2017.02No.143(オンラインNo.25)

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もくじ

Chapter1技術科学イノベーション研究機構の設立と活動

副学長(研究担当)
技術科学イノベーション研究機構長
寺嶋 一彦(てらしま かずひこ)

国内外のリーディング企業やトップ研究機関との協働研究を進めることにより、本学の研究力を向上させることを目的に、平成28年4月1日「技術科学イノベーション研究機構」が設置されました。

本機構では、従来からあるエレクトロニクス先端融合研究所(EIIRIS)、4つのリサーチセンターの研究活動を発展させると共に、創発型システム研究部門、社会システム研究部門、先端(融合)研究部門の3部門からなる戦略研究部門を設け、先端的・融合的研究の強化によりイノベーションを創出することを目指しています。

戦略研究部門の研究テーマの選定においては、学内公募を行い、厳選の上、16件のイノベーション協働研究プロジェクトを立ち上げました。新しいこのプロジェクトは、国内外の研究機関や企業とのマッチングファンドにより、特定分野の最先端を切り開くと共に、研究成果の社会実装・社会提言を強化します。各プロジェクトは、自己資金として外部資金(共同研究費等)を用意し、大学側からはプロジェクト運営資金が配分されるマッチングファンド形式です。プロジェクトの研究リーダは本学教員で、研究員の1名以上は企業または、海外大学・研究機関の研究者で構成しています。プロジェクトの実施期間は原則3年です。16件の中には、グローバル企業や地元の企業など多数の大型産学連携が誕生しており新しい気運が感じられます。なお、平成29年度は継続に加え、若干の新規プロジェクトも募集予定です。

これと共に、平成27年度からは、国内外の研究機関と施設を共有して特定先端研究を行う3つの先端共同研究ラボラトリーが始動しています。各々、カリフォルニア工科大学、産業技術総合研究所、マサチューセッツ工科大学との先端共同ラボで、これらの研究テーマもイノベーション協働研究プロジェクトに含まれています。機構の運営においては、本学の事務組織と研究推進アドミニストレーションセンター(RAC: Research Administration Center)等の支援のもとに強力に進めています。

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Chapter2社会連携推進センター設置について

副学長(IR担当 / 社会連携担当)
社会連携推進センター長
井上 隆信(いのうえ たかのぶ)

社会連携に関しては、昨年度まで社会連携推進本部で担当していましたが、昨年4月に社会連携推進センターが発足しました。今まで実施してきた社会貢献活動に加えて、社会人実践教育プログラムを充実させることとしています。

社会貢献活動では、自治体との連携、地域諸団体との連携、大学等との連携、市民向け公開講座、高校生向け講座、小中学生向け講座、リサーチセンター等の社会貢献、講師派遣など多彩な事業を展開しています。

社会人実践教育プログラムでは、文部科学省の「職業実践力育成プログラム」の認定を受けた最先端植物工場マネージャー育成プログラム等、産業技術科学分野、地域社会基盤分野で合計10件の人材育成プログラムを実施しています。

企業では、CSR (Corporate Social Responsibility, 企業の社会的責任)が重要視され、社会的貢献が求められています。大学においても、教育・研究活動を通じて社会に貢献するだけでなく、地域社会に大学の持っている「知」を積極的に還元することが必要になってきています。社会連携推進センターでは、地域や社会のニーズを十分吸い上げて、一つ一つの活動を見直し、効果の高い活動に改善して実施していきたいと考えています。

社会貢献活動
社会貢献活動
自治体、教育機関、諸団体等と連携し、地域社会の活性化、文化の向上を図ります。
社会人向け実践教育プログラム
社会人向け実践教育プログラム
業務変革への対応や企業・転職に役立つ社会人向けの実践教育プログラムを用意しています。

Chapter3高専との連携をさらに強化するため、新しいセンターが設置されました

学長特別補佐(高専連携担当)
高専連携推進センター長
若原 昭浩(わかはら あきひろ)

今年度から、高専との連絡窓口の枠を越えて本学と高専との連携をさらに強化するため、これまでの高専連携室を発展強化した高専連携推進センター(KOSEN Liaison Center:略称はK-LinCです)が設置されました。センターでは、執行部や学内外の関連委員会などと連携を取りながら、様々な活動を開始しています。ここでは、それらの取り組みの柱になる内容を紹介します。

