豊橋技術科学大学

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高橋 一浩(たかはし かずひろ)

所属 次世代半導体・センサ科学研究所
兼務 電気・電子情報工学系
職名 教授
専門分野 マイクロマシン工学,半導体工学,光エレクトロニクス
学位 博士(工学) (東京大学)
所属学会 電気学会,応用物理学会
E-mail takahashi@ee
※アドレスの末尾に「.tut.ac.jp」を補完してください
研究室web http://int.ee.tut.ac.jp/bio/
研究者情報(researchmap) 研究者情報

研究紹介

私たちの身の回りのあらゆるモノがネットワークとつながることにより新しい価値が創造され、社会や産業の仕組み、ライフスタイルなどに大きな変化をもたらす概念として、IoT(Internet of Things)が注目されています。このIoTの普及に向けてカギとなるのが、現実世界と仮想空間(コンピュータ)を結びつけるセンシング技術です。身の回りに存在する様々な物理量である、光、加速度、温度、湿度、音、圧力などはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems: 微小電気機械システム)とよばれるマイクロスケールの機械構造の動きを利用することによってこれらの物理量を数値化しています。一方で、身の回りでセンシングの対象となるパラメーターとして、においや生体情報などの化学量を計測するセンサデバイスの開発は物理センサと比較して研究が遅れています。本研究室では、化学物質や生体分子の吸着量を測るケミカルバイオセンサとして、吸着分子間の分子間力や質量に着目し計測するMEMS技術を研究しています。

テーマ1:MEMS光干渉型表面応力センサによる多項目病気診断チップの開発

概要
MEMS光干渉型表面応力バイオセンサ

MEMS技術により作製したカンチレバーなどの可動構造表面において、タンパク質分子間に働く相互作用を測定するセンサ技術が注目されている。吸着分子によるストレスによって構造体のひずみをセンシングするため、標識剤を用いずに目的のタンパク質を検出することができる。本研究では半導体集積回路基板上にナノキャビティを有する薄膜を作製し、ナノキャビティ内で発生するファブリペロー干渉効果を利用して、タンパク質の吸着による薄膜のたわみを高感度に検出するセンサを開発している。ファブリペロー型タンパク質センサでは、固体基板の機械変化量を非線形な透過率変化を用いて信号増幅変換することによって、他方式と比較して2桁以上高感度な分子間力測定を行うことができる。また、単に分子の付着による質量変化を読み取るのではなく、センシングエリアに固定した対象分子間の相互作用を機械変化として伝えて検出できる。このため、配向の違いや固体表面における配置の変化を検出でき、タンパク質分子と固体基板とのコミュニケーションを行う「Active Bio場」として新機能、超高機能発現へのツールとなる。また、集積回路技術により一括大量生産できるため、多数の腫瘍マーカーを配置して疾患の早期発見やウイルス検出が可能なスマートチップとしての活用が期待できる。

主な業績

1. K. Takahashi, et al., IEEE Int. Electron Devices Meeting (IEDM 2012), Dec. 10-12, 2012, San Francisco, CA, pp.553-556.
2. K. Takahashi, et al., Sensors & Actuators B, 188, pp.393-399 (2013)
3. S. Maruyama, et al., Sensors, 18, 138 (2018)
4. K. Takahashi, et al., MRS communications, vol. 9, pp. 381-389 (2019)
5. T. Takahashi, et al., Sensors, vol. 20, no, 23, 6868 (2020)
6. Y.-J. Choi, et al., Biosensors and Bioelectronics, vol. 172, 112778 (2021)
7. T. Maeda, et al., Sensors, vol. 22, no. 4, 1356 (2022)

テーマ2:サスペンデットグラフェンを用いた超高感度化学センサ

概要
グラフェン共振器によるにおいセンサ

静的な変形を検出する光干渉センサでは分子の反発力が比較的大きいタンパク質などの極性分子の検出を得意としてきたが、可動膜を機械的に共振振動させることにより、より分子サイズの小さい対象を検出するガスセンサの応用へ拡張できる。このような共振駆動センサの質量検出限界を向上するためには、可動膜の質量が軽量かつ高いヤング率をもつことが求められ、グラフェンは理想的な質量センサとして期待される。グラフェンを用いたMEMS共振器センサはすでに基礎検討が報告されはじめ、解析的には1 yg(ヨクトグラム)の分解能を有するという報告もある。ところが従来のグラフェン共振器の構造は、キャビティ内が大気圧であったため、キャビティ内の空気がダンパーとして作用し、大気圧下での共振動作・質量測定が困難であった。そこで本研究では、CVD成長したグラフェンを減圧環境でシリコン基板に転写を行うことにより、グラフェン下部のナノキャビティを真空に封止し、大気圧での質量測定を可能にすることを目指している。におい物質や分子識別機能に優れる生体分子をプローブとしてグラフェン共振器上に修飾することにより、すべてのモノに生体分子の機能を付与するにおいセンシング技術としてIoT社会への貢献が期待される。

主な業績

1. K. Takahashi, et al., Applied Physics Letters, vol. 112, 041901 (2018)
2. S. Kidane, et al., Nanoscale Advances, vol. 2, pp. 1431-1436 (2020)

テーマ3:表面プラズモンを利用した超小型可変カラーフィルタと電子皮膚応用

概要
ナノ周期構造を利用したカラーフィルタ

昆虫をはじめとする生物の身体の表面に現れる色には、色素に由来せずに微小な構造によって発色する構造色であることが知られている。構造色は従来利用されてきた色素によるものとは異なり、発色性能が劣化することがない。本研究では、光の波長よりも短い周期で配列した金属材料によって発色するカラーピクセルを作製し、さらに微小アクチュエータ技術を用いて発色を自在に変化させる可変構造色素子を研究している。光の波長と同程度まで短い周期をもつ金属の微細構造を形成すると、周期構造に依存した特定の光のみが構造のギャップを通過することが可能となる。このとき、金属薄膜上の微細周期構造表面では表面プラズモンが励起されており、この現象は表面プラズモンの異常透過現象と呼ばれている。表面プラズモンを励起する波長の制御を実現するため、基板から自立した金属サブ波長周期構造としてAlナノワイヤアレイを作製し、周期に依存したRGBカラーを得ることに成功した。また、金属周期構造を拡張するためにマイクロアクチュエータを一体化し、表面プラズモンを励起する波長を制御し、透過波長ピークの可変素子を開発している。さらにこのプラズモニックカラーフィルタは伸縮性の薄膜上に形成することによって膜の伸縮によりカラー表示を変更可能な貼り付け型、ウェアラブル表示素子として応用することができる。

主な業績

1. H. Honma, et al., Applied Physics Express, vol. 9, 027201 (2016)
2. H. Kumagai, et al., Displays, vol. 45, pp. 63-69 (2016)
3. H. Kumagai,et al., Applied Physics Express, vol. 10, no. 1, 011601 (2017)
4. H. Honma, et al., Journal of Micromechanics and Microengineering, vol. 27, no. 3, 034001 (2017)
5. H. Kumagai, et al., Advanced Optical Materials, vol. 8, 1902074 (2020)
6. S.W. Tay, et al., Appl. Phys. Exp., vol. 16, no. 1, 032004 (2023)

担当授業科目名(科目コード)

微分積分I
応用解析学

その他(受賞、学会役員等)

H31文部科学大臣表彰 若手科学者賞
第41回 永井学術賞


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