文字サイズ
検索

News & Topics

ホーム > News & Topics > 3月23日に平成28年度大学院修了式・学部卒業式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。

3月23日に平成28年度大学院修了式・学部卒業式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。

イベント報告 | 2017年3月27日


式の様子式の様子

3月23日に平成28年度大学院修了式・学部卒業式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。
大西学長並びに博士後期課程修了者及び論文博士はアカデミックガウンを着用し、式に臨みました。

式では、博士後期課程修了生13名、博士後期課程論文博士1名、博士前期課程修了生417名及び学部卒業生474名に対して学位記が授与されました。


大西学長からの式辞は次のとおりです。


卒業生の皆さん、おめでとうございます。
豊橋技術科学大学は、本日905名の卒業生を送り出します。大学や大学院を終えて、社会に出る卒業生の皆さんにとっては、新しい生活への一歩を踏み出す日です。また、大学院の博士前期課程や博士後期課程に進む皆さんにとっては、気持ちを新たに学業の次の段階へ進む節目の日です。それぞれの課程で成果を上げた皆さんの努力に敬意を表し、心から祝福します。
お子様方の晴れの日を待ち望んでおられたご家族の皆様にはお祝い申し上げます。多くの皆様にご来場いただき、感謝申し上げます。また、卒業生を指導し、支援してこられた本学教職員の皆様のご尽力に改めて感謝申し上げます。
加えて、本学は、国立大学法人として、運営費交付金をはじめとして国からの多額の支給を受けています。これらは言うまでもなく日本国民の租税を原資としており、この機会に広く日本国民の皆さんの支援に感謝するとともに、卒業生の皆さんが、これから社会に出たり、大学院に進学して、本学で学んだ成果を生かすことによって、国民の期待に応えていくことを望みます。

本学は、今年度開学40周年を迎え、昨年10月には記念式典、講演会、祝賀会を行いました。また、今月28日には、40周年の記念として、知的交流の拠点としての附属図書館のリニューアル事業と、留学生と日本人学生がともに暮らし、異文化理解が深まると期待しているシェアハウス型の学生宿舎「TUTグローバルハウス」の第1期事業が竣工します。これらに加えて、課外活動共用施設、陸上競技場の整備をはじめとして、様々な40周年事業を実施することができました。これも、記念事業のために多額の寄付をして下さった東三河や全国の企業の皆様、卒業生、在校生のご家族、退任された教員、教職員の多くの皆様のお陰です。この場を借りてお礼を申し上げます。
特に、私が印象深く思っているのは、昨年11月8日に、「学長を囲む会」の皆様が、キャンパスの一角に、この地域に自生する「シデコブシ」を7本植樹してくれたことです。木々の成長とともに、学生諸君や本学が成長し、活躍するようにという期待が込められています。「学長を囲む会」の皆様は、40数年前に、この地域に技術系大学を作ろうと活動した方々です。当時30代であったので、現在はそれぞれに歳を重ねておられます。しかし、目的としていた技術系大学設立が豊橋技術科学大学設置という形で実現してからも、本学の活動を叱咤激励しながら見守り、さらに将来の成長を期待して植樹を思い立ってくれたのでした。シデコブシは、ちょうど今がシーズンです。この7本も1年目から見事に花を咲かせています。地元の方々の本学にかける期待と愛情を改めて感じます。卒業生の皆さんも、この後、大学へ戻ったら、是非シデコブシの花を愛で、その前で写真を撮って、卒業の記念にしてください。

さて、卒業生の中にはご承知の方もいたかもしれませんが、私は、本学の学長と、日本学術会議の会長という二つの仕事をしてきました。二つとも、まだ現在進行形ですが、日本学術会議会長の方は、今年9月に6年間の任期を終えます。日本学術会議は、「わが国の科学者の内外に対する代表機関である」と、設置を定めた日本学術会議法にあり、人文社会科学、生命科学、理学、そして工学のあらゆる部門を代表して活動しています。これまでの5年半の間、私は様々なことに力を入れてきました。私の任期が東日本大震災の直後から始まったこともあって、そのうちの一つは、防災・減災の活動で、南海トラフ地震が心配されるこの地域に学長として来ることになったのは、このテーマが一つの縁なのかと思います。
もう一つが、future earthというテーマです。今日はこれについて、少しお話ししましょう。
future earth=未来の地球、というテーマは、世界の科学者が取り組むべき共通のテーマとして掲げられているもので、2年前に国連が決めた持続可能な開発目標(SDGs)や地球温暖化防止といったテーマにも大いに関連があります。こうしたテーマは、文明社会の発達、つまり人間が様々なモノを開発して使ったり、大量のエネルギーを生み出して使ったり、あるいは人々の活動のために自然を切り拓いて人工物を構築して利用することが、いつの間にか、自分たちの暮らす地球環境に大きな変化を及ぼすまでになって、人間やその子孫の生存すら脅かしているという認識から浮かび上がったものです。地球の気候、あるいは地表や地殻の構造は、太陽と地球の運動など、人を超えた自然活動によって支配されていると思っていたものが、実は人間自身もそれに作用する存在となってきたというわけです。
Future earthは、こうした人間の営みが地球の生態系や気候に影響を与えるようになった時代、これをAnthropocene(アントロポセン)、「人(じん)新世」、あるいは「ひと新世」と呼んでいますが、この時代において人間の営みを反省する立場から文明のあり方を見直そうという意味が込められています。地球の地表や地殻、あるいは大気やその圏外を観測して、地球内外の環境変化を見出そうということももちろんfuture earthの重要な研究テーマです。しかし、それだけではなく、科学的な観測や発見をもとに、地球に迫る危険を多くの人々と共有して、危険回避のための行動を起こそうという能動的な活動も含まれています。このことを、transdisciplinaryな活動と呼んでいます。似たような言葉でinterdisciplinaryという言葉があります。この言葉が、異なる分野の研究者間の連携を指すのに対して、transdisciplinaryは、研究者の世界を超えて、政治、経済、市民社会などのあらゆる分野の連携を指すとされます。つまり、地球環境を守るためには、研究者が観察データなどを把握するだけでは不十分で、研究者自らが他の分野の人々と協力して、地球環境の悪化の危機に立ち向かわなければならない、というものです。
私は、4年ほど前に、このfuture earthという言葉とそれを進めようとしている動きを知って、とても大事なことと感じ、日本でも積極的に取り組んでいくことが必要と思い、日本学術会議としての活動を始めました。現在では、日本国内や世界でもfuture earthは随分浸透してきたと思います。昨年末に、日本政府が作成した持続可能な開発目標(SDGs)に関する実施指針の中でも、future earthが取り上げられました。