■高専教員による連携活動強化の企画・提案

高専連携教員との意見交換会の様子
高専連携教員との意見交換会の様子

これまでは、高専との人事交流制度で大学に所属している教員の協力を仰いで、連携活動の企画や提案をおこなってきました。本年度からは、連携活動に協力いただく高専の教員を拡充し、高専に在籍したままで高専連携教員として大学の身分を持ってもらい、大学からの視点に偏らず、高専の実情と強みを生かした新しい連携事業や、高専と大学が共同した人材育成のプランについて活発な議論を進めています。この議論のなかで、夏期に実施している体験実習の語学サマースクール化や、高専教員と技科大教員の定期的な合同研究会など、新しいアイディアが提案され、来年度からの実施に向けて検討が進められています。

■高専と大学が共同した技術の実装に強い人材の育成

左から井上理事・副学長、若原センター長、大西学長
左から井上理事・副学長、若原センター長、
大西学長

これまでの技科大と高専の教育面での連携は、主に共同研究を通じて学生に研究発表の場を提供することが中心でした。技科大と高専は、共に実践的な技術者・研究者の育成を目的とする教育機関です。実際の開発研究では、各種技術の中から最適なものを選択し、あるいは必要な基礎技術を開発し、製品やシステムの形に作り上げることが重要です。このような能力を身につけるためには経験と時間が必要ですが、高専から技科大大学院まで両教育機関の教員が連携し、共同で学生を指導することで、新しい技術に触れ、"ものづくり"に適用する十分な時間と経験を積む環境が実現できます。この取り組みに関しては、高専の専攻科から大学院まで、共同で一貫した教育研究を行う教育プログラムが動き始めています。


ここに紹介した内容は、高専連携推進センターの活動の一部で、高専訪問、保護者説明会、高専・技科大連携教員研究集会等従来からの活動についても、その活動内容を見直すと共に充実させていく予定です。今後も社会環境の変化に対応して進められていく高専教育の改革の情報をキャッチし、学内の各種委員会に情報の提供を行うと共に、高専と連携した人材育成についての企画・提案を行っていきます。高専連携活動は、センター所属の教職員だけでは成り立ちません。収集した各種情報は、C棟2階にある高専連携推進センターで学内の皆さんにご覧いただける場を整えて行きます。まだまだ整備の途中ですが、気軽に立ち寄っていただける環境を作っていきたいと考えています。学内の皆さんの理解と参加、学外の皆様にはご理解とご協力を頂けますようお願い申し上げます。

高専連携推進センターへのアクセス
高専連携推進センターへのアクセス

便利情報:高専連携に関する各種資料・情報の収納先

Chapter4図書館改修、TUT グローバルハウスについて

施設課長
渋谷 省一(しぶや しょういち)

■図書館改修(グローバル人材教育支援施設(仮称))について

図書館は、昭和55年(1980)に建設され、全学における学術情報のセンターとして資料の収集・保存・提供を通じ、学生・教職員の教育・研究・学習活動を支援してきました。

平成23、24年度にトイレ改修等、部分改修を行ってきましたが、経年による老朽化が進んできたこと、近年の図書館の在り方に合わなくなってきたことを踏まえ、図書館を改修する必要が生じました。改修に当たっては、外部パブリックスペースも図書館と一体的に活用出来るように整備することとなりました。

改修に当たり、改修計画検討専門部会、書籍配置計画等検討専門部会を設置し、時代と学生等の要望にあった図書館に改修する計画をまとめました。

改修後は、技術科学によるイノベーション創出や、グローバルに活躍できる指導力のある優れた技術者・研究者の育成のため、多文化共生グローバルキャンパスの核としてキャンパスの中央に位置する図書館の1階に、日本人学生、留学生、教職員、企業、地域との交流等を行うエリアとして整備し、グローバル化をキャンパス全域に波及させます。

また、女性専用の休憩室、授乳室等の女性研究者等支援エリアを新設し、女子学生、女性研究者等のサポート体制の充実強化により学修しやすく、働きやすい環境を創出します。

なお、図書館北側の外部パブリックスペースについても、図書館と外部パブリックスペースを内部から外部へのつながりや人の流れを大切にした一体的な空間として整備し、質の向上を図ります。

