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豊橋技術科学大学入学生への祝辞

トピックス | 2020年4月 3日

2020(R2)年度
  豊橋技術科学大学入学生への祝辞

2020年4月3日(金)
学長 寺嶋一彦

WEBterashima.jpg寺嶋学長

 入学を済ませた、850人の皆さん、本学へのご入学、誠におめでとうございます。私は、本年4月1日に本学の新学長として就任した寺嶋でございます。どうぞよろしくお願い致します。

 さて入学者の中には、学部1年生、3年次編入生、大学院博士前期課程学生、博士後期課程学生、そして留学生と様々な学生がおりますが、それぞれに大きな節目として気持ちを新たに今日から過ごしてください。また保護者の皆様、今まで一生懸命に育ててこられたご子息、ご息女のご入学、心よりお喜び申し上げます。今年の入学式は、新型コロナウイルス感染防止のため中止に致しました。誠に残念でございますが、皆様の安全・安心のため決断した次第です。ご理解の程、宜しくお願いします。
 それでは、入学された皆さんへの祝辞を『グローバル化とSDGs -大学における自由とは-』と題して、述べさせていただきます。

 本学は、現在、世界32か国・地域から、総計約300名(2020年4月1日現在)の留学生がおります。全学生の約15%が留学生で、本学は多文化共生のグローバルキャンパスといえます。つまりキャンパスを歩けば、いろいろな国からの外国人学生にも出会え、違った文化に触れることができます。また、学部4年生全員の必修科目として、1月~2月に6週間の実務訓練という、いわゆるインターンシップがありますが、全学生のうち80名程度が海外の企業等に行っています。そのほか、文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業に本学は採択されており、講義のほとんどはバイリンガル授業という先進的な講義を行っています。バイリンガル授業というのは、日本語と英語を併用し、日本語で説明すれば英語の教科書を用意し英語で補足する。一方、英語で説明すれば、日本語の教科書を用意し日本語で補足するなど、両方の言語をうまく併用し内容を十分理解できるようにしたうえで、日本人には英語を、外国人には日本語を学べるようにしたユニークな取り組みです。

 グローバル化とは「社会的・経済的に国や地域を超えて世界規模でその結びつきが深まること」です。そのため本学では、これに対応できるよう、英語・日本語など言葉の学習、海外派遣、多文化共生等を学ぶために、いま述べた様々な取り組みをしています。グローバル化に対応するために、国際連携や国際戦略が本学にとって益々重要になってきます。

 まず、入学した学生諸君の国際交流の参考になればと思い、私の中・高校生時代から就職するまでの経験について一端を紹介したく思います。中学生の時はじめて英語を習い、アメリカの文化を知り、またテレビの洋画で西欧文化というものを知り外国に憧れました。大学生の時には、学部2年生の時に京都御所前の書店2階にある語学教室に入り、週一度通いました。大学では柔道部に入っていましたが、厳しい柔道の練習の合間に語学教室に通うのは、一服の清涼剤のような感じで楽しい気持ちで通いました。はじめは、初級コースでドイツ人の先生に英会話を習い、中級コースでは、オーストラリア人の先生に習いました。休みの日は、先生の家に遊びに行き、友達感覚で先生らとお付き合いさせていただく中で、ちゃっかり英会話を習ったというのが実情です。大学院へ進学し、上級コースに、週2回、2年間ぐらい通いました。ただ、英会話より他大学学生との交流を楽しんだという方が記憶に残っております。博士課程に進学して研究が忙しくなり英会話教室はやめたのですが、所属していた研究室の指導教授が国際交流に熱心で、研究室を訪問された外国人教授の京都名所案内をよく頼まれました。これは今となり考えてみると、人脈づくりに役立ちました。博士課程の最終年度に国際会議で初めて英語で論文発表をしました。馴染みのある外国人の友人に、作成した発表原稿を英語でテープに吹き込んでもらい、それを通学途中の自動車内で、1週間ほど毎日聞き、話し方の真似をして何度も練習するなど、生涯で一番発表練習をしました。それから初めて外国に行ったのは、博士課程を修了し、本学に助手として就職した後です。当時32歳で、いま思うと、随分遅い海外デビューでした。

