3.3.2 特色ある教育 3.3.2.1 リベラルアーツ 本学における直近 10 年間のリベラルアーツ教育は、技術科学を基盤とする専門教育の高度化と並行し、「技術者に求 められる総合的人間力」をいかに育成するかという課題に応答する形で発展してきた。高等専門学校の卒業生を 3 年次 編入生として多く受け入れている本学では、学生が優れた専門技術を持つ一方で、専門外の分野に対する知識やリテラ シーが充分とは言い切れないという背景があった。そのため、「人間的技術者の育成」という理念のもと、教養教育の 充実が絶えず図られてきた。 本学では総合教育院を中心となって、人文・社会科学および自然科学基礎科目が体系的に配置されている。単なる教 養科目の履修にとどまらず、専門教育と接続する広い視野の育成が一層重視されるようになった。グローバル化や社会 課題の複雑化が急激に進む中で、技術者には高度な専門性に加え、倫理観、社会的理解力、異分野との対話力が不可欠 であるとの認識が強まったことがその背景にある。こうした問題意識のもと、令和元年度には総合教育院内において「リ ベラルアーツ教育検討チーム」が中心となり、リベラルアーツ教育の在り方を抜本的に再検討する動きが本格化した。 そこで教育内容の検証と将来構想の策定が進められ、従来の知識伝達を中心とした講義型の科目編成から、学生の主体 的思考を促す構成への転換が強く志向されるようになった。 この動きは令和 2 年度には全学的な規模へと拡大し、本学の第 4 期中期計画において「文理融合のこれからの理工系 教育にふさわしい教養教育の再構築」が明確な目標として掲げられた。議論を踏まえた具体的な実践として、令和 3 年 度には「リベラルアーツ連続講演会」が開始された。これは学内外の研究者や実務家を招き、哲学、民主主義、科学技 術倫理、宇宙探査、読書文化といった多様なテーマを扱う画期的な試みであった。講演および質疑応答を通じて、学生 が自身の専門分野を越えて思索を深める機会を提供することを目的としており、以後継続的に開催されることで、学内 における教養的対話の場として着実に定着していった。 令和 4 年度から令和 5 年度にかけて、連続講演会のテーマを多様化させ、さらに開催回数を増加させて、リベラルアー ツ教育は課外的な知的交流の場としてもさらなる拡充を遂げた。あわせて初年次教育の在り方や編入学生に対する教養 教育の配置など、制度的な再編の検討も本格化していった。令和 4 年度より全学的な取り組みとして学術素養科目の見 直しが開始され、令和 5 年 3 月の教育研究本部会議においては「リベラルアーツ教育改革」案が報告・検討されるに至 り、カリキュラムの再構築に向けた基礎固めが行われた。 令和 6 年度、本学のリベラルアーツ教育は大きな転機を迎えた。主として 1 年次学生を対象とする新科目「リベラル アーツ入門」が、一般基礎科目内の「分野横断基礎科目」として開設された。本科目は、異なる分野を専門とする複数 の教員が参加し、教員と学生、あるいは学生同士の対話を通して新たな発想を創出する文理融合の授業である。ジェン ダーや文化、科学と社会の関係など、容易には答えの定まらない問題をあえて扱い、学生自らが問いを立て、他者と議 論を交わし、論理的に表現する力を涵養することを目指している。これは従来の知識伝達型教育から、探究型・参加型 教育への質的転換を象徴する取り組みであり、「異分野対話型リベラルアーツ教育の構築」として三菱みらい育成財団 の令和6年度助成事業「21世紀型教養教育プログラム」にも採択され、高い評価を得た。加えて、学術素養科目とし て新たに「SDGs 概論」、「CPS基礎」および「Diversity-Tech 概論」が新設されるなど、時代に即した教育内容の現代 化も図られた。 101 II 転換の10年
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