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平成21年4月7日に平成21年度豊橋技術科学大学入学式を挙行しました。

イベント報告 | 2009年4月 7日


入学生宣誓
入学生宣誓

平成21年度大学院および学部入学式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。

 

榊佳之学長から学部入学466名(第1年次89名,第3年次377名),大学院修士課程393名,大学院博士後期課程37名が入学許可されました。

 

学長からの式辞は次のとおりです。

 

「皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。先ず本学の全教職員、在校生一同を代表致しましてお祝いと歓迎の意を表します。また新入生のご家族やご関係者の方々にもお祝いを申し上げます。更に海外からの留学生の方々には遠く母国を離れここ日本で学ぼうというその高い志に敬意を表しますとともに、ここ豊橋での生活が楽しく、有意義であることを祈っております。

 

さて、本学は1976年、今から33年前に主に高等専門学校の学生に更に高度な技術科学教育を行い、創造的で指導力を持った技術者を育成する大学として設立されました。その使命を受けて本学では技術の根底にある科学をしっかりと理解した上で新しい技術や高度な技術を開発できる実践的で創造的、指導的人材の育成を目指しているのです。「技術を究め、技術を創る」これが本学の精神です。本学はアドミッションポリシー、すなわち学生受け入れ方針に「自ら積極的に学び、考え、行動し、技術科学の新しい地平を切り拓く志をもつ人」を掲げています。皆さんはこの方針を心に留め、将来、技術や科学を通して社会に貢献したいとの希望をもって本学に入学されたことと思います。

 

さて、今日の入学の日にあたり、これからの大学生活でぜひ心に留めておいてほしい3つのことについてお話したいと思います。ひとつはアドミッションポリシーにある「自ら積極的に学び、考える」という姿勢を身につけること、二つ目は将来への夢や希望を育むこと、そして三つ目は大人としての豊かな人間性を磨くことです。

 

先ず「自ら積極的に学び、考える」という姿勢についてお話しましょう。皆さんは高等学校や高等専門学校でこれまで人類が蓄積してきた知識や技術を習う、ある意味での受け身型の教育を受けてきたと思います。そこで基礎・基盤となる知識や技術をしっかりと身につけることは大学での高等教育を受けるうえでの必要条件です。しかし大学ではその上に立ってより高度な知識や技術を習得すると共に、実社会で求められる課題解決能力や、更には新しいものを生み出す創造力を養っていくことが求められています。皆さんが将来働く社会は今、環境・エネルギー問題、人口・食糧問題、感染症問題などこれまで出会ったことのない、地球規模の難しい問題に直面しています。そのほか社会に出れば解決策が容易にはわからない問題が次々と出てくることでしょう。皆さんが将来活躍される社会では自動車も建物も人々の生活スタイルも大きく変わってくることでしょう。そのような新しい社会の構築には手本もモデルもありません。そこでは自らで考え、試行錯誤しながら物事を解決していく力、更には新しいものを生み出す創造力が求められているのです。そのような力は一朝一夕には身につきません。努力のいることですが何事にも「自ら積極的に学び、考える」という日々の地道な訓練の中で養われてゆくものです。本学には「自ら学び、自ら考える」力を伸ばすために「らせん型教育」と呼ぶ特色ある教育を行っています。そしてこれまでに多くの優れた人材を世に送り出してきました。皆さんもそれらの先輩に続いてくれることを期待しています。

 