 これに対して、現在の本学の学生の海外渡航状況をみると、海外実務訓練、羽ばたけ!TUT 海外研修、国際会議発表、ダブルディグリープログラム(DDP)での留学など、多くの学生が、20歳代の随分早い時期から海外訪問するようになり、本学の国際化環境も学生のマインドもグローバル化してきました。皆さんもこれから海外交流の機会は幾度もありますので、チャンスをいかし、大いにチャレンジして下さい。
 本学は現在、海外拠点・事務所のマレーシア教育拠点(ペナン校)、瀋陽事務所(中国・東北大学内)、またニューヨーク市立大学クイーンズ校(アメリカ合衆国)での教職員研修としてのFD・SD語学研修、東フィンランド大学(フィンランド)及びシュトゥットガルト大学(ドイツ)でのダブルディグリープログラム(DDP)、文部科学省・世界展開力強化事業でのIMLEXプログラム(東フィンランド大学、ジャン・モネ大学(フランス)、ルーベン・カトリック大学(ベルギー))など、国際交流が益々活発になってきています。今後は、国際交流・連携をさらに発展させ、国際共同研究、ベンチャー・スタートアップ事業、インターンシップ、留学、就職などをさらに活性化させ、世界で活躍できるグローバル人材を育て、世界の中で"きらりと光る"大学にしたいと思います。

 さて後半は、世界的話題である新型コロナウイルス(COVID-19 )とSDGsについて話します。この名前を聞くと、グローバル化はポジティブな面だけでなく、ネガティブな面もあるのだと気づくと思います。グローバル化により、どこかの遠い国で起きた事が、人、物、情報として、迅速に、そして広範囲に伝わります。今回の新型コロナウイルスは、世界に瞬く間に広がり猛威を振るっています。生命維持、環境維持などを考えると、国連によるSDGsの提案の重要性が今更ながらよく理解できます。

 ところで、SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略です。日本語では、「持続可能な開発目標」といいます。SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。産業革命以降急激に活発化した人間活動により、経済・社会の基盤である地球の持続可能性が危ぶまれていることに端を発します。SDGsは17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」持続可能な社会を実現することを誓っています。 SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。例えば、ゴール3は、「すべての人に健康と福祉を」という目標があり、ゴール9は、「産業と技術革新の基盤をつくろう」という目標、ゴール11は「住み続けられるまちづくり」という目標掲げられています。これらのSDGsの目標達成のためには、政府、産業界、大学を含む教育関係者等,皆が貢献していく必要があります。
 本学の構成員の一員となられる皆さんは、教育・研究活動等を通じて、SDGs等、国際社会が直面する課題の解決,目標の達成に貢献することができます。また、そうした世界規模の視野を持って、教育・研究に従事し、大学生活を送ってほしいと思います。

  いま、新型コロナウイルス感染症対策で我々ができることは何でしょう。こうした感染症に対しては、まずは、自分が感染者にならない、また人に感染させないことで、感染症を世界に広げないことです。このウイルスの特徴は、現時点の情報としては、感染症に罹患しても約 80%の人は軽症で済むこと、5%程の方は重篤化し、亡くなる方もいること、高齢者や基礎疾患を持つ方は特に重症化しやすいことです。一方、若い方は、罹患してもわからないことも多いようで、そのことから、ハイリスク者を感染させることの危惧もあります。なお、最近では、若者も重症になることもありますから決して油断してはいけません。

