3月23日に平成26年度大学院修了式・学部卒業式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。
イベント報告 | 2015年3月24日
式の様子 |
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学位記授与 |
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学長式辞 |
3月23日に平成26年度大学院修了式・学部卒業式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。
大西学長及び博士後期課程修了者はアカデミックガウンを着用し、式に臨みました。
式では、博士後期課程修了生12名、博士前期課程修了生361名及び学部卒業生470名に対して学位記が授与されました。
大西学長からの式辞は次のとおりです。
皆さん、卒業おめでとうございます。特に、大学や大学院を終えて、社会に出る卒業生にとっては大きな節目の日となります。また、大学院の博士前期課程や博士後期課程に進む皆さんにとっては、気持ちを一新して、次の段階へ進むことが重要であるという意味で、やはり節目の日です。一つの過程を達成し、区切りを迎えた皆さんに、豊橋技術科学大学の全教職員と在校生を代表して、843名の卒業生の皆さんに、改めて、「おめでとう」と申し上げます。
本日は、多数の保護者の皆さんにもお出でいただいています。お子さん達が大きな成果を上げて、卒業式を迎えられたことを心からお祝い申し上げます。
本学の教職員の皆さんにも、学生に対する教育や研究指導、様々な支援をしていただいて、今日の日を迎えることができました。お礼を申し上げます。
本学は、「実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う大学院に重点を置いた工学系の大学」として昭和51年に設置されました。私は、この設置目的に関連して、「技術科学」大学という校名に特別の意味を感じています。自然科学が自然を対象としてその原理を考察し、社会科学が社会を対象にその原理を考察するように、技術科学は技術を対象にその原理を考察する学問です。つまり、技術を科学することによって、その技術がなぜ有効なのか、その応用はどうあるべきか、さらにより技術を進化させるにはどうしたらいいのかを考えるのです。この場合、技術とは、直接モノを造るそれであったり、造る工程を管理するそれであったり、さらに造るものをデザインするそれであったり、多様です。また今日では情報という直接見え難いものを対象としてモノづくりに挑む研究も盛んになりました。そうした、広義の技術の中には、日本人が得意とする分野も多いのです。したがって、技術科学を探求することは、日本人の得意な分野をさらに伸ばすことにもつながります。皆さんは、本学で、それぞれの分野での技術科学を学んだ、すなわち、技術の本場で、技術科学を学んだことになりますから、大いに自信と誇りを持って下さい。これから、社会に出たり、上級の課程に進学して、これまで学んだ技術科学を大いに生かして、活躍することを期待します。
さて、皆さんは、本学在学中に、随分英語の学習に力を入れていることを感じたと思います。中には、英語はあまり得意ではないから、工学を選んだのに、随分勉強させられたと思っている人もいるかもしれません。本学が英語の学習に力を入れてきたのは、技術科学を究めて、社会に普及させるには、どうしても、国際語としての英語でのコミュニケーション能力を高めることが不可欠と考えているからです。こうした活動の成果が認められて、本学は、昨年、スーパーグローバル大学創成支援事業の実施校の一つに選ばれました。これから、本学では、日本語と英語の二つの言葉によって専門分野を理解し、相互にコミュニケーションが取れる人材を育成しようとしています。皆さんは、その黎明期に本学で技術科学を学び、世界に目を開くことが、特に重要であることを知ったことになります。是非、国際的な技術科学の伝道師になることを志して、世界の多くの人々とコミュニケーションすることを忘れないで下さい。