さて、若い時代は「自ら積極的に学び、考える」という姿勢を身につけるとともに、さらに大きく将来への夢や希望をはぐくむことも重要です。皆さんは本学で高度な専門分野や高度な技術を「自ら積極的に学び、考える」という姿勢で学べば、必ずや今まで知らなかったような魅力的な世界に出会う機会があることと思います。その時、皆さんの脳は大いなる刺激を受け、新しいアイデアが浮かび、さらに未知であった新しい世界への思いも拡がってゆくでしょう。それは更に皆さんの将来の夢へと繋がってゆくでしょう。若いときには時間が無限にあるように感じます。無限の可能性が広がっているようにも感ずるでしょう。そんな中では大きな夢を自由に描くことができるでしょう。これは若者の特権です。将来社会に出ればさまざまに制約がかかり、自分が思うように物事が進むことは滅多にないでしょう。しかしそんな時も若いころに描いた夢は大きな心の励み、支えになるはずです。本学の特別顧問の神野信郎さんが書かれた「今日と明日と」という随筆集の中に、神野さんがアメリカのシカゴの街角で見つけた印象的な言葉がかかれています。それは「小さな夢をもつな。それは我々の血を湧き立たせず、実現はむずかしいであろう。大きな夢を持て、それは我々の血汐を湧き立たせる。われわれができなくとも次の世代の時代には必ずや実現してくれる。」という言葉です。アメリカ人らしい発想ですが、真実をついていると思います。例えば、今、世界は飛行機で結ばれ人々は忙しく飛び回っていますが、この人間が空を飛ぶ飛行機という大きな夢に挑んだのはライト兄弟でした。1903年に初めての飛行に成功しますが、その時彼らは36歳と32歳でした。おそらく飛行機の夢は皆さんとそれほど変わらない20代の若いころから描いていたことでしょう。このライト兄弟の成功をイギリスのタイムズの記者は小さな記事として扱おうとしたそうです。飛行距離はわずか36メートルだったからです。しかし編集長はこれは将来イギリスとヨーロッパ大陸が飛行機でひとつながりになることを意味する大ニュースだとその将来性を見抜きました。事実、飛行機は人々の血汐を沸き立たせ、軍事目的もあって大きく発展します。およそ20年後の1927年には25歳のチャールス・リンドバークがスピリット・オブ・セントルイス号で大西洋の横断に成功します。タイムズの編集長の予見したとおり、今や世界は飛行機でひとつながりとなっています。本学「豊橋技術科学大学」の設立もそのような例にあたるでしょう。先に紹介した神野信郎さんや当時の豊橋の青年商工会議所のメンバーは豊橋に国立大学をという夢をプランとして描き、大学への熱い思いを長く持っていました。そして30数年前に日本に新しい技術科学大学を設立しようという政府のプランにその熱い思いがつながったのです。この夢と熱意がなければ本学は今ないでしょう。少し言いにくいのですが、私の個人的な経験も紹介しましょう。私は大学時代に遺伝子研究でノーベル賞を受賞したフランソワ・ジャコブの本に深い感銘を受け、それが私の一生の方向を決める出会いとなりました。以来、遺伝子情報のすべてを解き明かしたいという思い、夢をもって研究生活を続けてきましたが、世界には同じ夢をもった仲間がいました。1985年にヒトの遺伝情報のすべてを読み取ろうという「ヒトゲノム計画」のアイデアが志を持った研究者の間に持ち上がり、以来、計画から20年弱、実行から15年弱、世界で延べ1000人を超える研究者が情熱を傾け、2003年にその夢の実現に到達しました。皆さんも是非積極的に大学で学ぶ中で新しい世界に出会い、そこで知的な冒険をし、将来への夢を育んでください。それはひとりで実現困難でも同じ思いの仲間が世界にはいることでしょう。皆さんに中から大きな夢を持ち次の時代を変えていく人材が育ってくれることを期待しています。

 

さて、少し長くなりましたが、大学生活でもう一つ大事な「豊かな人間性を育む」点について短くお話しましょう。大学や大学院で過ごす数年間は人生の青年期にあたり、将来の職業の基礎となる学問や技術をしっかりと身に付けるとともに、一人の自立した大人になるための人間形成の時期として重要なのです。皆さんは本学で学んだあと、高度な技術者、研究者として世に出るために、書物や様々な媒体を通して社会や経済の仕組みを学び、また過去の優れた思想や哲学にも学び、一人の成熟した社会人としての思考力や判断力を養うことが大切です。しかしそれと同時に、あるいはそれ以上に大事なこととして、世の中の多様な文化、考え方、価値観に出会い、互いに多様性を理解しあう精神を養うことです。企業であれ、地域であれ、社会は多様な背景をもつ人と人との相互理解、相互信頼によって成り立っています。本学にも北は北海道から南は沖縄まで広範な地域から文化も考え方も様々に異なる人たちが集まっています。更には本学にはアジアを中心に200名を超える留学生も在籍しています。皆さんは大学で講義、実習やクラブ・サークル活動、ボランティア活動など様々な活動を通して様々な人々と出会い、ともに行動する機会に恵まれています。多様な仲間たちとの積極的な交流を通して、異なるものを理解し、受け入れ、信頼関係を築き、更にそこから新しいものを生み出す、豊かな精神を育んでほしいのです。特に、国を離れてでも学びたいという意識の高い留学生の方々との交流は、互いに異文化を理解するだけでなく、今日のグローバル化の時代に求められる国際性を養うことにもなるでしょう。国際性とは外国語を流暢にしゃべることではありません。言葉は上手でなくとも文化の異なる互いを認め合い、心を通じ合える豊かな感性、人間性を持つことが国際性なのです。大学での様々な活動の経験、そこで築かれた友情や信頼関係は皆さんの将来の大きな財産にもなるでしょう。私にも大学時代に寮でともに生活し、またクラブ活動に熱中した仲間たちがいます。その活動の中で講義では学べない沢山の社会的経験をつみ、成長しました。そしてその仲間は今でも私にとって大きな財産になっています。

 

最後にもう一度繰り返しますが、「自ら積極的に学び、考える」という姿勢を身につけること、将来の夢をはぐくむこと、そして多様な文化、価値観を認め合い、そこから新しいものを生み出す豊かな人間性を養うことを心に留めて、これからの本学での数年間を豊かに、有意義に過ごしてください。皆さんが次の時代を担う人材として成長されることに期待を込めて入学の式辞といたします。」

 

入学式会場(アイプラザ豊橋)
入学式会場(アイプラザ豊橋)
学長式辞
学長式辞

 

式の様子
式の様子
吹奏楽団による歓迎演奏
吹奏楽団による歓迎演奏

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