

文字サイズ

特集

ホーム > 特集

Chapter1結成13年目の初挑戦 ~EVでの完走を目標に~

147tempakutoku2.jpg

 まだ残暑の厳しい9月上旬、静岡県小笠山総合運動公園(エコパ)に全国各地より約110ものチームが集結。大学生活を車づくりに捧げた学生たちの長く、熱い戦い「第16回全日本学生フォーミュラ大会」の開幕だ。

TUT FORMULAとは

 "TUT FORMULA" は本学の自動車研究部のチーム。この大会に出場するためにボディからシートに至るまで学生が設計・製作し、1年間で1台、車輌を作り続けている。2005年に結成し、2008年には日本チーム初のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)モノコックボディの車輌で参戦。軽くて丈夫な素材で、飛行機やF1マシーンに使われているCFRPを多く取り入れることで、毎年強豪校として活躍してきたが、活動13年目となる今年はさらなる飛躍のため、以前まで使用してきた600CCバイクのエンジンに代わりモーターを搭載したEV(電気自動車)での初参戦を決めた。

EV初挑戦への険しい道

 しかし、EV初参戦にあたり、悪戦苦闘の連続であった。部員の大半が機械系の学生で、電気系の知識に乏しかったため、スポンサー企業の電気系統に詳しい技術者に指導してもらったり、他大学と交流して情報を収集した。
 当初、日産「リーフ」や本田技研工業「NSX」のモーターを使わせてもらう話もあったが、TUT FORMULAのマシンは車体がコンパクトなのでそれらの機材では大きすぎた。また、海外チームの軽いEVにも負けない速い車輌を作りたいという思いから、電動スポーツバイクのモーターとインバーターを積んだ。このために海外製の電動スポーツバイクを1台購入して解体・研究したとのこと。ちなみに、バッテリーもバイク用を使う予定だったがレギュレーションに合わないということで、別のバッテリーを作って搭載している。
 これらを実現するために開発資金も問題だったが、例年より15社程度多い65社からの協賛を仰ぎ、250万円の資金と部品の提供を受けた。
 今までガソリン車で12年エントリーし好成績を収めてきたが、なぜEVに挑戦するのか・・・?それは短いコースで行われるこの大会には加速性能の高いEVの特性が向いており、将来的にはEVの方が有利になると判断し、新たな挑戦を決意したのだ。
 今回の目標は2つ。「全競技完走」「EV最軽量化賞の獲得」である。今までガソリン車での完走は当たり前であったが、EV初年度のチームが完走できることは少ないらしい。また、EVは重量が重くなってしまうが、モーターの出力を下げることで、バッテリーも小さくできるため、研究や改良を重ねて軽量化を工夫してきた。

大会初日、技術車検からスタート そして静的審査へ(1日目・2日目)

147tempakutoku3.jpg

 大会初日は、ピットイン後、技術車検からスタート。こちらは問題なく通過。
 2日目は、静的審査(デザイン、プレゼンテーション)。デザイン審査では、車輌を前に、審査員に向けて設計方法や車輌の性能について説明をする。プレゼンテーション審査では、審査員を企業の役員と見立てて、自分たちの車輌を売り込むプレゼンを行った。

動的審査もスタート 最終日に向けて(3日目・4日目)

147tempakutoku1.jpg

 3日目は怒濤の1日。残りの静的審査(コスト)と全車検。最後のレインテストをクリアして全車検を無事通過したときには拍手が起き、部員全員安堵の表情だった。午後からは実際に「走る」審査である動的審査のスタート。動的審査では、旋回性能を競う「スキッドパッド」、加速性能を競う「アクセラレーション」、コースの走行タイムを競う「オートクロス」の3競技が行われるが、本学はスキッドパッドとアクセラ審査を自己タイム更新という順調な走り出しだ。
 4日目は最終日のエンデュランス審査に向けて、充電作業・車輌チェックなどを行う入念なメンテナンス日。

花形競技のエンデュランス(最終日)

147tempakutoku4.jpg

いよいよ7時半からのグループで5番手の出走。みんなが見守る中、部員全員の思いをのせた黒い車体が大舞台を疾走する。その結果は・・・みごと20周完走!最後の5周はアクセルのレスが悪く、ドライバーはひやひやしたそう。それでも、目標達成である!主な成績として、EVクラス3位(総合成績25位)、日本自動車工業会会長賞、省エネ賞1位、ルーキー賞(EV)、グッドアキュームレータコンテナデザイン賞2位、さらにもう1つの目標であった最軽量化賞(EV)という好成績を収めることができた。
 「これは想像以上の結果だった。今回の経験を研究や卒業後にも活かしていきたい。」と部長の望月くんは語る。
 進化していくTUT FORMULAの更なる飛躍に期待したい。

147tempakutoku5.jpg

発行お知らせメール

天伯の発行をメールにてお知らせします。

ページトップへ

今見ている号のトップへ戻る