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大西学長メッセージ『ダイナミックな大学運営に向けて』

トピックス | 2015年12月15日


10月終わりから、財務省財政制度等審議会の分科会での議論をめぐって、慌ただしい動きが続きました。10月26日の財政制度分科会で、来年度から2031年度まで、毎年1%ずつ国立大学法人に対する運営費交付金を削減するという財務省の考えが示されたからです。資料によれば、2031年度までに基準年度の2013年度から1,948億円削減されることになります。もし、全額を授業料で相殺するとすれば、70%の増額が必要となり、2031年における授業料は現在の53万円余りから90万円を超えることになります。これはもちろん相当な増額で、学生の家計への影響が心配されます。

国立大学協会や文部科学省が積極的に動き、国立大学振興議員連盟(自民党・公明党の議員がメンバー)をはじめとする関係国会議員の皆さんの御理解もあったため、同財政制度等審議会が11月24日にまとめた「平成28年度予算の編成等に関する建議」では、削減の具体的な数値は落とされました。しかし、運営費交付金を削減して、自己収入を増やすべきとする考え方は変わっていないので、来年度の運営費公付金がどのように査定されるのか予断を許さない状況です。

財務省の論理は相当乱暴で、18歳人口が100万人を切る2031年度に、運営費交付金への依存割合と自己資金の割合を等しくするというもので、等しくすることに何の合理性もありません。加えて、自己資金に含まれる企業等からの寄附については、私立大学に認められている税額控除が国立大学には認められていないなどの不利があります。学生納付金や企業からの研究費や寄附からなる自己収入を増やすことが望ましいのはいうまでもないことですが、目的積立金制度をより安心できるもの(現在は、特に中期目標・計画期間を超える場合には、次期への積み立てが可能とは明示されておらず、可能かどうかに財務省との協議が必要)にするなど、国立大学の運営に経営的なセンスを導入できるようにすることをまず行うべきと思います。

1年8か月ほどの学長経験で感じたことは、法人化されたとはいえ、国立大学の運営は、単年度主義の会計システム(1年の予算をその年に使い切ることが原則)とほとんど変わらず、後年度に繰り越す場合には、使途について文部科学大臣の承認が必要であり、本当に後年度に使えるのか心配しなければなりません。これでは節約や合理化のインセンティブは働きません。

全体で1.1兆円という国の予算の中で、少なからぬウエイトを占める国立大学運営費交付金に対する財政当局の削減のための動きはますます頻繁に、厳しいものになっていく恐れがあります。現在の水準を維持していくために、当面は、国立大学全体で論陣を張ることが必要です。その上で、本学としては、将来の大学経営の在り方を先取りするように、様々な形態での産学連携推進や研究成果の還元に向けて注力していきたいと考えています。新しい年は「ダイナミックな大学経営」をキーワードにしてみたいと思っています。

(学長室だより 第91号より)

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