2016.10No.142(オンラインNo.24)開学40周年記念特集号

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躍動の10年

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もくじ

Chapter1Ⅰ 教育

国立大学法人豊橋技術科学大学 年史編集部会

Ⅰ 教育本学の教育の最大の特徴は、高等専門学校からの学生を主な入学対象としつつ、工業および普通高等学校の卒業生を1年次に受入れ、学部と大学院が一貫したらせん型教育による技術者および研究者育成である。本学の教育システムは、平成22年度の学内再編により、9系から5系+総合教育院の体制となり、同時に3学期制から2学期制へ大きく変化した。再編に伴い、学部2年次生へのプロジェクト研究の導入、学部4年次における実務訓練の継続と充実、そして、大学院での企業協働教育を目的としたテーラーメイド・バトンゾーン教育の導入がなされた。再編に併せて学部3年次の入学定員を平成24年度から360名(60名増員)している。本学の特徴の一つである実務訓練において、平成25年にマレーシアにペナン校を設置し、ここを拠点とした海外実務訓練が開始されている。さらに、平成27年度より学部と大学院の連続した6ヶ月間の海外研修となる課題解決型実務訓練へと発展させている。テーラーメイド・バトンゾーン教育では、産業界および学術界トップらによる講演が行われ、平成20年度からの榊プロデュースプレステージレクチャーズ、大西隆学長が就任して以降の豊橋技術科学大学プレステージレクチャーズともに、大学院に重みを置いた本学独自の取り組みとなっている。

再編後においても従前同様に教育の質を保証すべく、4課程が日本技術者教育認定機構(JABEE)認定を受けており、講義の学生授業評価アンケートを実施し、その結果を基に各系で教員顕彰を行っている。全学においても教育特別貢献賞を制定して学長表彰を実施している。再編に伴い、新第1年次、第3年次および大学院の入学者選抜は新しい制度で実施された。その中で、卓越した技術科学者の素養を持つ優秀な人材確保・育成支援のため、「卓越した技術者養成プログラム(現、優秀学生支援制度)」が設けられた。大学院についても学部同様に5専攻に再編(平成22年に前期課程、平成24年に後期課程)を行い、平成22年度「社会の要請に対応する学際的教育推進(本学の強みを生かした企業と協働したテーラーメイド・バトンゾーン教育プランの実践)」、平成24年度「次世代シミュレーション技術者教育プログラムの開発(高専から大学院まで実践的上級技術者教育の実践に向けて)」および、平成25年度「『生命』を軸とした環境工学技術者(生命環境工学技術者)育成プログラム」の採択・実施がなされた。さらに、平成25年度「博士課程教育リーディングプログラム」および「研究大学強化促進事業」、平成26年度「スーパーグローバル大学創成支援事業(グローバル化牽引型(タイプB))」に採択され、海外教育拠点(ペナン校)を活用しての教育実践や積極的な専門科目への英語教育導入(バイリンガル授業)等を進め、グローバル技術科学アーキテクト養成コースを新設し、現在、大学のグローバル化を推進している。

教育設備においては、平成20年度に一般講義棟のA棟の改修工事が行われた。平成24年度「国立大学改革強化推進事業(三機関が連携・協働した教育改革)」による三機関(豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学、国立高等専門学校機構)連携を推進するための事業の一環として、グローバル・イノベーション・ネットワーク(GI-net)が開設され、両大学および各高専間の専用TV会議回線が設営された。さらに、この三機関連携事業において、グローバル人材の育成教育を総合的に支援する学内組織として、ペナン校に加え、「国際協力センター」、「国際交流センター」および「国際教育センター」により構成されるグローバル工学教育推進機構(IGNITE)を設置し、海外インターンシップの拡充、大学間国際交流の促進、IGNITE国際会議の開催、大学教職員および高専教職員への教育活動(ニューヨーク市立大学クイーンズ校と協力によるグローバルファカルティ・ディベロップメント(FD)事業)等も進められている。来年、平成29年度から、豊橋技術科学大学は、新設のグローバル技術科学アーキテクト養成コースに学生を迎え入れ、学内の国際化を進めるとともに、社会に求められるグローバル人材育成を推し進めていくことが期待されている。

