2022.08No.154(オンラインNo.36)

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輝くギカダイ卒業生

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Chapter1外資系IT企業 Senior Staff Research Scientist
藤井 康寿さん

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習にとらわれて変化を嫌ったり、目先の利益のために全体の利益を損なわない


ふじい やすひさ(2012年7月 電子・情報工学専攻 博士後期課程修了)
外資系IT企業 、Senior Staff Research Scientist

大学入学前は、どのような子ども・学生でしたか?
今でもあまり変わっていませんが、好きなことにはとことんのめり込むタイプで、その時々で好きなことに熱中していました。スポーツなど体を動かすことの時もあれば、カードゲームなど体を動かさないことの時も。反面、好きでないことにはなかなか手を付けられず、夏休みの宿題を前日まで残したり、実験のレポートや卒論の取り掛かりが遅く、いつも期限直前に提出したりなど、成績は悪くありませんでしたが、いわゆる真面目な優等生ではありませんでした。

豊橋技術科学大学への入学を志望した理由は何ですか?
苫小牧高専の出身で、北海道大学への進学も考えていましたが、担任の先生から豊橋技術科学大学を強く勧められたことと、北海道の外に出てみたかったことが主な理由です。推薦入学で、受験勉強が必要なかったことも理由の1つでした。

豊橋技術科学大学で印象に残っていることは何ですか?
全国各地から集まった、色々な背景を持った人たちと一緒に勉学に励んだことは財産になっています。留学生が多く、皆優秀なので、それも刺激になりました。国内外の学会に多く参加できたことも、研究者を志す良いきっかけになったと思います。
豊橋技術科学大学の研究室は、最先端の計算機、教科書、論文へのアクセスが容易で、研究に集中できる環境が整っており、好きな研究に没頭できました。代々の先輩方が休憩部屋に残してくれた数々の古典漫画も良い教養になりました。

今まで、どのような仕事を経験されてきましたか?lens.jpgのサムネイル画像
博士課程では、音声認識に関連した研究を行っていましたが、卒業後は、画像中の文字を認識する、いわゆるOCR(光学文字認識)に関する研究開発を、米国カリフォルニア州マウンテンビューにある本社の研究部門にて行ってきました。実は、音声認識と文字認識では共通した技術が多く、入社当初は、博士課程での研究経験を活かし、音声認識で主に研究されてきた技術を文字認識に適用することを行っていました。小さなチームの一兵卒から始まりましたが、仕事の成果が認められ、現在では、Tech Leadと呼ばれるチームの技術責任者及び、マネージャー(管理職)として、大きくなったチームを率いています。我々のチームで開発したOCRシステムは、弊社の様々なサービスで利用され、日々、世界中の多くの言語に対して画像及び動画中の文字を認識しています。弊社のサービスやアプリを利用したことがあれば、おそらく、直接的あるいは間接的に我々のOCRを使用した経験があるのではないでしょうか。
2022年の1月からは日本が恋しくなり、日本支社の勤務となりました。これまでの経験を活かし、面白いことができたらと考えています。

大学で学んだことで、仕事に役立っていることはありますか?
研究職であり、かつ、博士課程での研究に関連した内容を仕事にしているので、研究室で学んだことは基本的に全て役立っています。授業で学んだ内容も、基礎として血肉になっていますし、らせん型教育により、高専で習った内容を学部で一通り再学習できたのも良かったです。また、研究、勉強以外にも、豊橋で若い時代を過ごす中で日々学んだことは、異国の地で人を管理しチームを率いる上で、非常に役立っていると思います。

藤井さんにとってこの仕事の『やりがい』とは?
研究と製品(プロダクト)の距離が近く、アカデミックな研究をしながら、開発したものを地球上の多くの人へすぐに届けられることは、非常にやりがいになっています。また、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」という使命から、社会的な貢献度の高い仕事にも携われます。チベット語のOCRを開発していた関係では、ダライ・ラマ14世に会えたことも嬉しかったです。同僚に世界的な研究者や技術者が多くいて、必要であれば直接相談できたり、一緒に働けることも刺激になります。
私が入社した頃に、ちょうど深層学習と呼ばれる新しい機械学習手法が流行り始めていました。それから約10年、新しい時代が作られていく様を、まさに中心から眺められたのは良い経験でした。

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仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

仕事をする上では、自分ではなく、チーム、会社、そしてユーザーの利益を最大化するということを常に念頭に置いています。自分が慣れ親しんでいるという理由でこれまでの慣習に囚われて変化を嫌ったり、自分の目先の利益のために全体の利益を損なわないようにしています。例えば、研究であれば、論文になりうる小さな新規性のために、本質的でない技術に傾倒しないといったことが重要になります。成果になりそうな技術について、自分達のチームで抱え込まず、近隣のチームも巻き込んで大きな成果を上げていくということも大切です。

座右の銘、好きな言葉などがあれば、教えてください。
それぞれ違う研究者の先輩からいただいた大切にしている言葉を2つ紹介します。1つ目は「人間万事塞翁が馬」、2つ目は「鶏口となるも牛後となるなかれ」です。
実は、博士号取得後、私は音声認識の研究を続けるつもりでしたが、入社後の配属等の関係で、少し違う分野の研究をすることになりました。入社当時は音声検索などが使われ始めた頃で、音声認識はすでに社内でもたくさんの人が関わっていましたが、文字認識に関わる人は少なく、私が配属されたのはとても小さなチームでした。しかし、非常に重要な技術を少ない人数で担当できたことにより、責任ある仕事や役割を早くから任され、数年後、結果として、私は文字認識チームのリーダーとなり、沢山の重要な仕事をすることができ、社内でも大きな評価を得ました。まさに、この2つの言葉通りになったと言えます。

学生へ向けたメッセージをお願いします。
皆さん、様々な思いを持って豊橋にいらっしゃると思います。わたしから言えることは、豊橋技術科学大学には、成長に必要なものは全て揃っているということです。
ここで何を学び、何を得るかは自分次第です。

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