
蔡 万里(サイ バンリ)
研究紹介
知的財産法及び民事法を基盤として、技術革新と社会変容に対応した法制度のあり方を、比較法及び法政策の観点から研究している。これまで日本法と中国法の比較研究を中心に、特許、著作権、商標、デザイン保護、不正競争、人格的利益及びデータ利用等に関する制度・裁判例・実務を検討してきた。近年は米国法も比較対象に加え、生成AIによる創作と著作権、AI学習及び生成物をめぐる権利処理、デジタル空間における知的財産の保護、標準必須特許(SEPs)のライセンス及び紛争解決等について研究している。各国の制度の相違を明らかにするだけでなく、その背景にある創作者保護、技術革新、情報流通及び文化の発展等の価値を分析し、デジタル社会にふさわしい法制度を構想することを目指している。また、工学系学生に対する法学教育の経験を活かし、研究成果を技術者教育及び社会実装へ還元している。
テーマ1:知的財産法制の比較研究
概要
知的財産法制について、日本法及び中国法を中心に比較研究を進めるとともに、近年は米国法を含む比較へと研究対象を広げている。特許法、著作権法、商標法、デザイン保護法制及び不正競争防止法等を対象として、各国の法制度、裁判例及び実務の異同を分析し、それぞれの制度が形成された社会的・経済的背景と、具体的な政策課題への対応を検討している。単なる制度の紹介・対照にとどまらず、権利者、創作者、利用者、事業者及び社会全体の利益をどのように調整すべきかという観点から、日本の知的財産法政策の発展に資する制度的示唆を提示することを目指している。
主な業績
・蔡 万里、謝 晴川「中国不正競争防止法における一般条項の理論と実務―日本法政策に対する含意」『パテント』(日本弁理士会)Vol.79 No.11、67-78頁、2026年10月
・蔡 万里「『基数+基数×懲罰的倍数』の法理―中国営業秘密侵害における懲罰的賠償制度の構造と運用の考察」『A.I.P.P.I.』(日本国際知的財産保護協会)Vol.71 No.9、11-21頁、2026年9月
・CAI Wanli, “Patent Infringement under Japanese Patent Law: Comparative Study with Chinese Patent Law,” Asian Journal of Innovation and Policy, Vol.7, No.3, pp.606-624, 2018.
その他の研究業績については、researchmap(研究者情報)をご覧ください。
キーワード
テーマ2:生成AI・デジタル空間における知的財産法政策
概要
生成AIやメタバースをはじめとするデジタル技術の発展に伴い生じる知的財産法上の課題について研究している。特に、生成AIの学習・生成・利用という一連の過程に着目し、AI学習における著作物利用、AI生成物に対する人間の創作的寄与と著作物性、生成物による権利侵害、サービス提供事業者の責任、声・肖像等の人格的利益の保護及びライセンス制度等を検討している。日本・米国・中国の法制度、裁判例及び行政上の議論を比較しながら、創作者の保護、技術革新、表現・情報の流通及び文化の発展を調和させる制度設計を提示することを目指している。
主な業績
・蔡 万里「著作物の例示規定の役割およびあり方」『雲雀野』(豊橋技術科学大学総合教育院紀要)No.48、11-24頁、2026年3月
・蔡 万里「生成AIサービス提供事業者の著作権侵害責任について」『パテント』(日本弁理士会)Vol.77 No.12、80-90頁、2024年11月
・蔡 万里「デジタル空間の構築及びNFTデジタル作品の取引に関わる著作権問題」『雲雀野』(豊橋技術科学大学総合教育院紀要)No.46、23-33頁、2024年3月
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キーワード
テーマ3:標準必須特許(SEPs)のライセンス及び紛争解決
概要
情報通信分野等の技術標準に不可欠な標準必須特許(SEPs)をめぐるライセンス交渉及び紛争解決について研究している。特に、公平、合理的かつ非差別的な条件(FRAND条件)の法的性質、ライセンス交渉における当事者の行為、差止請求の可否、適正なロイヤルティの形成及び裁判外紛争解決(ADR)の活用等を検討している。各国の制度と実務を比較しながら、技術標準の普及、特許権者の利益及び標準利用者の事業活動を適切に調整し、公平かつ効率的なライセンス及び紛争解決制度を構築することを目指している。
主な業績
・蔡 万里「FRAND条項に基づく標準化必須特許を巡る紛争解決について」『早稲田大学法研論集』 No.150、157-176頁、2014年6月
・蔡 万里「技術標準化とFRAND条項について」『パテント』(日本弁理士会) Vol.67 No.9、90-103頁、2014年8月
・蔡 万里「サムスン対アップル控訴事件を巡る法的考察」『知財管理』(日本知的財産協会) Vol.65 No.1、14-27頁、2015年1月
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キーワード
担当授業科目名(科目コード)
著作権法
特許法
知的財産法
法学
民法
情報法
国際知的財産法
技術戦略と知的財産法
