豊橋技術科学大学広報誌 天伯
 
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一つの半導体の中に電子と光の両デバイスを取り込む技術を開発-「光・電子集積技術業績賞」を受賞-/名誉教授 米津宏雄
 
 
 

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 パソコン、ケータイ、ディジカメ等、ありとあらゆる電気製品の心臓部は、大規模集積回路(LSI(“エルエスアイ”と読む)といわれる電子部品で作られています。LSIは、大変複雑な電子回路で、親指の爪位の大きさの半導体結晶の中に、何千万個、何億個といった膨大な数のトランジスタが入っています。この半導体結晶はシリコン元素でできています。
 電子回路が複雑で大規模になり、トランジスタ間を結ぶ配線の総延長が長くなってきました。このため、信号が配線を伝わっていく時間がトランジスタのON/OFFに要する時間に比べて無視できなくなってきました。この対策はいろいろ検討されていますが、中でも幹線となる配線には、電気信号に代わって遅れが少ない光信号が有利です。他にも、各種のセンサーやシステムで光を出したり、受けたりする機能を付加したいという夢があります。
 
 一方、半導体のレーザ(LD)や発光ダイオード(LED)といった発光素子は大量に生産されています。インターネットでは光信号が光ファイバー内を駆けめぐっており、その光信号はLDで作られます。CDやDVDの内容もLDのレーザ光で読み取ります。LEDは、赤、緑、青の信号機を初め、各種のランプや照明にまで幅広く用いられています。これらの発光素子となる半導体は、化合物半導体といわれ、シリコンとは元素が異なります。
 LSIの中に発光素子を取り込むことは、シリコンと化合物半導体を一体化した結晶を作ることを意味します。しかし、そのようにすると、結晶欠陥(専門的には構造欠陥)が高密度に発生して発光しなくなります。この問題を我々は初めて解決しました。これにより、シリコン基板結晶の上に新しい化合物半導体層を成長し、次いでシリコン層を成長することができました。上のシリコン層にLSIを作る過程で下の化合物半導体層に発光素子を作ることができれば、夢は現実に一歩近づきます。その基礎技術として、トランジスタ(専門的にはMOSFET)とLEDを一つのチップ内に自在に作ることができることを初めて実証しました。
 構造欠陥の発生を抑制できることと、トランジスタとLEDを自在に作製できることを実証したことにより、「モノリシック光電子融合システム基盤技術の先駆的研究」として、応用物理学会から「光・電子集積技術業績賞(林厳雄賞)」を受賞しました(授賞式は2007年3月27日)。これは、私達の研究室の歴代の学生諸君と助手や助教授の先生全員の成果と思っており、定年直前の受賞と合わせて、感慨深いものがあります。なお、この賞は、故林厳雄博士が、ノーベル物理学賞受賞者のAlferov博士らと「京都賞」を共同受賞されたことを記念して、林博士が応用物理学会に寄金されて発足しました。林博士は、光と電子の機能を組み合わせることの重要性を早くから提唱されていました。2003年に第1回の受賞があり、毎年1件表彰されています。今回は第4回目です。

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科学技術コーディネータと技術相談/科学技術コーディネータ 村田勝英
 
 
 

 

図 1

図 2

 

科学技術コーディネータとは:科学技術コーディネータは、文部科学省が「産学官連携活動高度化促進事業」に基づいて各大学に配置した産学官連携コーディネータで、全国に約90名います。各大学に配置されたコーディネータは技術相談、共同研究、特許出願、技術移転、地域連携などの仕事を行いますが、この産学官連携コーディネータを、本学では学内規定により科学技術コーディネータと呼称しています。ちなみに、本学が外部機関にお願いしているコーディネータが12名いますが、この方たちを産学連携コーディネータと呼んでいます。
コーディネータの仕事:科学技術コーディネータは大学の技術相談窓口を担当しています。豊橋技術科学大学に寄せられる技術相談は、年々増加傾向にあり(図1)、昨年度は165件に達しました。相談に来た企業の所在地を分類すると、図2に示すように本学が位置する東三河を中心に分布していることが分かります。技術相談の内容は千差万別です。相談企業の大は日本を代表するトップ企業から、小は個人まで、技術分野は、いわゆるハイテクからローテクまで、バイオケミストリー、電気・電子、エコロジー、土木建築など分野を問いません。相談内容もさまざまで、例えば、生産技術上の課題とか品質保証上のトラブルを解決したい、新製品を開発中であるがここを何とかならないか、このような技術の現状と今後を知りたいなど。中には、“宇宙人の遺跡を見つけたが関心はないか”などという相談まである。科学技術コーディネータは、どのような技術相談にも誠心誠意対応し、門前払いをすることはないが、このような案件については、話だけ伺ってお引取り願うしかない。
技術相談は1回の面談で終わることもあるが、多くは2回、3回とフォローアップすることが多い。また先生に実験等をお願いしなければ解決しないケースも当然出てくるので、このような場合は共同研究に格上げしてもらうことにしている。共同研究等に至るケースは、年間を通じると10件以上になる。

 技術相談の出世頭: 図3は、2年半前に技術相談として大学に持ち込まれ、本学の先生を紹介したところからスタートした、D社(豊橋市)の鉄筋コンクリート工法で用いられる新しい定着金物「DBヘッド」である。


  DBヘッドを用いる工法は、06年度「新連携計画」として国土交通省ならびに経産省から連名の認定を受け、豊橋技術科学大学は強度解析・評価を担当する。同工法は従来の曲げタイプの定着工法に対して端部に鉄製のリングを配し、その両側を加熱圧接でこぶを作り定着させるもので、格段の低コスト、工期の短縮が見込まれるとともに国内大半のメーカー棒鋼に使用可能という互換性に優れ、その経済効果は計り知れないといわれる。
科学技術コーディネータは研究基盤センター3F,304号室にいます。産学連携にかかわることであればなんでも相談に応じますので気軽にご連絡ください。連絡先は以下です。

TEL:0532-44-6605、E-mail:murata@chizai.tut.ac.jp

図 3

 
 
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国立大学法人 豊橋技術科学大学