2023.08No.156(オンラインNo.38)

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ラジオ番組『天伯之城ギカダイ』

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もくじ

Chapter1電気で流れを生み出すEHD

機械工学系助教 西川原 理仁

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Q EHDって何ですか。
A EHDは、絶縁性の気体や液体に高電圧をかけると電気の力の作用で流れが起きるという現象のことで、エレクトロ・ハイドロ・ダイナミクスの略です。



Q 電圧をかけると液体が流れたり、風が吹いたりするってことですか。どういう理屈でそんなことが起きるんですか。
A 高電圧をかけることで絶縁体の中にイオンができます。プラスとマイナスの電荷が引き寄せあったり反発したりする力(クーロン力)で流れが起きます。



Q でも流れを起こすなら扇風機とかスクリューを使った方が手っ取り早くないですか。
A プロペラを使えば音や振動が発生します。振動は様々な機器類の寿命を縮める原因になります。EHDでは基本的には振動も音も発生しません。



Q なるほど。EHDを応用して音の出ない扇風機やスクリューが完成するんですね。すばらしい!そんな現象があるなんて知らなかったです。昔からわかっていた現象なんですか。
A はい。原理自体は60~70年前にわかっていたんですが、今のところあまりパワーがなくて使えるところが限られています。



Q 電圧をどんどん上げればパワーが出ませんか。
A 出ますが、電圧を上げ過ぎるとショートしておしまいです。ですから我々はパワーアップを目指すのではなくて、プロペラではできないような小さいスケールでの応用を考えています。例えば人工衛星の電子機器が熱を持つので冷やすためのラジエータが活躍していますが、ここにEHDを応用できないか、いまJAXAと共同研究しています。



Q JAXAと共同研究!かっこいいですね。いま人工衛星のラジエータはプロペラで冷却液を回してるんですか。
A はい。そこにEHDを応用して、電圧を調整することで流す速度を速くしたり遅くしたりするお手伝いができないか研究しています。そうすることで液体が運ぶ熱量を制御でき、機器の温度を思い通りに調整できるようになるわけです。



Q なるほど!今はどんな課題に取り組んでいますか。
A 今は小さな空間で使えることを目指し、電極を数ミクロンの大きさにして装置の小型化に取り組んでいます。そうすればもっといろんなことに応用できそうですからね。



  楽しみです。頑張ってください。





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Chapter2⽊材の利⽤と⽊質ハイブリッド構造の開発

建築・都市システム学系准教授 松井 智哉

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Q いま国策として建築に木材を使っていく方向だと聞きました。
A はい。それには様々な理由がありますが、一つはCO₂の削減があります。木材の状態で、建物に炭素をストックしておこうというわけです。そこで我々は「木質ハイブリッド構造」という、鉄筋コンクリートと集成材(複数の板材を接着して大きな木材として使用するもの)を組み合わせた構造を提案しています。




Q 木材だけで作っちゃダメなんですか。
A 木材は火に弱いので、木材だけで高層建築物を建てる場合、特別な設計が必要となります。鉄やコンクリートを合わせれば設計の自由度が広がります。



Q 「木質ハイブリッド構造」って具体的にはどんな構造なんですか。
A 私たちが研究している木質ハイブリッド構造は2種類あります。一つはEWECS構造といって、鉄骨とコンクリートの柱の周りを集成材で囲ったものです。もうひとつはRCW構造といって、集成材の柱の周りを鉄筋コンクリートで囲ったものです。



Q 鉄筋コンクリートを使うなら、木材なんか使わなくたっていいじゃないですか。
A 木材が入ることで重量が軽くなるというメリットがあります。軽いと地震の際、揺れる力が小さくなります。しかも木材はコンクリートで囲われているので耐火性にも優れています。



Q じゃあEWECS構造よりRCW構造の方がいいってことですか。
A EWECS構造は鉄骨を使っているので耐震性に優れています。すでにEWECS構造の研究は設計法の提案までを完了、RCW構造については研究継続中で、いまRCW構造の梁に力を加えて強度を調べているところです。



Q 満足いく数字は出ましたか。
A はい。全て鉄筋コンクリートで作った梁より、集成材を芯にしたRCW構造の梁の方が大きな力に耐えることがわかりました。



素晴らしいじゃないですか!従来の構造より強いわ軽いわ、温暖化防止にも役立つ夢の技術。
実用化を楽しみにしています。ありがとうございました。





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天伯之城 ギカダイ

豊橋技術科学大学はエフエム豊橋(84.3MHz)とのコラボレーションにより、tempaku_watanabe.png
本学のアクティビティを広く皆様にご紹介するラジオ広報を放送しています。その名も「天伯之城 ギカダイ」。
https://www.tut.ac.jp/castle.html ←こちらより視聴可能
エフエム豊橋の人気パーソナリティ渡辺欣生さんが、毎週、本学のいろいろな研究室、サークルなどを訪問し、普段、素朴に思う技科大の「なに?なぜ?どうして?」を分かりやすく紹介しています。

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