概要
“III-V/Siヘテロ成長”と“ウエハ接合”という正反対のアプローチを組み合わせ、従来利用されている化合物基板上では達成不可能な低環境負荷かつ大面積(直径150 mm以上)の化合物多接合太陽電池の作製技術の研究開発を行なっています。具体的には、本研究室が開発した世界最高レベルの低欠陥(105cm-2)ヘテロ成長技術と新開発の薄膜転写プロセス(特許出願済)により量産性を飛躍的に向上させ、高効率III-V族太陽電池の開発を目指しています。
従来技術
化合物半導体を使用した太陽電池は高い変換効率を発揮しますが、環境負荷低減や大面積化の観点でメリットが十分に活かしきれていません。
優位性
Siに原子間隔が等しく、かつエネルギーバンドを自在に設計できる混晶材料を新たに開発することにより、大面積・高効率太陽電池の実現を可能になります。
特徴
《大面積化合物半導体太陽電池の開発構想》
- Si基板上に高効率GaAsPN太陽電池薄膜構造をヘテロ成長し、ウエハ接合技術により、薄膜構造を低価格基板(例:ポリカーボネイト)に転写し太陽電池デバイスを製作
- 分離したSi基板の再利用方法を確立
- 量産性に優れた高効率セル製作が可能となる
本構想実現には、構造欠陥を回避するため原理的にSi格子整合系材料で、かつ、太陽電池応用に2.0eV以下のバンドギャップ材料である必要がありますが、その材料結晶成長が困難なため開発されていません。本研究では、リン(P)系希薄窒化物混晶を考案し、バンドギャップ2.0eV以下のSi格子整合系材料のデバイス化を目指しました。
従来の成長技術で、成長の極初期にガリウム液滴の形成によるSi基板のメルトバックエッチングが生じることを解明し、原料供給量を変調した成長方法を世界で初めて考案しました。
【成果】
- 高品質とされる転位密度:7×105cm-2を15nmの極薄膜で成長させることに成功しました。
(図2に示すように成長初期から平坦な表面を維持して成長)
⇒従来技術では転位密度:106cm-2台を100nm~数μmの厚さで実現するもの
実用化イメージ、想定される用途
・宇宙用・航空機用太陽電池
・車載用太陽電池
・既存太陽電池との融合による高効率化
実用化に向けた課題
・デバイス実証
・GaAsPN層の点欠陥制御技術の確立
・剥離プロセスの歩留まり改善
研究者紹介
山根 啓輔 (やまね けいすけ)
豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系 准教授
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研究者からのメッセージ(企業等への提案)
太陽電池応用に限定せず、Si基板上に化合物半導体を結晶成長することのメリットを活用できそうな課題がある企業のご相談をお待ちしております。
知的財産等
掲載日:2020年05月31日
最終更新日:2023年06月23日