2階は、資料を使い個人、数人で学修するエリアとし、3階は、研究等個人で静かに学修するエリアとし、平成29年3月に完成し、4月から供用開始となります。

附属図書館

■TUT グローバルハウス

平成27年スーパーグローバル大学創成支援事業の採択に伴い、グローバル技術科学アーキテクト養成コースの新設に合わせて、日本人学生と外国人留学生が生活を共にする、収容人数180人のシェアハウス型グローバル対応学生宿舎「TUT グローバルハウス」を建設することとなりました。 ここでは、日本人と留学生が一緒に生活し、国内にいながら国際生活を体験できる環境とし、ハウスマスターを中心として教育プログラム等を実施します。これにより、世界に通用する人間力を備えたグローバル技術科学アーキテクトを養い、多文化共生グローバルキャンパスの実現を図ります。 

1棟鉄骨造3階建て30人収容を6棟と集会所1棟を建設します。1ユニットは、5人の個室(8平方メートル)と共用のリビング・ダイニング・キッチン、シャワールームを備えています。

平成29年3月に2棟と集会室、平成30年3月に2棟、平成31年3月に2棟が完成します。

学生宿舎の設計、建設、維持管理、運営については、PPP方式により、宿舎料を財源として、大和ハウス工業(株)等のグループが、平成61年までの30年間行います。

グローバル対応学生宿舎

Chapter5『めざましごはん』誕生から1年

理事・事務局長(経営担当)
鈴木 章文(すずき あきふみ)

豊橋技術科学大学は、開学40周年記念事業の取り組みの1つとして、学生支援の充実に関する事業を挙げています。学生の心と体の健康増進として、食生活に注目し「規則的かつ栄養バランスのいい食事は朝食から」という習慣をつけることを目的としました。

学生への食生活支援プランとして、平成28年1月から本格的な準備を開始しました。当初は「TUT朝食プロジェクト」の名の下、大学執行部、健康支援センター教員・保健師、食堂業者(管理栄養士含む)及び学生課と3ヶ月に亘る調査・検討を行いました。

その中心的な役割をされた方が、当時の学生課長の松本 哲夫さん(平成22年~教務課長、平成26年~学生課長、平成28年10月にご逝去)でした。学生のことを語ると大変似合うのが松本さんでした。学生にとっては指導される先生を除けば、一番頼りになる親父的存在だったかも知れません。現在、本学卒業の多くの教員が居られますが、皆さん学生時代からお世話になったと伺っています。同じ事務局で4年近く共に仕事をした仲間として、一番強く感じたことです。

「TUT朝食プロジェクト」の名称は、途中「200円朝食」と改名し、最終的には『めざましごはん』に決まりました。平成28年4月の新入生オリエンテーションに間に合わせるように準備を進めて行きました。本学食堂の運営会社の協力によって、学生・教職員を対象に、平成28年4月4日より、限定100食を200円で提供する豊橋技術科学大学『めざましごはん』が始まりました。

『めざましごはん』のメニューは、主菜(日替わり)、玉子料理(日替わり)、副菜(日替わり)、野菜サラダ、ご飯、味噌汁です。初日(4月4日)は、30名程度の学生が利用しましたが、同日の入学式において、大西学長が式辞の中で『めざましごはん』を紹介したこともあり、翌日(4月5日)には99名となり、前期授業開始前にも関わらず、学生が朝食に来てくれて良かったと思います。また、低価格で量も豊富でとても美味しいと、学生にも好評でした。

4月6日には大西学長が食堂を訪れ、学生たちと同じテーブルにつき、『めざましごはん』をとりながら、学生たちと和やかに懇談をしました。

そろそろ『めざましごはん』が始まってから、1年を迎えようとしています。今では毎日70~90名程度の学生が朝食を摂りに来てくれています。

今年4月からは、スーパーグローバル大学創成支援事業による「グローバル技術科学アーキテクト養成コース」が開始されます。この養成コースの学生は、シェアハウス型の新しい宿舎に入居予定であり、その1/3近くが海外からの留学生です。是非、留学生のみなさんにも『めざましごはん』を利用してもらいたいと思います。

めざましごはんメニューの1例
めざましごはんメニューの1例

大西学長と学生との懇談の様子
大西学長と学生との懇談の様子

Chapter6豊橋技術科学大学における光合成のゲノム研究

環境・生命工学系助教
広瀬 侑(ひろせ ゆう)

