4月5日に豊橋技術科学大学入学式を本学にて挙行しました。
イベント報告 | 2022年4月 7日
4月5日に豊橋技術科学大学入学式を本学にて挙行しました。寺嶋学長はアカデミックガウンを着用し、式に臨みました。
今年度の式典は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う配慮し、会場を本会場とサテライト会場に分け、執り行いました。
寺嶋学長からの式辞は次のとおりです。
皆さん、ご入学おめでとうございます。豊橋技術科学大学は今年度849名の入学生を迎えました。学部1年次入学生は80名、3年次編入生は392名、4年次入学生は1名、博士前期課程入学生は363名、博士後期課程入学生は13名です。また保護者の皆様、心よりお喜び申し上げます。 本学ではコロナ禍の時代、学生の皆さんが安全・安心で教育・研究を受けられるように、全力で対応してきました。授業は、実験・実習などは対面、それ以外は状況に応じ、対面とオンライン講義を取り混ぜてきました。また各種経済的・生活支援も行ってきました。コロナウイルス感染者がでないように極力環境整備に配慮しました。お陰さまで、昨年1年間の感染者の中には、重症者はなく、また、クラスターはゼロでした。常に大学として学生の皆さんへ、迅速に連絡をメール、および本学ホームページでしております。これらの情報を見落とさないようにお願いします。本学としては常に学生の皆さんに寄り添い、Student First の精神で対応していますので安心して大学生活を送ってください。またコロナウイルスへの対策指導などの詳細については、学生ガイダンスで致しますから、しっかり聞いておいてください。
さて、この祝福すべき日に、学長として祝辞を述べさせていただきます。
1つ目は本学の名称についてです。本学は豊橋科学技術大学と言わず、豊橋技術科学大学と言います。「技術科学」という言葉を説明いたします。まず「科学技術」とは、「科学及び技術」の総体を意味します。「科学(サイエンス)」とは、一般に、事がらの間に客観的な決まりや原理を発見し、それらを体系化し、説明することをいい、「技術(テクノロジー)」とは、理論を実際に適用する手段をいいます。
豊橋技術科学大学憲章の基本理念に、「技術を支える科学の探究によって、新たな技術を開発する学問、技術科学の教育・研究を使命とします。」と書いてあります。本学では、モノづくり技術を科学的に解明、探求し、さらに高度な技術を開拓、技術体系を創出していくことを目指しています。
本学はモノづくりに強い高等専門学校の学生(通称、高専生)を全学生数の約8割を学部3年次から受け入れております。一方、高校卒業生、留学生は学部1、2年次から、実習、ゼミ、PBL教育、研究など取り入れ、モノづくりの技術教育に入学当初から力を入れています。そして全学生が合流する3年次には、サイエンスやリベラルアーツ等の基礎教育を重視し、4年次には、2ヶ月にわたる産業界への長期インターンシップや卒業研究など応用・創発を教育します。さらに大学院では、再び、基礎と応用を繰り返すという、ユニークな「らせん型教育」を特徴とする教育を実施しています。入学時には多様な学習履歴をもつ学生の集団ですが、らせん型教育を通して、元高専生や元高校生・留学生の学生同士が、互いの強みを活かし刺激しあい、相互作用であるシナジー効果を発揮し、卒業時には全学生が高い技術科学レベルを取得するようカリキュラムを工夫しています。これにより高度なテクノロジーを生み出せる実践的・創造的な人材を育成します。
このような理念を学んだ本学卒業生は、誠実で、モノづくりやITに優れ、理論だけでなく、デザイン・試作ができ、技術者として優秀であると産業界や地域社会からお褒めの言葉を頂いております。
また、本学は技術系大学では全国有数の大学です。豊橋技術科学大学に入学したことを誇りに思ってください。本学は文部科学省の研究大学強化促進事業に採択された研究大学で、10年間にわたり財政支援を受けています。約800ある全国の大学の中で、わずか19大学が採択されています。また産学共同研究が活発です。産業界から信頼を受けている1つの証拠として、民間企業からの研究者一人当たりの外部資金獲得額で、2020年度、東京工業大学を抜き全国第1位となりました。そのほか、個人的研究では理化学研究所との共同研究でコロナウイルスの飛沫現象の解析研究は頻繁に報道されているのでご存じでしょう。半導体研究は、開学以来、材料からチップまで製造できる数少ない大学として有名で、センサ技術は世界的に高い評価を受けています。そのほか弱いロボットを核とする人間共生ロボットの研究、マイクロ・ナノマシニング、システム制御、材料・物質、農業・バイオ、建築物の免振・制振、都市デザイン技術、ユニークな英語教育をはじめリベラルアーツや異分野融合研究など本学の強い研究は多数あり、毎日のように報道されております。教員のみならず、学生も学会から数々の賞を受けています。皆さんもこの良き伝統を引き継いでください。
2つ目は、SDGsのことをお話しします。SDGsとは、Sustainable Development Goals の略です。日本語では、「持続可能な開発目標」といいます。SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。産業革命以降急激に活発化した人間活動により、経済・社会の基盤である地球の持続可能性が危ぶまれていることに端を発します。SDGsは17の目標・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」持続可能な社会を実現することを誓っています。例えば、目標3は、「すべての人に健康と福祉を推進すること」,目標9は、「産業と技術革新の基盤をつくること」,目標11は「住み続けられるまちづくり」です。これらのSDGsの目標達成のためには、政府、産業界、大学を含む教育関係者等、皆が貢献していく必要があります。本学の構成員の一員となられる皆さんは、世界規模の視野を持って、大学生活を送ってほしいと思います。なお、本学のSDGsに対しての今までの取り組みは本学ホームぺージをご覧ください。さらに、この4月より本学のSDGs活動をさらに強化するために、「SDGs推進本部」を立ち上げました。いま世界は大変な危機に直面しています。新型コロナウイルス感染症、戦争、地震など災害、CO2による地球温暖化に対するカーボンニュートラル問題などです。是非このことに関心を持ち大学生活を送ってください。
