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HOME >> 事例集 >> 3.本取組への組織的対応
事例集
1.大学の概要
2.本取組の内容
3.本取組への組織的対応
4.取組の実績
2.本取組の内容
(1)全体像
今日,我が国は国際化・情報化の進展,学術研究の高度化・専門化,さらに地球環境問題への意識の高まりの中で,社会・経済構造,産業構造のダイナミックな変化に対応できる特色ある教育が求められている。他方,高等教育の大衆化と少子化、さらに若年層の科学技術離れの傾向が進む中で,多様な素養や経歴を持つ学生を受け入れて適切な教育を行っていく必要性に迫られている。本学ではこうした社会の多様な要請にこたえるべく,高い教育理念と合理的教育目標の下で,実践的,創造的技術者・研究者の育成を目指した高等技術教育の中心的・先導的役割を果たしてきた。そして我が国の従来型の高等技術教育に欠けていた産学連携による人材育成の一形態である実務訓練を本取組の柱として全国に先駆けて昭和55年度年以来今日まで組織的,計画的に実施し,多大の成果を収めてきた。

本学の教育は,通常の総合大学における基礎の積み上げの上に専門をおく直線型教育と異なり,基礎と専門を交互に発展的に教育するシステムを一つの特徴としている。実務訓練はそうしたらせん構造に沿って,技術科学と実学を連関させる学部・大学院の一貫教育(らせん型教育)の要となっている。すなわち実践教育を経験した高専生を受け入れて学部における基礎・専門教育とその集大成である卒業研究の後に,実学としての実務訓練を単位認定科目として必修させる。次いで大学院修士課程における基礎・専門教育の中で,実務訓練を通して動機付けられた実践的思考力を醸成させることを目指すものである。また工業・普通高校生,社会人,留学生等も幅広く受け入れて,世界最先端の研究と同期する教育環境の中で,多様な学生を融合して教育することにより,相互に啓発し合って,幅広い視点や豊かな人間性を培うことのできる教育システムとしての特長を有する(図1)。

すなわち本取組は実務訓練制度を高等技術教育の柱の一つとして位置付けて,次の目標の達成を目指している。
1.学術的な教育研究と社会での実地の経験を交互に体得させる。
2.就業体験を積ませ,高度な専門技術に触れさせながら実務能力を高めさせる。
3.多様な集団の中で共に学ぶことを通じて自主的に考え協調的に行動できる能力を身につけさせる。
なお次項以降,重点的に述べる実務訓練により学生が得る実社会への適応能力は,就職後の企業等において発揮されるものであるが,大学側は産業界のニーズを教育に不断に反映させることが可能となる。また大学と企業の接点が増えることにより,相互の情報の発信・受信の促進につながり,社会のダイナミズムに連動する高等技術教育の継続的改善を可能とする。このような実務訓練の長年の実績とノウハウは,シンポジウム等を通じて社会一般に公開し,我が国の類似制度の範として認められてきたところである。
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(2)本取組の背景と目的
技術者教育の新構想大学として発足した本学では,実践的,創造的人材育成を目的としたカリキュラム構築に努力してきた。社会に還元される技術科学教育を目指し,一般教養を含めた学部から修士課程までの一貫教育を教育プログラム全体の枠組み(高等技術教育)に据えている。すなわち、学部で技術科学に関する基礎と専門科目の教育を実施し,修士課程で最先端の技術科学教育を実施している。学部と修士課程でのこうした教育を発展的に結びつけるために卒業研究終了後,学部の最終段階において実務訓練を実施している。これは基礎と実践に関わる教育を交互に採り入れたいわゆる「らせん型教育」の要としての役割を果たしている。
実務訓練で掲げる目的は「指導的技術者として必要な人間性の陶冶を図るとともに,実践的,創造的技術感覚を体得させる」ことである。この目的の下で実務訓練制度は,学部の技術科学を修得した学生に,修士入学前に必修科目として社会の実学を長期間体験させるものである。企業等で決められた訓練テーマを,受入先の指導者の助言を受けながら行い,最終的には実習成果をまとめ上げ報告する。現場における製品開発のための独創的な技術応用,チームワーク,経済観念などの様々なダイナミズムを目の当たりにしながら,社会における現実的な研究テーマの取上げ方,解決法,また最新の専門技術とのかかわり,さらには,現場技術者との交流による対人関係などを体得させる。これらを通じ勉学の意義を再認識させ,修士課程における教育・研究に自主的に取り組ませる。これにより,技術科学に対する探求心や目的意識の向上を動機付け,その体験に基づき修士課程では,社会や産業と結びついた実践的高度技術科学教育を効果的に行うことができる。このような制度は,近年多くの大学で導入されている短期間の就業体験を主目的とするインターンシップとは異なり,教育システムとして極めて有効であり全国の先駆けとなっている。
