
概要
カーボンニュートラル社会の実現のため、金属材料のさらなる高強度・高延性化が求められています。本研究グループでは、巨大ひずみ加工の1つである高圧ねじり加工(High-Pressure Torsion, HPT)や、産業において広く普及している強冷間圧延、さらに熱処理を併用した加工熱処理等による高密度格子欠陥制御を行うことで、金属材料の力学的高機能化を目指しています。

従来技術
輸送用機器の軽量化において、鉄鋼材料と比べてアルミニウム合金は強度が低く、水素脆化の恐れもあり、適用に障害があります。
優位性
強加工により材料中へ高密度格子欠陥を導入し、形態・分布等を制御することで、アルミニウム合金に限らず、各種金属材料の高強度・高延性化、耐水素脆化特性の向上といった力学的高機能化が可能です。
特徴
合金組成、加工プロセス、熱処理といったパラメータを駆使し、強度・変形特性のミクロ・マクロ的評価、従来の常識には則らない組織因子の積極的活用、特異な強化・変形機構の解明を行うことで、金属材料の力学的高機能化に取り組んでいます。
図1 溶体化処理後に強冷間圧延と時効した
アルミニウム図合金の公称応力-公称ひずみ曲線
アルミニウム合金に対し、溶体化処理後に強冷間圧延と時効処理を組み合わせた高密度格子欠陥制御を行うことで、従来材
(図1:青線)よりも高強度・高延性化を達成しました。(図1:赤線)
図2 時効条件により粒界近傍組織を変化させたアルミニウム
合金のTEM組織、低ひずみ速度法引張試験、昇温脱離分析
アルミニウム合金の水素脆化感受性に及ぼす粒界上析出相、結晶粒界、溶質原子等の各格子欠陥の影響を調査し(図2)、耐水
素脆化特性に優れる材料設計指針を提案しました。
実用化イメージ、想定される用途
構造材料、材料加工・処理、組織制御、合金設計、プロセス開発、自動車・鉄道・航空機用部材
実用化に向けた課題
・他の合金組成や合金系、鉄鋼材料、非鉄金属材料における強化・変形機構への適用
・巨大ひずみ加工技術の実用規模への拡大
・耐応力腐食割れ性や疲労寿命などの検討
研究者紹介
石井 裕樹 (いしい ゆうき)
豊橋技術科学大学 機械工学系 助教
researchmap
研究者からのメッセージ(企業等への提案)
鉄鋼、非鉄、自動車、機械メーカーといった様々な企業の技術相談や、企業・大学・研究機関の共同研究をご検討の際はご連絡ください。
知的財産等
掲載日:2024年11月12日
最終更新日:2024年11月18日