3月23日に令和2(2020)年度 大学院修了式・学部卒業式を本学にて挙行しました。
イベント報告 | 2021年3月25日
3月23日に令和2(2020)年度 大学院修了式・学部卒業式を本学にて挙行しました。寺嶋学長及び博士後期課程修了者、博士後期課程論文博士はアカデミックガウンを着用し、式に臨みました。
今年度の式典は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う配慮から、博士後期課程修了生、博士後期課程論文博士、各専攻代表者及び各課程代表者少人数で執り行われ、式典の様子はライブ配信しました。
式典終了後、卒業証書及び修了証書・証明書の伝達が対象学生に行われ、博士前期課程修了生362名及び学部卒業生436名に対して学位記が授与されました。
寺嶋学長からの式辞は次のとおりです。
修了生、卒業生の皆様、本日はおめでとうございます。また今まで温かくお子様を見守られてきたご家族の方々に心よりお祝いを申し上げます。さらに本日まで、学生のご指導・ご支援をしていただいた関係各位に深く御礼申し上げます。
この祝福すべき日に、学長として祝辞を述べさせていただきます。話題は3つあり、順番に述べます。
まず1つ目です。本学は豊橋科学技術大学と言わず、豊橋技術科学大学と言います。「原点に帰れば未来が見える。そして、新たにスタートし、輝かしい未来を創る。」という意味でも、この「技術科学」という言葉の意味をもう一度振り返ってみましょう。
まず「科学技術」とは、「科学及び技術」の総体を意味します。「科学」(Science)とは、一般に、事がらの間に客観的なきまりや原理を発見し、それらを体系化し、説明することをいい、「技術」(Technology)とは、理論を実際に適用する手段をいいます。
豊橋技術科学大学憲章の基本理念に、「技術を支える科学の探究によって、新たな技術を開発する学問、技術科学の教育・研究を使命とします。」と書いてあります。本学では、モノづくり技術を科学的に解明、探求し、さらに高度な技術を開拓、技術体系を創出していくことを目指しています。
本学はモノづくりに強い高等専門学校学生(通称、高専生)を、全学生数の約8割、学部3年生から受け入れております。そのため、高校卒業生、留学生などには学部1・2年次から、実習、ゼミ、PBL教育、研究など取り入れ、モノづくりの技術教育に入学当初から力を入れています。そして全学生が合流する3年次には、サイエンスやリベラルアーツなど基礎教育を重視し、4年次には、2か月にわたる産業界への長期インターンシップや卒業研究など応用を教育し、また大学院では、再び、基礎と応用を繰り返すという、「らせん型教育」を特徴としています。入学時には多様な学習履歴をもつ学生の集団ですが、らせん型教育を通して学生同士が、シナジー効果を発揮し、卒業時には全学生が一定以上の技術科学レベルを取得するようカリキュラムに工夫をしています。テクノロジーから入り、サイエンスを学び、そして高度なテクノロジーを開発、創出するという「技術科学教育」をしています。本学は、現実の多様な技術対象を科学の局面から据え直し、それによって技術体系を一層発展させ実践的で創造的な技術者を育成してきました。サイエンスとテクノロジーのフィードバックによる高度なテクノロジーを生み出せる人材育成を目指しています。
こういう理念で育った本学卒業生は、誠実で、モノづくりやITに強く、理論だけでなく、簡単なデザイン・試作ができ、技術者として優秀であると産業界や地域社会から言っていただいております。また本学は研究に優れた研究大学です。研究大学強化促進事業など多くの国家重点プロジェクトにも採択されてきております。センサ・半導体、ロボット、材料、農業・バイオなど本学の強い研究分野です。
今年度の例を2つだけ挙げますと本学機械工学系の飯田明由(あきよし)教授が、スーパーコンピュータ富岳を利用し、理研らと、コロナウイルス飛沫現象に関する優れた研究成果をだし、テレビや新聞で頻繁に報道されているのをご承知と思います。また、情報・知能工学系岡田美智男教授が、弱いロボットの概念を提案されておりますが、今年、小学校の教科書で、その研究内容が紹介され、全国の小学生の3分1以上が弱いロボットの概念を勉強しています。他にも多数ございまして、紹介できないのが残念ですが、今後も注目ください。