もちろんそれは、単に国際共通語である英語を身に着けることだけで完成するわけではありません。他国の出身者を、その文化や歴史を知ることを通じて理解して、尊敬する習慣を持つ、多文化共生という考え方を理解することがとても大事です。本日も、日本人のほかに、36人の外国人が本学を卒業します。本学でも、皆さんは、異なる国の出身者の交流や相互理解を体験したのですが、その体験をこれからますます活かしていくようにしてください。
ちょっとここで、近代化途上の時代の日本に目を向けてみましょう。そこには技術科学のもう一つの側面が存在します。
明治維新とともに、日本の近代化が始まりました。日本政府が行ったことの一つに、海外の、比較的若い技術者を日本に招聘し、技術指導に当たらせたことがあります。こうした外国人技術者は、「お雇い外国人」と呼ばれ、当時の総理大臣よりも高給で雇用されるケースもありました。極東の地に来るのは大変だった時代ですから、それくらいの待遇がなければ、来る人が少なかったのかもしれません。
私が、お雇い外国人に関心を持ったのは、たまたま、先年、在日オランダ大使館からの依頼で、ヨハニス・デ・レイケというオランダ人の河川技師の没後100年の記念式で講演したことがきっかけでした。デ・レイケは淀川や木曽川の治水事業の指導のために来日し、政府のアドバイザーを辞してからも日本に残り、30年もの長きにわたって、日本の治水のために貢献した人物です。ただ、これは例外的で、お雇い外国人は、総じて短期間で帰国しています。外国人招聘の目的は、技術や原理、つまり技術科学を学び取ることにあったので、お金のかかる外国人の雇用期間をできるだけ短くして、早く技術を国内に根付かせようとしたのです。日本にとっては、進んだ技術科学をなるべく少ないコストと時間で吸収することになるわけだし、お雇い外国人にとっても、慣れない地での勤務をできるだけ短くできるので、この考え方は合理的だったのでしょう。
もちろん、特に重要だったのは、技術科学を正確に理解して、活用し、さらには応用できるようにすることでした。そのために有効だったのが、早い時期から、教えてもらう立場の日本人が積極的に実務を担い、実務を通じて知識を吸収する方法でした。つまり、習うより、慣れろ、という考え方が貫かれたのでした。ここに技術科学のもう一つの側面、科学に裏付けられた技術も使いこなされなければ、効果を発揮しないというという側面が存在します。これから社会に出る皆さんは、特に、こうした技術科学を使いこなすという点を学ぶことになるでしょう。企業という、実際に技術科学を使って、製品を製造して、社会に供給する役割を担当する場では、まさに細部にわたるまで成熟した技術を適用して、モノを造らなければならないからです。
お雇い外国人の話を今日ここでしたのは、一つは、皆さんが学んだ技術科学に国境はないから、その恩恵を求めている人々に役に立つように使うという精神を是非持ってもらいたいと思うからです。本日の卒業生が、世界の各地で、様々なニーズに出会って、本学で学んだこと、さらにその後の知識を存分に使って活躍することを期待します。その際に、誰が、何のために皆さんの技術科学を求めているかをよく理解して、それぞれの人に役に立つ貢献をしてもらいたいと思います。
二つ目は、人に役立つ技術科学に高めていくためには、技術科学に裏付けられた技術に磨きをかけて、効率的なものにしたり、より効果的なものとして、実用に相応しい性能を持たせる努力が必要です。原理の解明は行われても、実用化できない技術は沢山あるのです。お雇い外国人にすべてやってもらうのではなく、自分達がその技術を習得するために、はじめは手本を示してもらい、やがて、自分達がやることにアドバイスをしてもらい、最後は自分達がその技術をより恩恵を受ける人や風土に合うように改善していくようにしたからこそ、日本では早く当時の欧米で発達した技術を習得することができ、その中から新しい技術科学の発展を図ることができたんだと思います。
こうした、近代文明黎明期の日本の体験は、これから世界に羽ばたく皆さんにとっても、参考になることが多いはずです。皆さんは、教える立場に立つ可能性があると同時に、先人から吸収する立場に立つことも多いはずです。寛い気持ちを持って、相手の役に立とうと考えると同時に、吸収する立場では、自分が使いこなせるようにしっかりと習うことが大事です。