future earthの活動を通じて学んだことが少なくとも二つあります。一つは、分野を超えて研究者が協力し合うことの重要性です。科学の分野には、それぞれ専門の壁があり、いつの間にか、その壁がとても高く聳え立っていることになり、研究者の分野を超えた連携がうまくできなくなってきました。future earthは、interdisciplinaryの名の下で、研究者間の連携を促しています。
もう一つは、研究者も時にその成果を広めるために、研究者以外の人々と協力し合っていくことが必要だということです。研究者は特権的な立場ではなく、一人の市民として、自分の研究成果を広く社会に伝達して、社会の問題解決を共に進める役割があることです。つまり、研究者が行う研究を含めて、すべて活動は社会の中で相互に影響し合っているということです。これがtransdisciplinaryの考え方の基礎になります。
この4年間で、future earthを進めるための世界の研究や連携の推進体制が整ってきました。日本は、これらを支えるための国際事務局をスウェーデン、フランス、アメリカ、カナダとともに担っています。またアジア太平洋地域の拠点としての活動も引き受けています。

future earthと、本学の技術科学はどのような関係があるのでしょうか。この問題の発端が物質の創造、エネルギー生産を加速させた現代の文明社会、それと一体の工業社会と深く関係していることから明らかなように、技術科学は今日の文明を築いてきたもっとも重要な科学です。それと同時に、あえて言えば、未来の地球を危機に晒す原因ともなりうるし、また危機から救う救世主ともなりえます。まさに、技術科学を学び、発展させる者が、しっかりと技術科学の使い方やその発展の方向を定めなければならないと言えるのです。
今日卒業する皆さんは、本学で、技術科学の基礎を学び、これから、長い人生の中で、それを活用しながら社会に貢献していきます。世界の人口がなお増加し続け、世界の人々がなお物質的な豊かさを求める中で、それらに応えつつ、地球の環境が不可逆的な悪化を続けないようにするには、技術科学として何をするべきか、卒業に当たって大きなテーマを与えられたと思ってください。このことを考え続け、皆さんそれぞれがこれから担っていく役割の中で、解答を模索することを期待します。

さて、開学40周年の年に卒業する皆さんに、一つ提案があります。それは同窓生のネットワークの要となってはどうかということです。開学40周年というと、最初の卒業生はちょうど還暦を迎える歳になります。現在では60歳が仕事を終える歳というのは当たりませんが、まだ、日本の多くの職場では60歳を区切りとする古い制度が残っています。その意味では、皆さんは先輩たちに代わって、新たに社会の一線を担う人材になります。豊橋技術科学大学は、この40年間で、約2万7千人の卒業生を輩出してきました。多くが国内外の企業、大学、高等専門学校、公的機関などで働いています。実は40周年を記念して、特に海外の卒業生が集まる機会づくりを企画して、これまでにペナン、バンコク、コロンボ、北京、上海などで、卒業生の会を催しました。近い間柄である高等専門学校や長岡技術科学大学とも一緒に企画したので、それぞれたくさんの卒業生が参加してくれました。技術科学を学んだ仲間が、それぞれの職場や地域で、経験交流、情報交換を行い助け合うことができれば、人生の荒波を乗り切っていくうえで、大きな支えになることは間違いありません。皆さんは、卒業して、新しい場所で活動を開始したら、是非、本学はもとより、高等専門学校さらに長岡技術科学大学などの卒業生を見つけて、同窓生としての交流を深めるようにして下さい。本学としても、卒業生に最新の大学の状況をお知らせしたり、大学が関わる技術科学に関する最新の知的交流の機会などを設けて、卒業生と積極的に交流していくつもりです。
本日は、卒業とともに、豊橋技術科学大学の卒業生としての一歩を踏み出す日でもあることを認識していただければと思います。

結びに、改めて卒業をお祝いして、式辞とします。おめでとうございます。

学位記授与学位記授与

学長式辞学長式辞

答辞答辞

吹奏楽団による祝賀演奏吹奏楽団による祝賀演奏

ページトップへ