また、論文発表や、国際会議への海外出張なども教員・学生共に大変活発です。本学は、200名程度の教員数である小規模大学ですが、優れた成果が出ているのは、先生方と共に、本学の学生が誠実で優秀なためです。さらにコロナが始まるまでは、海外インターンシップや、ダブルディグリー・プログラムなど昔では考えられないほど留学する日本人学生が最近増加してきています。一方海外からの留学生数も、5年前に比べ倍近く、現在300名近く在籍しております。本学の講義はすべて英語と日本語を併用したバイリンガル授業で、本学学生は多文化共生の環境の下で、国際感覚やグローバル能力も高くなってきました。
産業界では、基礎ができ、色々なことに技術を応用できるグローバル・イノベーション人材を強く求めています。本学の学生の皆さんは、「技術科学の厳しいらせん型カリキュラム」に対して本当によく勉強し、それを突破した産業界が期待する人材です。我々は皆さんを誇りに思っていますが、皆さんも、誇りと自信を持ち、これから社会に出て突き進んでください。
2つ目の話に移ります。この1年間、みなさんには、新型コロナウイルス感染症の影響で大変悲痛な思いをさせ、誠に遺憾に思っています。本学としては新型コロナウイルス感染症危機対策本部を立ち上げ、毎週のように会議を行い、環境整備や安全対策をして参りました。講義も、前期は、オンライン主体、また後期からは、対面も取り入れた講義をしてきました。本学は演習や実験が多くあり、少人数にし、可能な限り従来通り演習・実験を実施してきました。研究室に関しては、3密を回避すれば、基本は研究室で学生が研究できるように腐心しました。部活動は原則許可制としました。ほとんどの学生は大学および大学周辺に居住し、勉学に励んでくれました。学生の皆さんが本当に頑張ってくれたお陰で、全学休校や封鎖はなく、クラスターも発生せず、現在まで何とか乗り越えています。
また本学としては、学生への生活支援や、経済支援をしてきました。全学生に対する給付型奨学金の支給(一律3万5千円を支給)、授業料免除等の拡大、遠隔講義を受けるためのパソコン等の無償貸与、授業料の納付期限の延長、TUTエールランチの実施等々です。さらに、本学基金に新型コロナウイルス感染症対策緊急募金を立ち上げ、多くの皆様から寄附をいただき、特に同窓会からは、2,000万円の寄附がございました。これは生活支援を要する学生への緊急支援として位置づけ給付しています。2週間毎に募集し、書面、必要に応じて面接の上、選考しています。保護者からも感謝のお便りをいただいております。同窓会様には、この場をお借りして深く御礼申し上げます。
なお、コロナにより大きな気づきもありました。対面講義だけが最善というのでなく、オンライン講義にもいい面があり、最適に合わせれば今まで以上の講義ができます。そのために、デジタルトランスフォーメーション、いわゆるDX化を推進させることに今後も取り組んでいきます。しかし、ここで忘れてはならないのが、「大学の中心には学生がいる」ということです。日本や世界の未来を担うのは、若者であり学生です。コロナ禍において、学生達をさらにしっかり教育し、人類に役立つように育てていく責務を再認識した次第です。
3つ目の話題になります。学生の皆さんにお願いがあります。社会人として伸びていくためには、専門力に加えて、リベラルアーツを中心とした基礎力も養い、つねに人間力を高める努力、研鑽を継続することが必要です。
人間力の向上には、現場に出向き、いろいろな方と話をし、共に作業をし、現場をよく知ることです。机に座って本を読んで学ぶだけでなく、これからは多様な人々と対話をすることで、学び、その場で知恵や知識を積んでいくことが大事です。また海外などに出向き、国際交流によりグローバルな視野を広め、人間力を磨いてください。
リベラルアーツは教養を積み、専門を超えた新たなことを創出するために大事です。「賢者は歴史に学ぶ。愚者は自己の経験に頼る」。これはドイツのビスマルクという人の名言です。専門書以外の書物も幅広く読んでください。広く世界の歴史を学ぶことで、様々な教訓が得られます。また評論やエッセイを読み、音楽や美術など芸術に触れることで、偉人の経験や心の安らぎ、明日への活力を得られます。
この世の中は、新型コロナウイルスに代表されるように、突然、何が起こるかわかりません。大きな変化をしていきます。進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」という考えを示したと言われています。どうぞ、専門力に加え、リベラルアーツを学び、人間力を養い、時代の変化に対応できる力を鍛えてください。諸君らはその基礎を十分に本学で学んだはずです。
最後になりますが、ユニークで厳しい技術科学教育を突破してきた「TUTスピリット」で、社会の発展のために、活躍していただきたい。そして、今後も、本学、豊橋などこの地域、同窓会とのつながりを忘れないことをお願いし、皆さんの益々の発展を祈念します。これで学長の祝辞といたします。