未来ビークルリサーチセンター連携融合プロジェクト
本学における学術研究の発展に資するため,自動車など先端輸送機器およびその製造業に係る未来志向の先端技術の研究と開発を目指すプロジェクトに対して,未来ビークルリサーチセンターの予算による研究助成措置を講じ,その研究の一層の進展を図ることを目的とします。なお,豊橋市および田原市を念頭に置いた地方自治体との連携,ないしは未来ビークルリサーチセンターに設置された5つのリサーチコアの研究領域を横断するような学際的研究を期待します。今年度は,地域連携枠を新規に設定し,豊橋市・田原市の企業の連携のあるテーマのみを対象とします。また,従来の一般枠も引き続き設定しています。
※プロジェクト責任者となれるのは,学内教職員のみです。
2008年度は,地域連携枠4件,一般枠5件の計9件(総額1,800万円)のプロジェクトが採択されました。
[2008年度採択プロジェクトについて]
安井利明(生産コア・環境コア:代表者),椿正巳(生産コア),福本昌宏(生産コア・環境コア),戸田裕之(生産コア),武蔵精密工業株式会社
地球温暖化防止のためのCO2排出量低減のため,自動車の軽量化による低燃費化が求められている。安全性とコストを両立させながら自動車の軽量化を実現する方法として,アルミと鉄の併用が注目されており,ここにアルミと鉄の接合が必要とされている。本プロジェクトの代表者らは,摩擦攪拌作用によるアルミと鉄の非溶融の固相接合技術を開発すると共に,その接合体を分離する技術を開発した。使用後の接合体の分離が可能であるリサイクル性の高い本接合法は,アルミと鉄を用いる自動車製造に今後必要不可欠な技術である。
本プロジェクトではこのアルミと鉄の新しい接合技術を実用化するために,「接合体の接合技術の確立」,「接合体の分離技術の確立」,「接合体の耐食性評価」,「接合体の信頼性評価技術の開発」,以上の4テーマに分かれて昨年度の研究を実施した。本年度から新たに,「接合プロセスのシミュレーション」を新たなテーマとして加えると共に,実用化を目指した研究に着手する。
本年度は特に以下の3テーマを重点テーマとして研究に取り組む。
(1)「接合体の接合技術の確立」:実用化のあたっては,部材形状や適用箇所によって適切な施工条件を選ぶ必要がある。そこで,ツール形状・接合条件の変化による接合可能範囲の調査を行う。また、動力計・無線温度計・超音波計測等によるインプロセスでの塑性流動計測を行う。
(2)「接合体の信頼性評価技術の開発」:接合体の信頼性評価技術として,超音波探傷を用いた非破壊診断法による評価技術について調査検討を行う。
(3)「接合プロセスのシミュレーション」:接合体内部の塑性流動状態と接合欠陥生成の因果関係を明らかにする。
金 煕濬(環境コア:代表者),小口達夫(環境コア,エコロジー工学系),東海林孝幸(エコロジー工学系),E&E Tec. 有限会社
昨今の自動車はサービスの向上のために、金属や高分子及び半導体などの電装部品において様々な種類の物質が使用されている。これらの自動車はその使用段階終了後には、適切に廃棄されなくてはならない。自動車産業は日々発展しており、廃自動車にかかるリサイクル技術の進展も強く望まれている。自動車産業は田原市、豊橋市の中心産業であり、自動車の生産、廃自動車の処理は未来ビークルリサーチセンターでも重要な課題である。
廃棄される自動車に含まれる物質で、温暖化への影響が大きいものに、エアコンの冷媒でだる代替フロンが上げられる。現在売られているほとんどの自動車にはエアコンが装備されており、使用される代替フロンは地球温暖化の効果が高く、廃棄するには高度な処理が必須である。現在、これら代替フロンは京都議定書で、効率的な廃棄処理の取り組みが強く求められている。
本プロジェクトは次世代自動車の廃棄対策として、代替フロンの高度処理方法の開発を目的とする。具体的な自動車から排出される代替フロンの高効率処理方法としては、フロンに含まれる有価物であるフッ素を再利用化する方法を開発する。即ち、プロジェクトから得られた結果及び知見を用いて、豊橋、田原市に次世代自動車のゴミゼロ対策情報発信拠点を設置することを目指す。
山田基宏(生産システム工学系:代表者),福本昌宏(生産コア・環境コア),トピー工業(株)
マグネシウム(Mg)は実用金属中で最も軽く高強度であり,その合金の利用は幅広い産業分野へ拡大し進展している.特に,自動車産業においては環境面から燃費向上のため,車体軽量化が必須となっており,Mgに対する需要は極めて高い.しかし,最も卑な金属であるため耐食性向上の面から表面処理が必要となる.ただし,Mgおよびその合金は難めっき材料であることから,従来のめっき処理による耐食性向上は極めて困難であり,複雑な前処理などが必要となる.