光合成とは、二酸化炭素と水から炭水化物を作る反応であり、反応の進行に光エネルギーを利用します。私たちの身の回りに降り注ぐ太陽の光には、青・緑・黄・赤といった様々な「色」の光が含まれており、光合成生物はそれぞれの色の光を吸収するための多様なアンテナ分子を持っています。私は、シアノバクテリアと呼ばれる光合成を行う細菌が、光の色によってアンテナを造り換える仕組みを、全遺伝情報(ゲノム)に基づいて明らかにすることを目指し、研究に取り組んできました。これまでに、緑色と赤色の光を感じるユニークな光スイッチ分子を発見し、その作用する仕組みを解明する事ができました(図)。研究を進める過程で、産業応用に結びつく可能性のあるシーズも生まれています。これらの一連の成果は、前任の東京大学での成果と併せ、本年度の文部科学大臣表彰若手科学者賞の受賞につながりました。

さて、私が本学に着任したのは5年前ですが、新たなゲノム研究を始めるにあたり、最初の2年間はほとんど成果が出ませんでした。その期間を乗り切るために、石田誠エレクトロニクス先端融合研究所前所長による設備の支援、原邦彦副学長の紹介による民間企業との共同研究、教育活性化経費という本学独自の若手研究者支援プログラム、の3つがとても大きな役割を果たしました。最近では、本学でも若手研究者は短い期間に多くの成果を出す事を求められていますが、成果が出ない(ように見える)谷間の期間の存在の許容と、その期間をサポートする仕組みがあることは、ハイリスク・ハイリターンな研究テーマへの挑戦や、より独創的でインパクトのある成果につながると思います。本学が長期的な視野に立ち、高度な技術者の養成という目的に加え、若手研究者の育成の場としても重要な役割を果たし続けることを願っています。

最後になりますが、現執行部の先生方に加え、次世代シークエンサーの導入を後押ししてくださった榊佳之前学長と菊池洋前副学長、研究に専念できる環境を与えてくださった浴俊彦環境・生命工学系教授に深く感謝いたします。また、締切間際の書類や多くの手続きをこなしてくださった本学事務局のスタッフの方々に、お詫びと共に厚く御礼申し上げます。

豊橋技術科学大学における光合成のゲノム研究
シアノバクテリアは、光合成のためのアンテナを、緑色光と赤色光に応答して作り換える(上)。
この指令は、シアノバクテリア細胞の中の光スイッチスイッチタンパク質によって出される(下)。

Chapter7留学は難だが役に立つ UCLAでのサバティカル研修

機械工学系講師
永井 萌土(ながい もえと)

本学のサバティカル研修制度を利用し、2015年の9月からカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に1年間留学しました。留学に行くのは手続き的にも簡単ではありません。留学経験は、何か役に立つのでしょうか?

同じ場所で長く似た業務をやれば、伸び悩みを感じないでしょうか?私は本学に助教で着任し5年が経ち、成長の鈍化を感じていました。やり方を変えて、一段高いレベルに到達したいと思っていました。そこで、変わるためのヒントが、海外の一流校への留学でつかめるのではないかと期待し、留学することにしました。

まずはUCLAのEric Chiou教授の研究室を選定して、光学や微細加工の技術を深めることに決めました。そして、新しい方向性を見出すために、周囲との接触機会を増やしました。例えば、研究室の学生やポスドクとの時間を増やすために、学生居室に席を設けました。隣で仲良くなり、気軽に学生にお願いし、技術を教わりました。現在、この技術の展開が本学でも進んでいます。

また、教授と週に2回のミーティングの機会を持ち、教授の優れた部分を吸収しました。教授の卓越している点は、社会的な課題を見つけ、新技術で解決する点です。ここでは物理現象の理解が深いことが、独創的な方法を生み出すのに寄与していました。また、専門外の部分での共同研究者との分業も、大きい仕事をやる上で不可欠です。これらの点は、日々、真似をしたいと考えています。

留学での経験からネガティブな点への私の反応は、受動的なものから能動的なものに変わりました。今の能動的な反応を次のとおり紹介します。
①適切な人がいなければ、学生、研究支援員、共同研究者を探し、リクルートする。
②研究を進める上でお金が必要なら、必要性を説明して予算を獲得する。
③部屋の環境が適していなければ、整理整頓と工事をして環境を整備する。
と言った具合です。

留学の実現は困難でした。しかし、新しい技術を習得し、自分の発想が変わり、今の本学の業務に役に立っています。最後に、本留学に対し、本学関係者からご支援をして頂きました。また中谷医工計測技術振興財団からは、助成をして頂きました。ここに厚くお礼申し上げます。

学生居室でラボメンバーとの集合写真
学生居室でラボメンバーとの集合写真
UCLAのマスコットBruin Bear(ブルーインベア)の前での写真
UCLAのマスコットBruin Bear(ブルーインベア)の前での写真

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