2023.08No.156(オンラインNo.38)

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輝くギカダイ卒業生

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Chapter1愛知県立名古屋工科高等学校教諭 井上 満さん

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井上 満(いのうえ みつる)
愛知県立名古屋工科高等学校 エネルギー化学科 教諭(現在3年生担任)

1999年3月 物質工学専攻 修士課程修了
2015年7月 機能材料工学専攻 博士課程修了

度失敗しても志を曲げない、「百折不撓」の精神力を

大学入学前は、どのような子ども・学生でしたか?
勉強が大嫌いでしたが、学校が大好きで小学校~高校はほとんど皆勤でした。学校生活は絶えず落ち着きがなかったので、保護者会などで担任の先生から注意をたくさん受けたり、通知表に絶えず注意が書かれていたのを今でも覚えています。授業態度・成績も悪く、超問題児でした。
中学校と高等学校で尊敬できるたくさんの恩師と出会いました。そのころから密かに教師という職業への憧れを抱いていました。

豊橋技術科学大学への入学を志望した理由は何ですか?
私は地元愛知県瀬戸市の県立瀬戸西高校の出身で、その後、北海道の室蘭工業大学に進学しました。大学時代は理論化学(分子科学)の研究に従事したのですが、なかなか上手くいかず、行き詰まり、故郷の愛知県に戻り、大学院では実験化学を頑張ろうと思いました。当時、夏休みに行われていた技科大のオープンキャンパスに参加して、大学院教育に重点を置いた「らせん型教育」ということに感銘を受けて進学を決意いたしました。
さらに、高等学校教諭として在職中に学級担任を持ちながら博士課程に進みました。その理由は生徒の高度な質問に的確に答えられず、自分自身をさらに鍛えて自分を変えたいと思ったからです。
長期履修制度特別コースを利用させていただき博士課程の修了までに6年間かかりました。2015年7月、事務局棟でたった一人の学位授与式が行われました。華やかな3月の式と違い、私の最後にふさわしい質素な式でした。すでに40歳になっていました。

豊橋技術科学大学で印象に残っていることは何ですか?
高専出身の学生さんをはじめ、皆さまとても個性的で素晴らしかったです。研究室では、ある教授がコーヒー(ときどきプリンまたはゼリー)を片手で持って入ってきます。そして、言い放つ「四文字熟語」がたいへん印象的でした!研究室で、絶えず四文字熟語の意味を問われ続け、大変苦労いたしました。
また、当時のある副学長が大変忙しく、雑誌会や報告会に遅れてくるので先生や学生がその到着を待って夜遅くまで大変でした。そのお陰で研究室の学生さんと悟空亭・龍ちゃん・とん喜などへ食事に行ったことがとても楽しかったです。当時は、体重が100kg近くあったので2人前以上を平気で食べていました。しかし、現在はダイエットに成功して体重が60kgになりました!当時の複合材料工学研究室の皆さん、グループLINEありがとうございます。再び同窓会をやりましょう!

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複合材料工学研究室で大変お世話になったゼイダムさん(左)と山崎さん(右)

今まで、どのような仕事を経験されてきましたか?
修士課程卒業後は、高等学校の教員として25年間勤務して現職に至ります。この間、学級担任、部活動(運動部、文化部)、学科主任業務、日本学術振興会が交付する科学研究費助成事業等による教育研究活動、愛知県教育委員会の研究指定事業、初任者研修の講師、化学系企業の研修会の講師、小中学校への出前授業の講師、教員免許状更新講習の講師、大学の非常勤講師、専門書等の執筆、書籍出版のプロデュース(ボランティア)、豊橋技科大での博士号取得など多くの教育・研究活動を経験いたしました。現在は17年間勤務した岡崎工科高校から転勤して心機一転、新たに挑戦中です。今年4月に転勤した学校でいきなり3年生の担任となり、生徒の進路指導等に追われています。

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企業研修会(愛知県環境測定分析協会)

大学で学んだことで、仕事に役立っていることはありますか?
勤務している名古屋工科高校では工業化学、化学工学、材料化学、環境化学などの座学と実習を教えています。技科大において、修士課程は複合材料工学研究室、博士課程はマイクロ分離研究室に所属しておりましたので研究室で学んだことが直接的に教員生活で役立っております。先生方のご指導のもと、夜遅くまで先輩、同級生、後輩と実験した経験も勤務校で働く上での基礎となっております。
博士号を取得すると何よりも自信がつきます。そして、その他の能力も自然に身についています。特に、自ら動いて、情報を探し、分析し、実践し、結果をまとめる能力は色々なところで役に立ちます。そして、大学教員や大学の先輩後輩だけでなく、同世代(他大学)のアカデミック系人材や学会や国際会議でご一緒なった方々など、圧倒的な人脈が構築されます。もし、皆さんに博士号をとるチャンスが訪れたなら、かなり大変ですが、積極的にチャレンジしてください!自分を大いに磨くチャンスです。

井上さんにとってこの仕事の『やりがい』とは?また、仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
15歳から18歳というのは自分をつくっていく時期のため、さまざまな苦労や悩みがありますが、教師はそれを理解し、ともに解決していくことが求められます。自分がサポートしたり、見守ったりすることで、生徒たちが日々成長していく姿を見られるというのは、何物にも代えがたいやりがいです。高校教師の大きな魅力は、生徒の人生に関わる仕事ができるという点でしょう。
報道の通り、教師の仕事はブラックなのでしょうか?正直大変なこともあります。しかし、それよりも活動的で純真な生徒たちと関わり、笑ったり、泣いたり、大切な気づきを生徒から与えられたりと、心揺さぶられて感動する場面がたくさんあります。この職業は、大変なこともありますが、大変さに勝る素晴らしさが溢れています。

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勤務高校での授業

学生へ向けたメッセージをお願いします。
四文字熟語で締めたいと思います。皆さんは「百折不撓」という言葉をご存知でしょうか?「百折不撓」は、「ひゃくせつふとう」と読みます。「百折不撓」とは、「何度失敗しても志を曲げない」という意味です。複雑多岐な現代社会の中では、たくさんの不安や失敗など、色々な試練が皆さんを待ち構えています。そんなときに大切な精神力がこの言葉には内在しています。人生は長き道のりです。どんなに一生懸命頑張っても上手くいかないことが必ずあります。それでも、それでも、それでも頑張れる人になってください!

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