豊橋技術科学大学広報誌 天伯
 
大学探訪
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新任教員紹介

 
 
 

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氏 名:河野 剛士(かわの たけし)
所 属:電気・電子工学系 
職 名:助教  

― 「エンジニアならブラックボックスとして取り扱うのではなく、中身を理解して取り扱え!」― 集積回路(IC)に始まり、パーソナルコンピュータ、携帯電話等、身の回りには様々なブラックボックスが存在します。これらを専門に、勉強、研究及び開発してるのが私たち工学部ではないでしょうか?
 一方、“脳の神経細胞信号を用いてロボットアームを動かした!”という論文に出会ったのは、私が豊橋の博士課程1年で “神経細胞用電極センサ”を研究していた時です。“脳”は私にとって新たなブラックボックスとなりました。それからは、センサデバイス分野から脳・神経科学へアプローチするという考えで、博士課程終了後は、本学研究員(COE)、その後渡米しUC Berkeleyでは2年間ナノデバイスを研究してきました。
 本学には2007年5月1日付けで、電気・電子工学系の助教に着任しております。専門は、半導体、IC、マイクロ/ナノデバイスであり、今後はこれらの応用を先に述べたニューラルインタフェースデバイスへ展開することを予定しております。本学はグローバルCOEを始めとし、優れた教育・研究機関であると認識しております。微力ながら本学の今後の発展に寄与していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

 
 
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新任教員紹介
 
 
 

氏 名:東海林 孝幸(とうかいりん たかゆき)
所 属:エコロジー工学系 
職 名:助教
 
平成19年5月1日付でエコロジー工学系助手(10/1~助教)として着任しました。平成13年4月から平成16年3月までに本学博士課程に在籍し、学位取得後はポスドクとして茨城県つくば市にあります産業技術総合研究所、建築研究所において主に都市熱環境(ヒートアイランド)に関する研究に従事しておりました。

 ご存知のように、夏季における都市の高温化は健康被害はもとより、エネルギー需要を増大させ、温暖化を加速させる恐れがあるといわれております。このためさまざまな対策が研究され、その成果が蓄積されつつあります。また、発展著しいアジア域でも都市の熱環境問題は顕在化してくるものと考えられています。研究ではアジア域の大都市における熱環境の評価、集中豪雨などの気象災害に結びつく現象の解明を中心に進めてゆきたいと思っています。

 
 
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【身近な技術と科学】溶液から低温で様々な機能を持ったニューガラスを作る
/物質工学系 教授 松田 厚範
 
 
 

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 わたしたちの身近な材料「ガラス」から技術と科学のお話を始めましょう。ふつう、窓、自動車、コップなどに使われているガラスは、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とし、これに酸化ナトリウム(Na2O)や酸化カルシウム(CaO)が含まれていて「ソーダ石灰ガラス」と呼ばれます。ソーダ石灰ガラスは、原料のケイ砂(SiO2)、ソーダ灰(Na2CO3)、石灰石(CaCO3)の粉末を混合し、1500℃以上の高温に加熱し、水飴のような溶融状態を経て、冷却して作られます。ガラス融液の粘度が適当なときに、流出し、引っ張り、曲げなどを行うことで、いろいろな形状に成形することができます。また、このようにして得られたガラスは、等方的で均質な構造を有しているので、光をほとんど散乱することなく透明で、独特の質感を私たちに与えます。このガラスの構造をさらに細かく、原子レベルで観てみると、図1で示したように、基本的にはケイ素(Si)に4つの酸素(O)が配位したSiO4四面体が三次元につながった不規則網目構造からなっています。有機高分子は炭素-炭素(C-C)あるいは炭素-酸素-炭素(C-O-C)結合を基本骨格としています。ですから、ガラスはSi-O-Si結合を基本骨格とする無機高分子としてとらえることができます。添加したNa2OやCaOは、ガラス中でナトリウムイオン(Na+)やカルシウムイオン(Ca2+)として存在し、Si-O-Si結合を切断して、ガラスの性質を大きく変え、特に比較的低い温度でのガラスの成形や加工を可能にする役割を果たしています。
  さて、ここからが今回の【身近な科学と技術に関するコーナー】の大切なところです。特殊な試薬と化学的な手法を用いれば、ビーカーやフラスコなどの容器の中で溶液から低温で様々な機能を持ったニューガラスを合成することができます。特殊な試薬として、ケイ酸エチルSi(OC2H5)4がよく用いられます。これを原料とすれば、下に示す反応によってSi -O-Si結合が形成され、SiO2微粒子が溶液中に生成します。


