3.4.5.2 先端農業・バイオリサーチセンターの活動 先端農業・バイオリサーチセンター(Research Center for Agrotechnology and Biotechnology、以下センター)は、 本学の開学 30 周年記念事業の一環として 2006 年 10 月 1 日に設置された。以来約 20 年にわたり、地域農業の活性化と 我が国農業の発展への貢献を目標として、農工融合研究と人材育成を柱とした教育研究活動を展開してきた。 センター設置の背景には、本学が位置する三遠南信地域の農業が大きな転換期を迎えつつあったことがある。当地域 は古くから農業が盛んであり、とりわけ東三河地域は国内有数の施設園芸地帯として知られている。一方で、農業従事 者の高齢化や担い手不足といった課題が顕在化しており、将来に向けて持続可能な農業生産体系を維持するための構造 的変革が求められていた。このような状況のもと、本学の強みである先端工学の知見を農業分野へ応用し、新しい農業 技術の創出とそれらを担う先端農業人材の育成を同時に推進することを目的として本センターが設置された。 設置以来、三枝正彦先生、平石明先生、菊池洋先生、井上隆信先生、浴俊彦先生といった本学の農工連携研究を牽引 する先生方が歴代センター長を務め、センターのミッションである①農業や食農関連産業に資する工学的・生物学的技 術の研究開発と実用化、②地域エコライフや未来農業都市社会の構築を目指した技術科学的情報発信、③関連分野の人 材養成教育を継続的に推進してきた。2022年4月には筆者(髙山弘太郎 機械工学系教授)がセンター長を拝命し、実 務家専任教員(山内高弘特命教授、磯山侑里特任助教[2026 年 3 月末時点])とともに、これまで築かれてきた歴史と 成果を継承しつつ、AI、ロボット、デジタル技術などの新しい技術を積極的に取り込み、SDGs やカーボンニュートラ ルといった世界的社会課題への対応も視野に入れた活動を推進している。 本センターの特徴的な取り組みの一つが、社会人を対象とした先端農業人材育成プログラムである。代表的なプログ ラムとして、施設園芸や植物工場の管理運営を担う人材を育成する「最先端植物工場マネージャー育成プログラム」、 情報技術を活用した農業の高度化を担う「IT 食農先導士養成プログラム(最先端土地利用型 IT 農業コース)」がある。 これらのプログラムでは、植物生理学、農業環境計測、農業経営などの講義と実習を組み合わせた体系的カリキュラム を提供しており、修了者には履修証明書と専門称号が授与される。さらに、農産物の加工・流通・販売までを含めたビ ジネス展開を担う人材を育成する「6次産業化人材育成プログラム」では、食品安全管理、マーケティング、経営戦略 などの講義に加え、ビジネスプラン作成を通じて実践的な事業構想力を養成している。また、2024年度からは、本学 の先端工学技術を地域農業へ展開する新たな試みとして「スマート農業特別講義」を開講した。本講義では、センサー 技術やドローンによる画像計測、環境影響評価などの最新技術を題材とし、受講生と教員が地域農業への応用を共同で 模索する場として位置づけられている。 これらの教育プログラムを通じて育成された修了者は、2024 年度までに延べ 652 名に達しており、農業生産者、企業、 自治体など多様な分野で活躍している。修了者を中心として形成された「IT農業ネットワーク」は、地域農業におけ る技術導入や研究成果の社会実装を支える重要な基盤となっている。なお、本稿では記述しきれなかった先端農業技術 の研究開発動向や地域実装の状況については、本センターのホームページ等を参照されたい。 最後に、これらの活動は、多くの地域自治体、企業、団体の皆様からのご支援によって支えられている。これまでの ご支援に深く感謝申し上げるとともに、本センターの教育研究活動が地域の発展に貢献し、さらには我が国農業の先進 化に寄与するよう、今後も取り組みを進めていく所存である。引き続き皆様のご支援とご協力を賜りたい。 133 II 転換の10年
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