Chapter2Ⅱ 研究

国立大学法人豊橋技術科学大学 年史編集部会

Ⅱ 研究平成18年以降のこの10年、文部科学省から毎年配分される運営交付金の1%削減が継続され、大学の研究環境の厳しさは増すばかりである。本学の教育研究環境を維持し、さらに強化していくためには、運営費交付金以外の獲得が大変重要になっていることを理解する必要がある。その様な背景から、これまで研究戦略室、産学連携本部、そして2年前から産学連携本部を発展的に改組、構築した研究推進リサーチアドミニストレーションセンターと、その時々に対応して研究戦略の組織を充実させてきた。具体的な活動として、競争的資金等の研究費獲得等支援充実、知的財産創出・維持の支援、技術科学支援室の設置、研究設備の有効利用システム構築などが進んでいる。また、教員の自由な発想から、あるいは大学として重点的に組織的活動ができる研究センターを組織化することも継続している。現在、4つのリサーチセンターが活動している。

全国的に文部科学省が展開してきた研究に関する競争的な仕組みとして、本学で2件の21世紀COEプログラムが平成14年から開始され、平成18年度に終了した。その後を受けてグローバルCOEプログラム(GCOE)が公募され、本学では平成19年度の情報、電気、電子分野で1件採択された。このGCOEが平成23年度に終了したが、その後2年間の博士課程学生の「卓越した大学院拠点形成支援補助金」を得ることのできる評価であった。これらのCOEプログラムは、資金のみではなく、その後の大学の知名度を上げた点でも重要であった。この成果を元に本学で初めての研究所「エレクトロニクス先端融合研究所」が平成22年10月に設立された。当初第2期中期目標・中期計画で平成24年設立を計画していたが2年早くスタートすることができた。この研究所開設と同じくして、テニュアトラック制度とテーラメイドバトンゾーンプログラムがスタートした。まさに、GCOEの2課題(研究と人材育成)を継承できるものであり、研究所の重要な構成の一つとなった。

近年、我が国の研究力は、国際的に見ると相対的に低下傾向にあると言われている。大学の世界ランキングも話題となっている。このような国際競争力の低下傾向に歯止めをかけるために、平成25年、文部科学省は「研究大学強化促進事業」を創設した。この事業の目的は、世界水準の優れた研究活動を行う大学群を増強し、我が国全体の研究力の強化を図るため、大学等による、研究マネジメント人材群(URA:リサーチ・アドミニストレーター)の確保や、集中的な研究環境改革等の研究力強化の取組みを支援することである。

研究大学強化促進事業の募集に際しては、研究活動の状況を測る指標(科研費の獲得状況、Top10%論文数の割合、民間企業との共同研究実績等)に基づいて、あらかじめ文部科学省からのトップダウンで、全国27のヒアリング対象機関(応募資格を持つ機関)が選定され、最終的に、本学を含む全国22の機関(国立大学:17、私立大学:2、大学共同利用機関法人:3)が支援対象として採択された。事業期間は平成25年度から10年間で、本学は年間約2億円の支援を受けることになった。

申請時に作成した「研究力強化実現構想」の中で示したビジョンは次のとおりである。本学は、開学以来、『技術を科学で裏付け、新たな技術を開発する学問、技術科学の教育・研究を使命とする』という基本理念のもとで産学連携拠点の形成を進め、短期長期の社会・経済的要請に対応した教育研究活動を展開してきた。これらの実績や、エレクトロニクス先端融合研究所(EIIRIS)に代表される異分野融合研究の場を基盤として、今後は、直近の課題解決を目標とした「課題解決型工学」から、新しい価値の創造を理念とした「価値創造型工学」に進化した異分野融合研究の拠点形成を目指していく。このビジョンを実現するために、「人材登用」「国際化」「研究分野」「研究推進体制」等に関して、次のような方針を設定し、実施している。

人材登用:これまでも外国人・女性教員を含め多様な人材を登用してきたが、優れた教員・研究者の確保と若手研究者の育成をさらに強化するため、研究者循環型モデルを構築する。これを戦略的に実現するため、年俸制を基本とする学内特別人事システムを導入するとともに、テニュアトラック制度を活用し、多分野から多様な人材を確保する。また、本学の教員に企業経験者が多いという強みを活かし、産業界との人材交流をさらに深めていく。

国際化:本学の強みは、留学生受入や国際交流において特に東南アジアとの関係が深いことである。そこで、グローバル工学教育推進機構の組織化や東南アジアへの海外キャンパス設置(ペナン校)等でさらなる国際化を図る。また、エレクトロニクス先端融合研究所(EIIRIS)を中心として国際化を展開することで、国際共同研究を活性化し、外国人教員・研究者の比率を向上させる。