・Si(OC2H5)4 + 4H2O → Si(OH)4 + 4C2H5OH   :加水分解反応

・Si(OH)4 → SiO2 +2H2O             :縮合重合反応


  SiO2微粒子を含む溶液(ゾル)から、SiO2の塊りや板だけでなく繊維、粒子も合成でき、基材に溶液を塗れば、薄い膜を作製することも可能です。作製直後には、その構造中に溶媒や有機物を含むゼリーのような状態(ゲル)ですが、これを適当な温度で熱処理してやれば、緻密化してガラスが得られます。この方法は、「ゾル」を「ゲル」化して、材料を作る方法、つまり「ゾル-ゲル法」と呼ばれます。「ゾル-ゲル」法による種々の形状のガラス材料の作製プロセスを図2にまとめて示します。「ゾル-ゲル法」特徴として、(1)溶融法に比べて低温でガラスが作製できる、(2)出発物質の蒸留などの操作によって純度の高いガラスを作製できることなどが挙げられます。私たちも含めて世界中で多くの研究者がこの「ゾル-ゲル法」を用いた機能性ガラス材料の研究開発に取り組んでいます。
 

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図1 ガラスの構造
(二次元で表示するためにSiの真上のOは、
省略されています。)

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図2 ゾル-ゲル法による種々の形状のガラス材料の作製プロセス
(クリックすると拡大します)
 私たちの研究の一例として、ゾル-ゲル法によって得られるゲルの特徴を生かして、微小な光学素子を作製する新しいプロセスを紹介します。図3を見てください。まず、基板上にゾルを塗布して柔軟なゲル膜を形成し、これにスタンパをプレスして、ゲル膜を硬化させてから離型し、微細な凹凸形状(マイクロパターン)を作製し、熱処理によってこれをガラス化します。このプロセスによって作製した平板マイクロレンズアレイ(微小なレンズが基板上に非常に規則正しく配列した光学素子)の走査電子顕微鏡写真を図4に示します。一つのレンズの大きさは約50 ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)で、これが50万~100万個基板上に配列していて、非常に優れた集光性能を実現しています。さらに、この平板マイクロレンズアレイは、ガラスの特徴によって高い信頼性・耐久性を有することから液晶ハイビジョンテレビなどの表示素子やインターネットなどで必要な光通信素子のキーコンポーネントとして大変期待されています。
 松田研究室では、ゾル-ゲル法を駆使して、様々な機能を有するガラス、セラミックス、無機-有機ハイブリッドを合成し、これを情報分野、エネルギー分野、環境分野に応用する最先端の研究を行っています。研究室のHPを、是非一度、覗いてみてください。
研究室のHP:http://www3.to/sakai-matsuda

 

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図3 ゾル-ゲル微細加工プロセスの概略

 

 

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図4 ゾル-ゲル微細加工プロセスによって作製した平板マイクロレンズアレイの走査電子顕微鏡写真
 

 
 
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【身近な技術と科学】安全まちづくりと情報技術
/地域協働まちづくりリサーチセンター長 建設工学系 教授 大貝 彰
 
 
 

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 現在の情報技術は,私の学生時代(30年前?)には全く想像できない飛躍的な発展を遂げています。パソコンの家庭への普及率も60%を超え,インターネットを介していつでもどこでもパソコンでいろんなことが可能になっています。
 私は,まちづくり・都市づくりに役立つ手法や技術の開発を主な研究テーマとしていますが,まちづくり・都市づくりには地図が必要不可欠です。この地図をデジタル化し,いろんな分析が行える情報技術を地理情報システム(GIS)と呼びます。GISを使った最も身近な例が,パソコンや携帯で行う地図検索です。また車のカーナビにもGISが使われています。今日は,このGISをまちづくりに活用した情報技術の例として,地域防災点検マップシステムを紹介します。
  ここ数年,中越沖をはじめとする大規模地震災害が多発しています。私たちの地域でも,近い将来東海・東南海地震の発生が危惧されています。地震災害に備え,安全に暮らせるまちづくりが求められています。この安全なまちづくりを進める第一歩が地域の防災点検マップづくりです。町内会で住民たちがまち歩きをし,いざというときに役立つ消火器や消火栓,水利の場所,ブロック塀や狭い道路など避難の妨げになるもの,あるいは一時的な避難地となりえる場所,また火災の延焼を防ぐ公園や空地,駐車場など点検マップを作成,これを町内の防災情報として共有することで,防災意識の向上を図り,災害時に役立てようというものです。
 
