電気・電子情報工学系井上光輝教授と高木宏幸助教のグループが、磁石からメガネなしでの3次元画像の表示に世界で初めて成功しました。
トピックス | 2012年2月17日
3次元画像を表示 |
豊橋技術科学大学の井上光輝教授と高木宏幸助教のグループは、ナノサイズの薄い磁石を用いて、3次元画像を表示することに世界で初めて成功した。
3次元画像の表示は、メガネをかけて見るタイプが普及しているが、成功したのはメガネなしで3次元画像を表示できる技術。電子ホログラフィという技術を用い、裸眼で広い角度に3次元画像が表示できた。
ホログラフィは、クレジットカードなどに利用されていて、立体像を表示する技術として知られている。今回成功したのは、これを動画として表示できる技術につながる。これまでも同じ考えで3次元画像の再生が試みられてきたが、ホログラムを表示する画素の大きさが大きいかったため(従来は小さくても15ミクロン角程度)、3次元画像の再生が非常に狭いエリアに限られてしまう欠点があった。
井上教授らは、光メモリの一種である光磁気ディスク(MO)に着目し、この光磁気メモリに利用される垂直磁化膜と呼ばれる薄い磁性材料を使った。今回は垂直磁化膜として、結晶構造を持たないアモルファス※1構造のTbFe※2合金を用い、厚さ数十ナノメートルの薄い磁石材料として表示に用いた。この磁性薄膜に、光メモリで用いられる磁気の記録ビットを、そのまま3次元画像を再生する画素に利用した。光磁気メモリの記録ビットの大きさは、ナノスケールの小さなもので、この小さな画素で表示した3次元画像は画像の中心から左右に15度以上傾いた方向から見ても3次元画像が表示できることを示した。
井上教授らによれば、現在は静止画であるが、将来的には家庭用大型テレビサイズで、フルカラーの動画再生も可能であるという。光磁気メモリは日本で発明され実用化されたが、現在は半導体メモリに置き換わってしまった。この技術を3次元画像の再生に利用することで、日本発の技術が新たに生まれ変わって利用されることになる。
なお、本研究は、文部科学省地域イノベーション戦略支援プログラム(グローバル型)、浜松・東三河地域オプトロニクスクラスター事業の支援を受けて行われた。
※1 アモルファスとは、結晶構造を持たない物質の状態のことを言う。固体では、原子が規則正しく並んだ結晶と呼ばれるものと、原子が不規則に配列したアモルファス(非晶質)と呼ばれるものの2種類がある。
一般に、氷や金属、水晶などの鉱物などは結晶構造で、ガラスなどはアモルファス構造である。
※2 Tb:テルビウム(原子番号65)銀白色の金属で地殻中の存在量は希土類としては比較的少ない。ガドリン石、セル石、ゼノタイムなどに含まれる。