これに対し,申請者らは超高耐食性を有する金属ガラス材料を溶射法によりMg部材表面に直接付与する技術を提案する.特に自動車用Mgホイールへの皮膜形成を対象とする.金属ガラスはその特異な性質から,非晶質でのバルク形成が可能であり,溶射による厚膜形成は耐食性保護皮膜として極めて産業的価値が高い.
本プロジェクト研究では(1)成膜条件が膜組織および耐食性に与える影響調査,(2)マグネシウム基材上への金属ガラス粒子付着メカニズムを解明し能動的プロセス制御を可能にする.以上の点を詳細に検討することで,最終的にマグネシウムホイールへの金属ガラス溶射皮膜形成技術を確立するものである.
渋澤博幸(経営コア:代表者),藤原孝男(経営コア),宮田譲(人文社会工学系),山口誠(人文社会工学系),オーパスケイネット,東三河地域研究センター
本プロジェクトの長期的な目標は、今世紀の社会的課題を視野に入れながら、未来 ビークル社会のあり方を、経営・政策科学の側面から支援するためのシステムを開発 することにある。経営・政策科学で裏付けられた各種手法に基づいて技術革新、新制 度、及び環境変化などがもたらす多様なインパクトを分析し、未来ビークル社会を実 現するための最善な経営・政策システムのあり方を探求する。
経営コアでは、H17-19年度に自動車産業に特化した中部圏の産業構造の開発・製造 活動の偏在化に注目し、その効率性と同時に脆弱性を指摘してきた。当該地域の中小 企業を含めた産業の環境変化に対する頑強性向上・活性化に貢献する技術経営手法の 開発を進めてきた。
H20年度は、経済的な視点から、未来ビークルがもたらす社会的便益・社会的費用 について分析を試みる。社会的便益の分析では、産業集積の強みである地域特化の経 済効果に焦点をあてる。産業集積地の技術革新がもたらす経済的メリットを理論的・ 実証的に検証する。社会的費用の分析では、未来ビークルがもたらす様々な社会的費 用の削減効果について検証する。
田中三郎(環境コア:代表者),廿日出好(エコロジー工学系),竹中俊英(環境コア)
SQUID磁気センサは現在最も優れた感度を有する超伝導磁気センサである。我々田中グループは、これまで開発してきた最先端磁気センサ技術を自動車産業に関わる下記2つの技術へ応用することを提案している。1.鉄-アルミ板異種金属接合(FSW)の界面の評価。2.アルミニウム製水素貯蔵タンクの劣化診断。
自動車の軽量化、燃費向上、低排出ガス化に伴い、自動車構造部材を従来の鉄からアルミ合金などへの置き換えが進んでいる。これには異種金属溶接技術の開発が必須であり、前者のFSW技術はその有力な候補として、実用化が進められている。しかしながら鉄とアルミ合金間の接合状態を高精度で検査する技術は未だ確立されていない。そこで、平成19年度の研究において、我々は超高感度SQUID磁気センサを用いた異種金属間FSW界面を評価するための非破壊検査技術の開発行った。ここでは、SUSとアルミの異種金属接合において、FSWの作製条件を変えたときの界面抵抗の変化を磁気的に検出することができた。本年度の申請では、この界面抵抗変化の要因を調べるため、引き続きSQUIDによる計測を行うと共に、界面の硬度測定やTEMなどによる解析を行い、抵抗と界面状態および強度の関係を明らかにして、SQUID計測結果からFSW界面強度を推定する手法を開発したい。一方、後者のアルミタンクの欠陥検査については、平成19年度において、ロボットにSQUIDセンサを搭載してタンクの貫通傷を検査できる装置を新たに開発した。今年度は繰返し疲労による未貫通の内部割れを検出するための装置の高感度化を行う。これによって、タンクの早期欠陥検出や余寿命の予測が期待される。
章 忠(安全コア:代表者),三宅哲夫(安全コア,生産システム工学系),中川聖一(情報コア,情報工学系),廣畠康裕(安全コア,建設工学系),岡田美智男(知識情報工学系),安田好文(体育・保健センター),今村 孝(研究基盤センター),藤田充(未来ビークルリサーチセンター客員准教授)
本プロジェクトでは,カーナビを中心とした音声・画像・生体情報を統合する適応運転支援システムを提案し,ドライバ状態計測や推定・支援システムの開発,車内音環境制御や音声入力システム開発,そして交通環境の解析・シミュレーションと安全評価を含む5つのサブシステム開発を行っている.
