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平成22年3月23日に平成21年度豊橋技術科学大学大学院修了式・学部卒業式を挙行しました。

イベント報告 | 2010年3月23日


式の様子

平成21年度大学院修了式・学部卒業式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。

榊 佳之学長から博士後期課程修了生22名、修士課程修了生337名、学部卒業生431名に学位記が授与されました。

学長からの式辞は次のとおりです。

 

皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。本学の全教職員、在校生一同を代表致しましてお祝いを申し上げます。また卒業生の皆さんが今日の日を迎えられますのはご家族をはじめ沢山の方々支えがあってのことであります。ご家族をはじめ、ご関係の皆様にもお祝いを申し上げます。

  
   sotsugyo02-s.jpg さて、今日は皆さんが新しい世界への第一歩を踏み出す、人生においての大きな節目の日です。その門出の日に当たり皆さんは今どんな思い、あるいは決意を込めてこの式典に臨んでおられますか。既にご存知のように、社会は今大変厳しい経済状況の中にあり、また環境・エネルギー問題など人類の将来にかかわる地球規模の問題の解決も迫られています。このような厳しい状況にある社会へ第一歩を踏み出される皆さんに私からひと言、励ましの言葉を申し上げたく思います。
 
   今年の就職状況は大変に厳しく、皆さんの中では希望したところに就職できた方もいれば、必ずしも希望した通りのところに就職できなかった方もおられることでしょう。しかし、今皆さんは社会人として歩むこれからの長い人生の出発点に立ったに過ぎません。今の混沌とした世の中ではこの先何が次の流れを創り、何が発展するのか、その道のりはわかりません。これからの人生が実り豊かなものになるか否かは、これからの皆さん自身の生き方にかかっているのです。
 
  一つの例をお話ししましょう。私の小学校の友人でNTTに勤めていた技術者がいました。十六、七年前のことですが、彼はNTT移動通信という自動車電話や船舶電話など特殊な通信事業を展開する小さな子会社に転任を命ぜられ、三浦半島の先端にある小さな研究所に移ることになったと私に話してくれました。普通、中心から外れ小さな田舎の子会社に回されれば嘆くところです。しかし彼は嘆くどころか、意気軒高に当時徐々に動き出していた携帯電話を一大事業として育てるべく若い仲間たちと技術面での挑戦を始めることを熱っぽく語っていました。当時私には彼のビジョンがよく理解できませんでしたが、数年後に彼の言っていることが分かりました。彼らはリクルート社から企画室長に迎えた松永真理という女性が提案した電話機能とインターネット機能やウェブ機能を統合したiモードと呼ぶ方式を完成し、携帯電話を爆発的にヒットさせ、日本社会の通信手段を一変させてしまったのです。技術開発に賭ける小さな技術者集団と斬新な発想を持ったひとりの女性の挑戦が世の中を変えたのです。会社も大発展し、今ではだれでも知っているNTTドコモとして業界のトップとなっています。

    私自身のことをお話しするのはちょっと気が退けるのですが、もうひとつお話ししましょう。私はヒトゲノム計画という国際プロジェクトに日本チームを率いて参加し、2003年にヒトゲノム解読を達成しましたが、そこへ至る道のりは平たんではありませんでした。今から25年ほど前に生命科学のアポロ計画と呼ばれた国際ヒトゲノム計画が提案されると先ず学者の中から「そんな計画は無謀だ」など多くの反対意見が出され、計画を始めるまでに5年を要しました。革新的なことをやろうとすれば必ず反対がでるものです。それも多くは同業者からです。いよいよ計画が始まることとなり、私は九州大学から東大へ移りますが、驚いたことに東大には伝統ある沢山の研究室が大半のスペースを占有しており、新しいプロジェクトには十分なスペースがありませんでした。私達に準備されたのは通称「馬小屋」でした。むかし日本陸軍が破傷風の治療のための血清を馬から取るために使っていたものです。窓枠は馬用で縦長のため規格品のアルミサッシがはめ込めず、夜になるとネズミが出る劣悪な環境でした。私は「イエス・キリストも馬小屋で生まれたのだから縁起がいい・・・」と言って気落ちする仲間を励ましました。その後、友人であった北里大学の理事の好意で北里の旧学生食堂の空き家を借りてチーム作り始めます。しかし予算は少なく、スペースも設備も欧米にははるかに及びませんでしたが、欧米に肩を並べるために、40人ほどのメンバーは昼夜交代で働き、不十分な設備をフル回転させることが暫く続きました。そんなチーム一丸となった努力が実って「ヒトゲノム全解読」という人類の歴史に残ると言われる成果に到達できたのです。
 
   人の生き方については沢山の方々がそれぞれの立場、経験から述べておられますが、共通するのは予想もしない困難に出会いながらそれに立ち向かい、乗り越える姿です。私は昨年の卒業式で「挑戦して失敗するのは恥じることではありません。失敗を恐れて挑戦しないことこそ恥じるべきことなのです。」と申しましたが、最近ウォードと言う人が「ビジネスマンの父から息子への30通の手紙」という本の中で同じようなことを述べていることを知りました。「あらゆることに挑戦してみろ。人生の失敗なんていつか取り返せる。取り返せない唯一の失敗は挑戦しなかったことだ。」と言っています。
皆さんがこれから活躍する社会では、経済活動の国際競争が一段と激化する一方で、環境問題、エネルギー問題、食糧問題などの地球規模の諸問題が顕在化し、また我が国では少子高齢化の問題もあります。そしてこの難しい問題の解決は皆さんの世代に託されているのです。大いに挑戦してください。挑戦しなければ何事も始まりません。挑戦と失敗を繰り返す中で人は様々なことを学び、考え、成長していくのです。
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最後にもう一度繰り返しますが、これまで学んだことを足場として、技術を通して新しい社会の構築に貢献するという高い志をもち、さらに失敗を恐れることなく物事に挑戦する心を持ってこれからの人生を歩んでください。必ずや皆さんの前途は拓けるでしょう。これを皆さんの門出にあたっての私からの「はなむけ」の言葉といたします。ご卒業おめでとう。

 

学長式辞後、博士後期課程 機械・構造システム工学専攻 宮川堅(みやがわ かたし)さんから答辞が述べられ、吹奏楽団による祝賀演奏が行われました。

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