豊橋技術科学大学広報誌 天伯
 
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放射光を利用した高分解能CTによるアルミニウム鋳造合金の三次元内部構造可視化 ~2006 International Metallographic Contest入賞~/生産システム工学系 講師 小林正和
 
 
 

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 生産システム工学系に属する我々の研究室は、戸田教授を中心として、大垣特任講師と私(小林)、3名の外国人研究員、そして大学院生と学部4年生が、自動車や航空機などに利用されるような構造材料の材料強度や破壊過程を研究しています。材料の強さや壊れ難さの秘密を知るには、材料の内部構造がどのようになっているかを知ることが必要です。最新の三次元非破壊の観察手法として、病院の検査機器でおなじみのX線コンピュータ・トモグラフィー(CT)が材料科学分野でも使われています。
 一般に、従来のX線発生装置で得られるX線の明るさでは、金属材料の内部を観察することはできません。しかし、兵庫県にある大型放射光施設SPring-8(http://www.spring8.or.jp/)では、高速で円周運動する電子を光源として、1億倍以上明るいX線を利用することができます。
  昨年、日本金属学会の推薦とともに、放射光施設SPring-8で撮影したA356鋳造アルミニウム合金(自動車の足回り部品などに利用)の組織画像を「2006 International Metallographic Contest」に出展する機会を得ました。このコンテストは、米国の材料研究者のための団体「ASM International」の支部である「The International Metallographic Society」が主催する金属のミクロ組織写真の国際コンテストです。
 そして、Digital Microscopy部門にて、二位に入賞することができました。この組織画像はSPring-8にて最先端の高分解能X線CTを利用することで、鋳造アルミニウム合金のミクロ構造である結晶粒界およびシリコン粒子の分布を三次元可視化したものです。金属材料になじみの無い方は、自動車の部品として使われているアルミニウム鋳造合金が複雑なミクロ構造を持っていることに驚くのではないでしょうか。このレベルの高分解能なCTは世界の放射光施設でも日本のSPring-8、ヨーロッパのESRF、そして、アメリカのAPSでしか行うことができません。これに加えて、我々は、X線で捉えることのできない結晶粒界に液体金属を浸透させることによって、これを観察可能とする工夫をしました。

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  「International Metallographic Contest」は、米国にて30年以上も続けられており、材料のミクロ組織研究者らが研究成果を公開し、重要な科学的な情報を伝える機会を提供することによって、ミクロ構造分析の科学を進めることを目的に掲げています。我々の研究グループも材料科学の進歩にほんの少しですが貢献できたかなと思っております。
 このような成果が出せたのは、共同研究先であるSPring-8の方々と日頃から研究を支援してくださる皆様のおかけです。この場を借りて感謝の意を表します。
 
 
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