 新型コロナウイルス感染症対策の指針としては厚生労働省のHP、また本学のコロナ対策や行動指針については本学のHPに掲載されており、オリエンテーション配付資料や講義室前の掲示板にも注意事項が掲載されています。さらに適宜、教職員により指導を徹底していきます。しっかりそれを理解し、自己管理してください。今回の新型コロナウイルス感染症との戦いは、短期決戦ではなく、1年程度続くという見解もあります。したがって、本学は、新型コロナウイルス感染症が収束するまでは警戒態勢を敷き、持続した努力をし、学生、教職員を守ります。今回の危機は命にかかわることなので、皆さんも、決して侮らず、慎重に行動ください。全学が一丸となり、協力して対応していくことが不可欠です。一人の横柄な行動が本学のみならず、これから皆さんが学びの場としてお世話になる地域にも迷惑をかけることを肝に銘じてください。これは、皆さんへの、わたしからの最初のお願いです。

 これから、皆さんは、いろいろな学習や専門の研究をしていきます。その時、これから本学で学ぶこと、また研究テーマとして切り開いていく分野は、個人の利益のために行うのでなく、先ほど述べたSDGsに基づき、人類全体の利益のために行っているのだという使命感を持つようになって欲しいと思います。例えば、今述べた新型コロナウイルス感染症対策を例にとると、どのようになるでしょうか? 応用化学・生命工学系の学生は、コロナウイルスを撲滅させる薬やワクチンの開発。情報・知能工学系の学生は、感染状況などの危険地域を知らせる情報ネットワークの構築。電気・電子情報工学系の学生は、コロナウイルスの検査用センサ開発。機械工学系の学生は、人と接触するところを代用するロボットの開発。建築・都市システム学系の学生は、コロナウイルス対策の都市計画や交通網などの構築。 等々、色々な学習や研究分野が考えられると思います。また、それぞれの専門分野の垣根を超えた異分野融合の研究も必要でしょう。皆さんそれぞれの立場で、自分には何ができるか、また何がしたいかを考えてみてください。

 今、地球は大ピンチですが、こういう時ですから、本当に大事な研究を見出すことができるかもしれません。新型コロナウイルス感染症が収束し、世の中が平穏になったとき、ピンチがチャンスになる事を祈念して、万が一自宅待機が必要な時にも悲観せず、その時間を前向きに捉えて普段できない読書三昧や深い思索などで創造力を大いに高めてください。

 さて、大学というのは自由なところです。学問の自由、思想の自由など、いろいろな束縛が少なく勉強や部活動ができるところです。また年齢的にも諸君らは大人です。大いに自由を満喫し活動ください。ただし、それには2つの制約が付きます。それは自主性と責任です。大学では、人に言われてするだけでなく、むしろ自ら進んで計画を立てて行う自主性が諸君に求められています。もちろん、本学としても学生が十分に学べる教育内容やスタッフ、体制を整えています。しかし主体は君たちです。自主性に期待します。それともう一つは責任です。自由と放任は違います。学生も教職員も、自由においては、自ら行うことに対して自己責任を持たなければなりません。それが大人の証拠でもあります。なお自由な環境で、いくら創造的な仕事をしても、それが地球を滅ぼす発明ではいけません。SDGsを考えて、大いに創造的な学問や研究をしてください。本学の学生は、失敗を恐れて小さく固まった学生生活をするのでなく、失敗を積み重ねても大きな夢を見て、自由な発想で創造的な仕事に取り組み、大きく成長してくれることを希望します。果敢に未知なるものに挑戦し、仲間と大いに議論し、そして大学生活を十分に楽しむことが、なによりの大学時代の成長と思い出になると私は思います。

 最後になりますが、豊橋技術科学大学に入学したことを誇りに思ってください。本学の規模は決して大きくはありませんが、教育、研究で高い実績を上げてきた大学です。工学系としては、国内ではトップクラスの大学と言ってよいと思います。一方、我々教職員も優秀な君たちを迎えることができ、誇りに思っています。本学が国立大学として、国民の支援により成り立っていることを忘れず、感謝して広く社会に成果をお返しするつもりで学業に励んでください。これから始まる新たな学生生活を大いに楽しんで、大きく成長してくれることを心より祈念し祝辞とします。

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