研究シーズの泉

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高分子アクチュエータのモデル化と制御

セルフセンシング機能を有するIPMCアクチュエータの開発

ステータス 基礎 実証 実用化準備

概要

近年、新しいアクチュエータに関する研究が活発になされています。高分子アクチュエータもその一つです。高分子アクチュエータの一つであるイオン導電性高分子・貴金属接合体(IPMC:Ionic polymer metal composite)は、パワーがないものの安価に作成でき、外力に対して柔軟に変形する特徴があります。この特徴を活かした小型グリッパ機構を開発することを最終目標として、アクチュエータ自身がセンサとしても機能するセルフセンシング機能を有するために必要な制御技術を見出すことができました。

従来技術

セルフセンシングの先行事例では、分解能が低く、実用には耐えられません。

優位性

・限られた範囲ではありますが、入力電圧、信号に比例した変位が得られます。
・変位に応じたセンサ信号出力が認められます。

特徴

ブリッジ回路を製作し、変形量に対応する信号を取得し、その信号とIPMCへの印加電圧やIPMC の電気的特性に基づく補正することで、精度よい観測量を得ることができ、セルフセンシングするために必要な相関があることを見出しました。

【実験結果】

1.静特性

IPMC先端に一定の変位を与えて固定した状態で一定電圧を加え各条件で3回測定しました。入力電圧の大小に関係なく、傾きがほぼ一定となることが分かりました。

2.入力電圧を固定し変位を変動

一定電圧を加えた状態で適当な変位を複数回与え,各条件で3 回測定し、変位とセンサ信号の間には比例関係があることが確認できました。加える入力電圧を変えた場合でも、同様に良好な比例関係が得られました。(図1)

3.変位を固定し入力電圧を変動

一定の変位を与えて固定した状態で正弦波交流電圧を加え、入力電圧のみが変動させたセンシング性能を調べた結果、出力電圧に位相差が生じていることが確認でき、これは、IPMC が有するコンデンサ成分が影響していると考えられます。

4.観測方程式の構築と適用

各条件での実験で得られたデータをもとにIPMCの変位を推定する観測方程式を構築し、実際の観測信号と観測方程式による推定結果はかなりの精度で一致が見られました。(図2)

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図1 センサ信号と変位の相関
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図2 変位推定結果

実用化イメージ、想定される用途

・小型グリッパ機構
・マイクロ、ナノ単位小型アクチュエータ
・人工筋肉

実用化に向けた課題

・更なるセンシング精度向上が必要です。
・アクチュエータ電圧が小さい時の零割対策が必要です。

研究者紹介

佐野 滋則 (さの しげのり)
豊橋技術科学大学 機械工学系 准教授
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研究者からのメッセージ(企業等への提案)

この技術にご興味をお持ちの企業の技術相談をお受けします。また共同研究等のご検討の際にはご連絡ください。

知的財産等

掲載日:2021年03月22日
最終更新日:2021年03月22日