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(3)本取組の特色
実務訓練実施には受入機関の理解と協力が不可欠である。学生の専攻する研究分野と受入テーマとの適切なマッチングを取るためには同一機関による継続的な受入れを維持することが望ましい。実務訓練学生受入によって大きな負担がかかる企業側に対して大学側の責務を果たせるよう,実施組織・体制,実施要領を学則下に制定した実務訓練学内規則を定めた上で,実務訓練実施委員会を設け全学組織で制度の運営に当たっている。現在,4年次3学期の1月〜2月の間に必修科目(6単位)として7週間の期間で実施している。3学期制の特長を活かし,実務訓練に先立ち4年次3学期開始までの9〜12ヶ月の間に卒業研究を履修させている。これは,学生に高度な知識・技能及び目的意識を持たせた上で企業に送り出し,実務訓練において,より高度な成果をあげる大切な準備段階と位置付けられる。訓練中は学生の指導教官も派遣先を視察し実施状況の把握を行う。実務訓練制度は大学院での高等技術教育に発展的につながる実学教育が主眼であるが,その実施には大学と産業界との連携が不可欠であり,大学自体の活性化を促す社会的にも深い意味を持つ制度である。なお,実務訓練テーマから共同研究へ発展した例も数多くある。
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(4)実施状況
実務訓練は,昭和55年度に第一回を実施して以来,平成14年度まで22年間継続している。留学生を含む履修対象者の85%強が学外で実務訓練を行っている。なお,学内での実務訓練履修者は,学部のみで卒業するものと受入条件の厳しい留学生の一部である(図2)。
当初,実務訓練の受入機関は143機関であったが,最近では毎年200〜230機関で安定して推移している。受入れについて照会した機関からは,半数以上が受入可能の回答が得られている(図3)。
受入機関の約90%は民間企業であるが,国の機関や地方自治体,公社・公団などの協力も得られている。これだけの実績を保持できるのは,全学的な努力とともに企業出身教官が常勤で全体の約2割おり産学連携推進の人的ネットワークがあることによる。この他,受入担当者を招いたシンポジウムの開催や学内広報誌における訓練体験談の紹介など,実施状況の公開にも努めている。
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(5)今後の計画と将来の展望
実務訓練に関する内容,実施体制等に関する調査では,訓練終了直後の学生の6〜7割が満足している。受入企業等からも極めて高い評価を得ており,本制度は他教育機関の模範となるものである。しかし,実務訓練体験が大学院での教育研究に効果的にフィードバックされたかどうかという全学的な定量的評価は不十分で,大学院生,卒業生に対する追跡調査は改善する余地がある。適切な評価手法を実現し、その結果を大学院での教育・研究の改善に役立てることが肝要である。
一方、近年「国際的な視野に基づく人材育成」の要請が高まり,海外実務訓練の展開が期待される。既に本学では海外実務訓練も実施しており,豊橋市の協力会からの支援も開始されたところである。また国際交流の従来の高い実績により工学教育国際協力研究センターが設置されており,これを拠点に数多くの支援実績を持つアジア地域の姉妹校や,欧米諸国の姉妹校に加え,本学と連携のある国内企業の海外出張所を海外拠点とする国際ネットワークが構築されているが,これを活用した実務訓練の展開が望まれる。これにより,提携大学からも我が国への実務訓練が可能となり,双方向の国際派遣による高等技術教育が推進されるものと期待される。
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