後藤 仁志(ごとう ひとし)
所属 | 情報メディア基盤センター |
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兼務 | IT活用教育センター 先端農業・バイオリサーチセンター 情報・知能工学系 |
職名 | 教授 |
専門分野 | 計算化学 / 化学生物情報学 / ハイパフォーマンスコンピューティング |
学位 | 博士 |
所属学会 | 日本化学会 / 米国化学会 / コンピュータ化学会 / CBI学会 |
gotoh@ ※アドレスの末尾に「tut.jp」を補完してください |
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研究室web | http://www.cch.cs.tut.ac.jp/ |
研究者情報(researchmap) | 研究者情報 |
研究紹介
分子が関わる物理や化学や生物学的な現象を解き明かすことはとても難しいことですが,それ故にとても挑戦しがいのある研究テーマです.私の研究室では,そんな未解明で面白い分子の科学から情報技術まで広い分野の研究を行っています.具体的には,医薬品の探索や生命現象の解明を支援したり,ナノ材料の物性を高精度に再現したりするために,計算化学やバイオインフォマティクスを基盤技術とした分子シミュレーション技術や解析支援システムの開発に取り組んでいます.
テーマ1:高速・高精度分子シミュレーション技術の開発
概要
分子シミュレーションは,医薬・農薬などから新しい機能性バイオ/ナノ材料の分子設計など,私たちに身近な分子に関する様々な研究をサポートする強力な研究手段です.例えば,HIV-1プロテアーゼの研究では,リガンド分子(阻害薬)が活性部位に結合している複数の状態を精密に計算し,このプロテアーゼの機能が阻害される様子をグラフィック表現することで理解することができます(図1).また,この阻害剤の一部を変更したり,入れ換えたり,さらには,熱振動によって構造が変化していく様子を考慮したより高精度にエネルギー評価を行うなどの試みによって,もっと強力で副作用の少ない新しい薬を探すことができます.さらに,大規模分子シミュレーションとその高速解析という実践的な応用が,並列分散処理技術を計算化学法に導入することによって実現されます.
キーワード
テーマ2:結晶多形現象の解析技術の開発
概要
機能性材料から医薬品などの研究開発において,共通する重要な課題の一つに結晶多形現象の予測があります.つまり,ある分子が異なる充填形式で結晶化すると,成長した結晶の一部は期待した物性や薬効を示さないことがあるのです.例えば,アスピリンは鎮痛作用や解熱作用で有名ですが,その結晶構造として,これまで知られていた結晶構造Form Iとは少し違うForm IIが最近見つかりました(図2).我々が開発している結晶シミュレーション技術は,これら結晶構造の格子エネルギー,結晶相転移の活性化エネルギー,さらには昇華や溶解エネルギーを計算することができ,結晶多形に起因する薬効の違いなどバイオアベイラビリティ評価を支援することができます.
キーワード
担当授業科目名(科目コード)
数値解析論 / シミュレーション工学 () / シミュレーション特論 ()
その他(受賞、学会役員等)
その他の研究テーマ:1)抗癌,抗アルツハイマー病を示す新ペプチド薬探索,2)酵素の活性分子機序の理論予測,3)多配座解析に基づくX線,NMR構造解析支援システム,4)理論計算によるUV/Vis/CDスペクトル解析システム,5)分子シミュレーションのためのGUI & Webポータルシステムなどの開発を行っています.我々の研究ターゲット分子としては,医薬に関わる低分子化合物はもちろん,核酸,タンパク質,糖鎖,細胞膜など生体高分子,さらにはフラーレンやナノチューブなどのナノテク材料まで広範囲な分野に広がっています.また,こうした研究テーマは,計算化学統合システムCONFLEXやGUIシステムであるBARISTAの研究開発として活かされています.そして,CONFLEX/BARISTAをプラットフォームとして利用することによりユビキタス分子シミュレーションの実現が我々の目標です.