概要
磁気光学空間光変調器(Magneto optic spatial light modulator: MOSLM)は、原理的に高速な駆動が可能であり、光通信や光コンピューティングといった次世代デバイスへの応用が期待されています。私たちは、超高速・低消費電力な電圧駆動型磁気光学空間光変調器(v-MOSLM)の実現のため、磁性ガーネットと圧電材料を組み合わせて微細構造を制御した「光制御用マルチフェロイック複合膜」の作製技術を開発しました。
従来技術
・電流駆動型MOSLM(i-MOSLM)は、発熱の問題から連続駆動、大規模化が難しい。
・電圧駆動型MOSLM(v-MOSLM)は、圧電誘起する磁歪効果による制御層の厚さに限界がある。
優位性
・相分離型マルチフェロイック複合膜により高い磁気光学(MO)効果が得られます。
特徴
パルスレーザー堆積法を用いてマルチフェロイック複合膜作製技術を開発しました。これらを組み合わせることで、電圧駆動型MOSLMデバイスの実現が可能となりました。
【研究成果】
- CoFeO4(CFO)膜をバッファ層としてGd3Ga5O12単結晶(GGG(111):ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)基板上に配向したBaTiO3((BTO):チタン酸バリウム)膜を得る条件の検討の結果、CFOを約500パルス成膜したGGG(111)基板上に(111)面に優先配向したBTO膜が得られることが分かりました。
- 導電性酸化物であるSrRuO3((SRO):ルテニウム酸ストロンチウム)を下部電極して用いることで、GGG 単結晶基板/CFO バッファ層上に下部電極付きの配向したBTO 層を形成する技術を確立しました。
- ガーネット柱のサイズ、間隔をサブμm オーダー以下に制御し、パターン化したCFO/BTO 層を形成することで、Bi:RIG(Bi置換希土類鉄ガーネット)を強磁性相として、BTOなどの強誘電体材料と同時にGGG(111)基板上に成長させ、相分離型マルチフェロイック薄膜材料を形成できる可能性を見いだしました。
実用化イメージ、想定される用途
・ホログラム光体積記録や3次元ディスプレイ
(超高速・低消費電力で、液晶ディスプレイのような光を制御するデバイス)
実用化に向けた課題
・高特性な複合膜の形成技術の開発
研究者紹介
中村 雄一 (なかむら ゆういち)
豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系 准教授
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研究者からのメッセージ(企業等への提案)
この技術にご興味をお持ちの企業の技術相談をお受けします。また共同研究等のご検討の際にはご連絡ください。
知的財産等
掲載日:2021年01月22日
最終更新日:2021年01月22日