金子 はな(かねこ はな)
研究紹介
松尾芭蕉とその弟子たちの俳諧を研究しています。芭蕉は今でこそ世界的に有名な俳人ですが、芭蕉が生きていた頃の江戸社会においては、どちらかといえば異端の存在でした。職業俳諧師が急速に増加していた当時、芭蕉はその道をあえて捨て、芸道としての俳諧をひたすらに追究するという特異な方法を選んだのです。
芭蕉はなぜそのような生き方を選択したのか。それは芭蕉の作品作りにとってどのような意味があったのか。門人たちは芭蕉から何を継承し、どのように個性を発揮したのか。そして、芭蕉と門人の「ものの見方」は、現代人にとってどのような価値をもつものなのか。研究を通してそうしたことを明らかにしたいと考えています。
テーマ1:芭蕉の俳論「軽み」の研究
概要
芭蕉はその晩年に、門人たちに向けて「軽み」を説いた。それが芭蕉にとって重要な考え方であったことは従来指摘されてきたが、これまでの研究は「軽み」の本質を明らかにしているとはいえない。それは、芭蕉自身が「軽み」とは何かを明確に語らなかったこと、従来の研究が「軽み」を「俳風」としてしか見なかったために、「思想」や「生き方」の側面を見落としてきたことによる。
しかし芭蕉の「軽み」は、彼の「思想」や「生き方」と不可分のものとして説かれたのである。この頃の芭蕉に信頼されていた惟然や支考は、このことをよく理解していた。本研究は、そうした門人たちの研究を通して、芭蕉と彼らが共有した「軽み」という思想・生き方を明らかにするものである。
主な業績
『惟然・支考の「軽み」―芭蕉俳諧の受容と展開―』(武蔵野書院、2021年11月)
「花見の句のかかり」考(『連歌俳諧研究』141号、2021年9月)
「惟然と芭蕉俳諧の理念―俳論「詼諧非芸」の意義―」(『日本文学研究ジャーナル』18号、2021年6月)
キーワード
俳諧、俳論、芭蕉、軽み、惟然、支考、生き方としての俳諧
テーマ2:海外における俳諧研究の現状調査
概要
現在日本で行われている俳諧研究は、海外の日本研究(Japanese studies, Japanology)とうまく連携できていない。特に、研究方法、問題意識という点で完全に分断されている。
そこで本研究では、近年アメリカ、ヨーロッパ、アジア諸国で行われている俳諧研究の課題を調査し、日本の学会の傾向との共通点・相違点を明らかにする。またそのことによって、両者の連携の可能性を探り、世界文学としての俳諧・俳句の本質に迫るための研究方法を考えたい。
主な業績
「Ekkehard Mayの惟然発句注釈―ドイツにおける俳諧(俳句)受容」(『雲雀野』45号、2023年2月)
キーワード
日本学、世界文学、俳諧、俳句、芭蕉、問題意識