
概要
微視的スケール(µm、nm)の熱流体現象に関連して微細加工および計測技術に興味を持って研究しています。特に、マイクロ・ナノスケールの微小空間における電子やイオンの輸送現象が発現する機能に関して、応用展開を視野に入れた基礎研究を行っています。

従来技術
液体の導電率やpHについて、平衡状態における巨視的平均量の測定が主流
優位性
マイクロガラス電極を用いることで、1µm程度の局所的な導電率やpHを従来よりも短時間で測定することが可能
特徴
電解質溶液で満たされたマイクロ流路に、外部より電場を印加すると微弱なイオン電流が生じます。流路の構造によって電場の強弱が変化し、帯電した微粒子や生体高分子は電場による静電気力を受けて輸送されることが確かめられています。粒子を効率よく輸送し、また検知するためには、流路内部の電場分布を理解することが重要になります。
【成果】
ガラス管を伸長してその先端径を1µm以下とし、そこに電解質液と銀塩化銀(Ag-AgCl)線を挿入したマイクロガラス電極を用いて流路内部の局所的な電場を計測し、さらに導電率を導出して塩濃度の特定に成功しました。
<詳細>
ガラス管の2連管(2本のガラス管を束ねたもの)を伸長し、一方に緩衝液を他方に電解質溶液を充填することでイオンダイオードを形成し、試料液のpHを測定することに成功しました(図1)。マイクロガラス電極を用いてpHの異なる試料液の電流電圧特性を測定した結果、1.68から9.18のpH値を識別可能であることから、酸からアルカリまで広範囲の測定が可能です。
従来より、ガラス表面にはプロトン選択性があることが知られており、pH測定にはガラス電極が用いられてきましたが、微小な針状の電極とすることで、その先端径(約1µm)程度の局所的な測定が可能です。また、微小電流条件下での測定であることから、従来の平衡状態での測定に比べて安定で短時間での測定が可能です(図2)。
《出典》図1、2:K. Doi, N. Asano and S. Kawano, Scientific Reports 10, 4110 (2020)


実用化イメージ、想定される用途
・マイクロチャネルデバイスおよびナノチャネルデバイス内部の電場、導電率、pH測定
・イオン濃度測定
・イオンダイオードによるイオン電流の整流
・生理学的測定システム
実用化に向けた課題
・微小電流計測技術の向上
・ノイズ低減
・測定精度と再現性の改善
・適用例
研究者紹介
土井 謙太郎 (どい けんたろう)
豊橋技術科学大学 機械工学系 教授
researchmap
研究者からのメッセージ(企業等への提案)
まだまだ発展途上ですが、可能性のある技術ですので、さまざまな対象に応用したいと考えています。マイクロガラス電極だけでなく、マイクロ流路などの微細構造にも埋め込み可能と考えていますので、ご興味があればご相談ください。
知的財産等
掲載日:2020年07月03日
最終更新日:2020年07月03日