記念式典式辞
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式   辞

 本日、文部科学省の清水潔高等教育局長様はじめ地元を中心とする政財界、教育界、 産業界、本学の歴代学長及び名誉教授の先生方など多数の皆様のご臨席を仰ぎ、 このように盛大に開学30周年記念式典を挙行できますことは、 私どもにとってこの上ない喜びでございます。また、先ほどは、記念講演として、 産業技術総合研究所理事長、もと東京大学総長の吉川弘之先生には、 21世紀の科学技術と今後の大学像と題し大学の歩むべき道についての 示唆の富むご講演を頂き大変有難うございました。

 さて、本学は、30年前、実践的・創造的な能力を備えた指導的技術者の教育という社会的要請に応えるため、 大学院に重点を置いた新しい大学として設置されました。皆様のご支援により、現在、学部から博士後期課程までの 学生2,200名、教職員370名を擁する大学にまで成長いたしました。

 本学は、技術科学大学という名前を頂いております。技術科学とは、技術を中心におき、 技術の背後にある科学を研究し、より高い技術を生み出す学問ですが、 本学はこの技術科学の教育・研究を使命として歩んでまいりました。この使命を果たすため、 本学は入学生の8割を高等専門学校から受け入れ、残りの2割を普通高校、工業高校等から受け入れております。

 高等専門学校では中学校卒業の生徒を受け入れ、実践的な教育を通して、技術に強い関心を持つ学生を教育しておられますが、 本学はその様な学生を受け入れ、本学でまず基礎的科学を教え、その後、より高い技術に挑戦する教育を行っております。 若いとき技術に触れ、技術に強い関心を持った学生に科学を教え、その上でより高い技術に挑戦させる教育、これをわれわれはらせん型教育と呼び、本学の大きな特徴と致しております。 開学以来、科学的力を備え、技術に強い卒業生1万人を世に送っておりますが、彼らは各界で活躍しております。

 現在、受験・偏差値教育の弊害、これと密接に関係していると考えられる若者の工学離れの問題が指摘されていますが、 高校生に匹敵する高専の前半時代に、技術に触れ、技術に強い関心を持ち、大学に進む者に対し、科学的教育を行い、 その上で先端的な技術に挑戦させるらせん型教育は、今日、ますますその重要性を増していると考えます。

 平成16年、本学も国立大学法人として新たな歩みを始めました。本学では、その自由度を利用して、従来、高かった学問分野の間の壁、研究室間の壁を壊すため、学際的なテーマのリサーチセンターを四つ作りました。 未来の乗り物を研究する、未来ビークルリサーチセンター、地域協働まちづくりリサーチセンターと本学に置かれた二つの21世紀COEの拠点を核にするリサーチセンターです。

 これに加え、30周年記念事業の一環として、この10月1日に二つのリサーチセンターを設置いたしました。 一つは、先端農業・バイオリサーチセンターで、もう一つは、本学教員と企業等他機関の研究者の比が3対7で 構成する新しいタイプの先端フォトニック情報メモリーリサーチセンターです。 今後、これらのリサーチセンターは、文部科学省等国の機関、豊橋市、田原市など 地方自治体や企業などと共同で運営されて行く予定です。あわせて六つのリサーチセンターは、 本学の新しい研究分野を開拓し、研究大学としての本学の活動の中心を担って行く予定です。

 国立大学の法人化は、大学に自律性を与え、より活発化させることが狙いでありますが、この一つの方向は地域との連携による大学の新たな活動分野の開拓です。 本学は、豊橋市を中心とする地元の熱望によりこの地に設置されたいきさつがあり、開学以来、地元の大きな協力と支援を受け発展してまいりました。法人化後はこの関係を一層強化するため、 いろいろな活動を行っております。地方自治体と提携し地震防災に関する研究を行ったり、愛知大学と協力し文部科学省の連携融合事業を進めたり、愛知大学や豊橋創造大学と協力し町おこしの活動を行ったり、 大学と地方自治体との関係はきわめて良好です。これも、地元自治体、商工会議所、サイエンス・クリエイトなど地元の各種団体、産業界など地元の皆様の絶大なるご支援とご協力によるものであります。

 さて、本学の次の10年ですが、基幹分野である工学の新たなる展開に加えて新領域の開拓を目指しております。 技術は、単に工学に限定されてはおらず、農学、医学、教育等広い分野を対象としており、 今後、農学と工学、医学と工学、文系分野と工学の境界領域を開拓することが本学の次の活動と考えております。 技術科学の言葉通り、このような新しい分野において、技術の背後にある科学を研究し、 より高い技術に挑戦し続ける決意ですので、各界の皆様の変わりませぬご指導とご支援をお願いし式辞と致します。

 平成18年10月6日

国立大学法人豊橋技術科学大学長  西 永  頌