 これまでの点検マップは紙で作られています。一度紙で作ったマップを更新するのはなかなか大変です。いざというときに役立たないと何の意味もありません。消火器の設置場所が変わっていたり,使用期限が切れた消火器であったり。町内会全体で常に新しい,正しい情報を共有することが必要です。またそのように情報が更新されることで,日頃からの防災意識の向上にも役立ちます。このように,紙のマップでは困難な役割を果たしてくれるのが防災点検マップシステムです。
 GISを使ったこのシステムは,インターネットに繋がったパソコンを使って誰でも見ることができ,アクセス許可のある人であればマップの作成,修正,編集ができます。すでに実験的に豊橋市内の二つの町内会で使っていただきました。今,本格的な運用に向けた準備を進めている段階です。
 この他にも私の研究室では,大規模地震時の延焼の様子を地図上で模擬的に見せたり,避難や消火・救出活動など災害時のまちの危険性を分かりやすく伝える情報技術の開発を進めています。こういったGISを使った情報技術システムが地域のまちづくりの現場で活躍することで,暮らしの安全の向上が一層進展することを願っています。

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工学院大学と共同開発してきた地域点検マップシステムの実行画面例

 

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点検マップシステムを使った まちづくりワークショップの様子


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   地域住民が作成した防災点検マップの例

 
 
 
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事務改革プロジェクト/企画課
 
 
 

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         アクションプラン

 

 国立大学は、2004年4月の法人化を境に大きく変わりました。財政基盤である運営費交付金が毎年1%減される中で、大学の活性化を図るためには、様々な工夫・努力が必須となりました。

 本学では、2005年度末に事務改革大綱を制定し、2006年度1年間をかけて、事務改革アクションプランをまとめ、2007年3月に公表しました。

 今後10年を見据えて、限られた職員で、教育研究支援、学生支援、社会貢献など進めていくために必要な事務改革を①人事制度改革、②事務の簡素化・合理化、③事務職員の再配置、④事務組織の再編成の4つの観点から200項目以上の取り組みをまとめました。

 この事務改革アクションプランは,学長,教員若干名,事務局長・部長・課長及び課長補佐で構成する事務改革推進本部の責任でまとめられましたが、その素案は、10年後の本学を背負って立つ中堅若手職員で構成した同本部の下の検討部会で作成されました。本学の過去の改革の状況,他大学の改革の状況の調査・分析,現在の業務の洗い出しを行った上で,種々の提案が取りまとめられ、素案となりました。また,公表に至るまでに,全職員に検討状況を提示し、意見を求め,必要な修正を行うなど,全職員の協同作業により作り上げられたものとも言えます。

 本学の事務改革アクションプランの特徴は,事務局の目標「ヴィジョン」とそれを実現するための「行動指針」を設定し,何を目標にどう行動したらいいのかを明確化し、職員の意識の方向性をそろえていくところにあります。いくら制度や枠組を変えても,そこで働く職員の意識がバラバラでは,改革のための大きな力とはならないでしょう。また,このアクションプランでは、人事制度や組織再編といった大学全体に係る大きな事項から,担当者間で調整可能な小さな事項まで掲げています。職員の意識の上では、どれも「やるべき事」として欠かせないものとして捉えています。

 このアクションプランは、まとめることがゴールではなく、スタートとなります。事務改革が成功するかどうかは、正にこれからの取り組み次第です。事務改革への意識をいかに持ち続けるかが鍵となります。そのためにも、半期毎に達成状況の検証を行うこととし,目標,具体的な取組,実施時期,担当,決定プロセスを明確化し,進捗状況を適切に評価し、意識のリフレッシュを図り、実効あるものとしていかなければなりません。

 事務改革は,劇的に何かが変わるということはないので、外からは分かりづらいかもしれませんが、職員一丸となって取り組んで参りますので叱咤激励いただければ幸いです。
(企画課長 澤田利夫)


 
 
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国立大学法人 豊橋技術科学大学