結びに同窓会の話をしましょう。昨年12月、マレーシアのペナン島で、本学の留学生の同窓会が発足しました。本学に留学した皆さんが、国を超えて同窓会を作ったわけです。これは、単に人数がそう多くないから、いくつかの国の同窓生が一緒になって同窓会を行うという消極的な意味ではないと思います。むしろ、国境を越えて、同窓生の結びつきを強めることで、それぞれの留学生のこれからの活動がより発展するという考えに基づいていると思います。折角同じ大学で技術科学を学んだのだから、その縁を大事にして、相互に協力することができれば、有効だ、ということでしょう。その意味で、これから豊橋技術科学大学の同窓生として、大いに交流を深めて下さい。私たちも、同窓会や様々な機会に皆さんが元気に活躍する様子を伺うのを楽しみしています。
ご卒業おめでとうございます。ありがとうございます。
大学院修了生、学部卒業生代表の答辞は次のとおりです。
答辞 |
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吹奏楽団による祝賀演奏 |
本日は、ご多忙のなか、先生方、並びに来賓各位のご臨席を賜り、私たちのために、盛大な修了式・卒業式を挙行していただきましたことを、修了生、並びに卒業生を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。また、只今、学長先生からの暖かい訓辞と激励のお言葉を賜りましたことを、重ねて御礼申し上げます。
春寒次第に緩み、春の息吹が立ち込めてまいりました。今日の佳き日に、私たちは、修了、卒業を迎えることとなりました。私たちが、これまで学術の世界に身を置き、充実した日々を過ごし、この日を迎えることができたのは、本学の手厚い教育体制、そして、多くの方々からのご指導、暖かいご支援があったからこそだと、改めて実感しております。
これまでの刻苦勉励の日々を乗り越えることができたのは、学問の奥深さを示し、丁寧かつ熱心にご指導下さった先生方、多くの時間を共有し、互いに切磋琢磨した学友、先輩後輩の皆さま、私たちを今まで育て、暖かく見守り支えて下さった両親、家族の皆さま、そして、私たちに学びの場と機会を与えて下さった、すべての皆さまのご協力があったからこそだと実感しております。心から感謝の意を表したいと思います。今日まで誠にありがとうございました。
私が本学に編入学をしてから七年の月日が経ち、その多くの時間を、研究に費やし、情熱を注いできました。私達の身の回りに溢れている金属材料は、最も良く使用される鉄であっても、不明な点が多くあり、解決しなければならない問題が山積しております。これらの問題に対して、如何にアプローチするかを、自ら提案し、解決して行くのは大変な苦労を要しましたが、試行錯誤を繰り返して得た様々な実験結果が繋がり、形となることで、メカニズムが明らかとなっていった際には、学術に貢献することの喜び・楽しさ、醍醐味、やりがいを学びました。私は、本学でこのような経験を得たからこそ、次のステップでの生活が始まったとしても、将来待ち受けているであろうどのような逆境にも臆することなく、突き進んで行けると確信しております。
現在、我々は、石油資源の大量消費に起因する地球温暖化・気候変動、石油資源の枯渇など地球規模の問題に直面しています。さらに、東日本大震災の発生に伴う原発事故によって、核燃料に頼ることも難しい状況となり、持続可能な社会の形成の重要性がより一層強くなりました。さらに、中国を始めとする途上諸国の急速な発展によって、グローバル社会における日本の存在感が失われつつあります。
このような状況の中で、資源に乏しい日本では、技術革新を通して、グローバル社会においてイニシアチブを取ることが、必要不可欠となります。この大役を担うのが、わたしたち技術者であり、わたしたちの世代に課せられた使命でもあります。
そのためにも、修了生・卒業生の一人一人がそれぞれの立場、環境において、本学で得た知識や経験、技術を最大限に発揮し、一人一人が持つ信念や哲学にもとづいて、それぞれの分野において活躍を果たしていくことを心に刻み、邁進いたします。
最後になりましたが、もう一度、私たちに学びの場と機会を与えて下さったすべての皆様に、心からの感謝を申し上げ、そして、私たちの母校、豊橋技術科学大学の、より一層のご発展をお祈り申し上げ、本日のお礼とご挨拶に代えさせていただきます。