H19年度の成果としては,「ドライバ覚醒手段の検討」「ドライブレコーダーデータを用いた交通事故危険地点・危険状況の抽出」「ドライバの顔画像・視線などにもとづく注意・注視判定システムの開発」を実施し,実験等により性能検証等を行っている.
H20年度は,これらの統合に向け,実用・実装化を図るとともに,構築した基礎技術の応用事例として,カーナビを通じて,ドライバに運転状態の評価を提示し,安全運転を促す,安全促進型運転支援への統合を目指す.
野田 進(機械システム工学系:代表者),内山直樹(機械システム工学系),名田 譲(機械システム工学系)
野田善之(生産システム工学系:代表者),寺嶋一彦(安全コア,生産システム工学系),三好孝典(生産システム工学系)
現在,福祉車両として電動車いすやシニアカーなどの一人乗りビークルが利用されている.また,自動車製造メーカーでは,近未来型ビークルとしてi-unit(トヨタ)やPIXY(スズキ)などの福祉車両だけではなく,汎用性を有する一人乗りビークルの開発が進められている.これらのビークルは四輪車両をベースとして構築されており,狭い空間での方向転換や車線変更などが不得手である.また,ビークルの操作にハンドルやジョイスティックが用いられるが,誤操作により障害物に衝突することがある.とくに,一人乗りビークルは狭路でも移動できる利点をもっているが,ジョイスティックやハンドル操作で狭路を移動する際には,障害物に接触する危険性が高くなる.これらの背景から,狭い空間での方向転換や車線変更が容易で,障害物に衝突しないようにジョイスティックの操作支援を行う一人乗りビークルの開発は,未来型ビークル開発の一つとなり得る.
そこで,本研究では,狭い空間での方向転換や車線変更が容易な着座型二輪ビークルを開発する.現在,起立型二輪ビークルとして,SEGWAYが開発されている.SEGWAYは搭乗者の重心移動に伴って,走行することが可能になるが,着座姿勢では重心移動が困難になる.そこで,二輪で安定的に車両が直立できる安定化制御システムとジョイスティック操作による走行指令制御システムへと制御システムを二系統へ分離することで着座型二輪ビークルを構築することが可能となる.また,全方位測域センサーを装備し,障害物との距離に応じて,ジョイスティックへ力覚提示を行い,障害物に衝突しないよう操作支援するスキルアシストジョイスティックを開発する.そして,これらの制御技術を統合し,スキルアシストジョイスティックを有する着座型二輪ビークルを開発することを最終目標とする.
H20年度は,本研究コンセプトの具現化として,着座型二輪ビークルのプロトタイプ開発を行う.機構解析シミュレータを用いて,二輪ビークルを設計し,直立安定化制御とジョイスティックによる走行指令制御システムを開発する.シミュレータで設計された二輪ビークルを基に,着座型二輪ビークルを試作する.
上原秀幸(情報コア:代表者),大平 孝(情報工学系)
【最終目標】本プロジェクトでは、本研究室で開発された車々間通信用の方向指定ルーティングプロトコルを,車への搭載が期待されている簡易な可変指向性アンテナであるESPARアンテナと融合し,新しい車々間および路車間の通信プロトコルを構築する。さらにこれを快適で安全な交通システムを実現するための予防安全に応用することを視野に以下の2つを開発することを最終目的とする。
・ 指向性ビームによる転送制御アルゴリズム(MACプロトコル)
・ 指向性ビームによる経路制御アルゴリズム(ルーティングプロトコル)
【特色】方向指定ルーティングは転送すべき情報のエリアとその方向のみを指定して経路制御を行う。従来のルーティング法のように次端末を指定しないので経路の再構築を必要としない。ここで、転送車両等からの方向を適切に推定しビーム形成できれば、より正確な方向指定と空間多重が可能となり、特に道路が複雑に交差する地点での転送効率の向上が期待できる。また、路側機との協調制御や地理情報の活用により車両だけでなく歩行者も含めた正確な方向推定も可能となり、警報などを必要なエリアにのみ通知するといった予防安全への効用が期待できる。
[2007年度連携融合プロジェクト](終了)
[2006年度連携融合プロジェクト](終了)
[2005年度連携融合プロジェクト](終了)
[2007年度客員教授プロジェクト](終了)
[2006年度客員教授プロジェクト](終了)
[2005年度客員教授プロジェクト](終了)