研究分野:異分野融合研究の推進・強化に資する特筆すべき数々の研究成果があるという強みを活かし、これまで培ってきた産学連携をさらに強化し、異分野融合的研究を全学的に推進する。これにより、現在の「課題解決型工学」から「価値創造型工学」へと進化させていく。

研究推進体制:全学的な研究戦略を策定する機能と、戦略決定後の研究推進に係る総合的な支援機能を強化するため、これまでの産学連携本部を発展的に改組・構築した研究推進アドミニストレーションセンター(RAC:Research Administration Center)を設置し、「研究戦略室」「研究・産連推進室」「知財管理室」「技術科学支援室」を置き、各室にはURAを配置してURAを横断的に統括する「URAオフィス」を設けた。

Chapter3Ⅲ 学園生活

国立大学法人豊橋技術科学大学 年史編集部会

Ⅲ 学園生活学生の課外活動を総括する学生組織としての総部会は、新入生歓迎行事、サークルリーダーズ研修会等の行事を主催している。課外活動団体の次期リーダーの養成を目的とするリーダーズ研修は、平成26年度から学内研修に切り替え、グループワーク・グループ討論の時間を大幅に増やし充実した研修としている。平成27年度時点で登録されている体育系課外活動団体は24団体、登録者数は746名、文化系課外活動団体は21団体、登録者数は958名となっており、何れも対外的な活動を行なっており、その活動範囲は広い。

学生生活の実態、さらに意見・要望を把握し学生生活の改善・充実に資するため、3年ごとに全学生に対して学生生活実態調査を実施するとともに、平成26年度より「学長と学生との懇談会」という形で学生と学長の直接の意見交換も行ない、これらも踏まえて学内の環境整備を推進している。経済的支援として、文科省からの措置分に本学の自己財源を加えて授業料免除を実施するとともに、本学独自の制度として「優秀学生支援制度」(平成28年度に「卓越した技術科学者養成プログラム」から名称変更)により、特に学業優秀な学生に対し、授業料免除等の経済的支援を行なっている。奨学金制度としても、日本学生支援機構に加え、本学独自の「豊橋技術科学大学豊橋奨学金」に毎年5名程度を採択している。学生宿舎としては平成21年度4月から女子学生用のF棟の入居受け入れを開始し、現在、従来のA~E棟と合わせ合計595人が収容可能となっている。また、「スーパーグローバル大学創成支援」事業採択に伴い、シェアハウス形式のグローバル対応学生宿舎を新設し、平成29年度から入居受け入れを開始する予定である。学生支援としては、クラス担任懇談会を毎年4月の新学期が始まる前に開催し、健康支援センターなどとクラス担任との連携を図り、学生の支援体制の強化を推進してきた。学生の様々な個人的な問題・悩み等について相談に応じるための相談窓口も年々充実させており、平成27年度には、カウンセリング、保健スペースなどをB棟206室の「学生相談室/保健室」に集約した。カウンセラーへの相談は年々増加しており、カウンセリングを週5日に拡充した平成21年度~平成26年度の年間平均件数は543件となっている。

本学では留学生として、学部3年次編入の高専生、国際プログラム入学者など、海外学生の多様な受け入れを行なっている。それに対応するため平成22年4月に国際交流センターを設置し、さらに平成25年10月のグローバル工学教育推進機構(IGNITE)の設立により、国際交流センターも新体制となり、国際課留学生係との連携により、学業から生活面における留学生支援体制の一層の充実を図ってきた。平成22年度より国際交流センターでは、留学生と学内関係者の積極的な国際交流を行うことを目的として、「国際交流デー」を年に数回実施している。

本学同窓会は、会員相互の親睦を図り、本学の発展に寄与することを目的として、昭和57年3月に発足し、平成28年3月現在の正会員数は1万4千人に達しようとしている。平成26年度より、大学との連携・協力の下、同窓会海外支部の立ち上げを本格的に進めている。

本学では学生コモンズが福利厚生施設に設けられ、特に研究室配属前の3年以下の学生の課外活動、就学ならびに食事の場所などとして有効に活用されている。平成25年10月から福利施設の全面改装工事が行われ、平成26年4月から本格運用が始まった。それに伴い委託業者も売店・食堂の委託業者も変わり、理容は閉店し、学生支援ルームを新たに新設するとともに、プリペイド機能を持った学生証のICカード化が実施された。

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