3つ目は、皆さんへのお願いです。
本日の入学式には、学部1年次入学生、3年次編入生、4年次入学生、大学院博士前期課程入学生、博士後期課程入学生がいます。本学では大半の学生が博士前期課程まで進学します。しかし、博士後期課程にはごくわずかしか進学しません。SDGsの目標4の「すべての人々に質の高い教育を提供すること」と先ほど述べました目標9の「産業と技術革新の基盤をつくること」にも関係するため、博士後期課程について本日は紹介しますので、今後の進路計画やキャリア形成の参考にしてください。
現在日本は、産業競争力低下、研究力・教育力低下が叫ばれています。1980年代、日本は、ジャパン アズ ナンバーワンといわれて、工業製品の売上高で世界のベスト10に半数以上日本の企業が入っていました。また日本のアカデミアのほうも、研究論文においても、アメリカに次いで世界ランキングが第2位と好成績でしたが、最近はどんどん下がっております。日本の将来が危ぶまれています。その1つの打開策が日本の最高学府である大学院博士後期課程の学生を増加させ、優秀な博士号取得者を社会に多数輩出することです。ご存じのように、大学院は、博士前期課程2年、博士後期課程3年です。博士後期課程学生はある意味、研究者です。ここに多数の学生が入学し、勉強し成果を出すと、日本の大学の研究力は強化され、研究を経験した優秀な学生が企業に入り、企業の研究をリードすると世界での研究・産業競争力は必ず増します。博士後期課程学生が、在学中及び修了後に大学と企業の橋渡しをしてくれると、人材育成にも大きな発展が期待できます。ドイツやアメリカは、博士後期課程学生が優遇され大学と産業界とがうまく連携しています。それではなぜ日本は、博士後期課程の学生数が少ないのでしょうか。それは、奨学金制度はあっても、給与面で評価されてないことです。主要な外国の大学では相当な額の給与が支給されています。また博士号取得後は、大学のみならず企業から引っ張りだこです。一方日本は、お金を払い博士後期課程に進学し、また博士号取得後は深い専門性はあるが視野が狭いなど、企業の認識の甘さや大学側も宣伝が不足し就職の範囲が狭められるという誤解がありました。それに対して、国も昨年からフェローシップ制度などで、年間240万円程度の給与金の支給制度、また、博士後期課程在学中に、産学連携共同研究を積極的に進め、長期インターンシップを受け入れるなど産業界や大学の姿勢も大きく変わってきました。在学中に共同研究先に入社し、そのまま博士学生を継続でき、博士学生への待遇も改善されるなど、いままでの大きな課題であった点が解消されつつあります。
私は学生時代、博士前期課程から博士後期課程に直接入学した者として博士後期課程の魅力の一端を紹介しましょう。博士後期課程は3年あり、あまり単位の制約がないので落ち着いて研究できます。博士後期課程入学当初は、同級生のほとんどは就職しましたので、寂しい感じがしましたが、逆に上級生、下級生との交流が増えました。私は機械科のシステム制御研究室に所属していたのですが、週に1度は、数理工学科の応用数学教室に通いました。違う研究室への弟子入りは刺激的でした。博士後期課程では1人の研究者としてみなしてくれ、学内だけでなく、他大学、また海外の研究者などとの交流が増えます。しかし、はじめは失敗ばかりでノートは計算式などですぐに埋まりました。四六時中、問題点が頭から離れず苦悩したこともよくありましたが、考え抜き、議論、多くの試行錯誤・意見交換をし、アドバイスを得るなど自分で納得のいくまで研究が満喫できました。初めて成功した結果が出た時は、涙が出るほどうれしかったことを覚えています。また自分の研究成果を持ち、海外に学会発表、留学すれば、若い者に対しても大変敬意を持ち接してくれました。海外渡航の際には、海外の異文化にも触れ、国際感覚も身に付き世界観が変わります。海外に一生の友人もできました。また研究の合間には、冬はスキー、夏は海の家、時間を見つけては長編小説の読書、音楽鑑賞などを楽しみました。博士後期課程の時代には、世界最高水準を目指した学問にふれ、研究の深さや幅広さ、そして人間の豊かさを大いに学びました。あんなに人から束縛されず自己と向きかい自己研鑽できた3年間はいまだにありません。まさに価値ある青春時代でした。
博士後期課程は、一度社会に出てからでも社会人博士後期課程学生として入学でき、本学にもこの制度で入学した学生がたくさんおります。博士後期課程というのは一部の学生というのでなく、すべての皆さんの生涯にわたるキャリア形成の中で利用いただける制度です。博士後期課程の詳しいことは指導教員、担任、教務課に相談ください。日本の将来は皆さんのような若者にかかっております。我々は全力で君らの将来を支援します。
最後になりますが、本学には、44の課外活動(サークル)がございます。学業だけでなく、大いに課外活動に活躍し人間力を磨いてください。それでは皆さん、良い仲間やネットワークを作りキャンパスライフをエンジョイし、しっかり勉学も励んでください。
これで学長の祝辞を終わりとします。