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Chapter01

豊橋技術科学大学開学35周年記念事業を終えて/学長 榊佳之(さかき よしゆき)
豊橋技術科学大学は1976年10月に開学し、多数の方々に支えられて成長、発展し、35年を迎え、これを記念して去る2011年11月16日に関係者多数をお迎えして記念式典・記念講演を、またこれに前後して工学教育国際協力研究センター(ICCEED)の設立10周年記念シンポジウム、エレクトロニクス先端融合研究所(EIIRIS)主催の国際会議など様々な行事を「技科大ウィーク」として「地域に根ざし、世界へ羽ばたく」のテーマのもとに無事に執り行うことができました。ご多忙の中、またご遠方よりこの集いにお越しいただいた方々、準備から終了までご支援、ご協力をいただいた多数の方々に本学を代表してこの場を借りまして厚く御礼を申し上げます。

さて、35年というやや中途半端な区切りに記念行事を開催いたしましたのにはいくつかの理由があります。まず、本学が平成22年度に始まった第2期中期目標・中期計画において教育研究組織の再編など新しい方向性を打ち出し、その歩みを始めました。その新しい歩みをこの記念事業を通して学内外の方々に広く知っていただきたいとの思いがありました。さらに東南アジア各国との太いパイプを築いてきたICCEEDが10周年を迎え、また本学の新しい研究拠点として誕生したEIIRISも力強い一歩を踏み出しました。グローバル化の時代にこれらの世界に繋がる活動を一層強化することも重要です。また、本学では地域との間、あるいは高等専門学校との間で様々な活動が進められています。この機会にそれらの繋がりをより強固なものにすることも重要と考えました。以下に主要な活動の様子を振り返りたいと思います。

学長式辞
名誉博士号授与
藤嶋東京理科大学長による特別記念講演
参加者一同
11月16日の記念式典・記念講演会には国内外から多数の来賓をお迎えし、私が本学のこれまでの歩みとこれからの方向性を学長式辞として述べた後、森本衆議院議員の他、公務のためご出席いただけなかった文部科学省高等教育局長、豊橋市長からもお祝いのメッセージをいただき、さらに本学に寄附講座を開設いただいたオーエスジー(株)の大澤輝秀会長及び豊橋信用金庫の吉川一弘理事長をはじめ、岡崎、蒲郡、豊川、浜松の各信用金庫に感謝状が、また卓越した技術科学者養成プログラムに選ばれた学生に表彰状が贈られました。そして式典のハイライトとして本学に初めて制定された名誉博士号を、35年前の本学設立活動の中心メンバーで、その後も本学の理事等を通して本学の発展にご尽力いただいた中部瓦斯(株)の神野信郎相談役と、本学の卒業生でベトナム日本留学生協会の会長として日本とベトナムの人材交流の中心となっておられるNguyen Ngoc Binh(グエン・ゴク・ビィン)ベトナム国家大学ハノイ校工科技術大学長に授与致しました。このような本学と関係と強い絆を持ち、社会的に尊敬される方々に名誉博士号を授与できたことは本学にとって誇りとするところであります。続いて、記念講演会が開催され、東京理科大学学長の藤嶋昭先生に『感動しつつ、良い雰囲気のもとで研究しよう』のタイトルで記念講演をしていただきました。大学院時代のご自身の光触媒の発見から今日まで、先生の研究者としての姿勢、哲学が聴衆を引き込み、若い学生・教員はもとより、私のような年配者まで感動を覚える素晴らしいご講演でした。

記念式典の前日15日にはICCEEDの設立10周年記念シンポジウムが「工学教育国際協力の将来像」のタイトルのもとに行われ、上述のNguyen Ngoc Binh(グエン・ゴク・ビィン)ベトナム国家大学ハノイ校工科技術大学長やマレーシア工科大学のHo Chin Siong(ホー・チン・シヨン)教授をはじめ、インドネシア、マレーシア、ベトナムで活躍する本学の卒業生・関係者により、本学とASEAN各国の大学との連携について活発で建設的な議論、提言が展開されました。

さらにEIIRISの主催する国際会議「アジア太平洋異分野融合国際会議」が世界10ヵ国から300人を超える参加者のもとで17、18日の2日間にわたって行われました。イギリスの王立研究所長のQ.Pankhurst(Q.パンカースト)博士やウルツブルグ大学のH.J.Gross (H.J.グロス)教授、この度日本国際賞を受賞された佐川眞人博士など国内外の著名な研究者と若手研究者が次の時代を見据えた新しい研究領域への取り組みについて熱を込めて語り、議論を展開しました。またこれに合わせて企業などにより展示会が行われ、韓国からの参加も含め、活発なやり取りが行われました。

このほか、本学と関係の深い地域の企業の方々への研究室公開や高等専門学校関係者との意見交換、留学生を中心とした国際交流デー、自動制御学会との合同での小惑星探査機「はやぶさ」帰還の指揮をとられた川口淳一郎先生の講演会など知的な刺激に富み、充実した一週間となりました。

一連の行事を終えて振り返りますと、日常ではなかなか本学にお越しいただけないような方々に国内外から多数お越しいただき、「地域に根ざし、世界へ羽ばたく」のテーマに相応しく、地域との絆、世界との絆が強化され、また国内外に本学のメッセージを発信することができたと自負しております。しかしこれがゴールではありません。ここで生まれた絆や繋がりを本学の次の発展の力に変えることが大切です。継続は力なりと言いますが、今回の会議、会合で議論された内容、課題を一層深化させるように地道に、かつ積極的にフォローしていきたいと思っております。皆様方には引き続きのご理解とお力添えをいただきますようお願い申し上げます。

最後に、重ねてになりますが、今回の一連の行事、活動にご協力、ご尽力をいただいた全ての方々に厚く御礼申し上げます。
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Chapter02

ICCEED設立10周年記念シンポジウムを開催/工学教育国際協力研究センター長 木内行雄(きうち ゆきお)
豊橋技術科学大学の開学35周年と工学教育国際協力研究センター(ICCEED)の設立10周年を記念する行事の一環として、11月15日に学内でICCEED設立10周年記念シンポジウムを開催しました。文部科学省(MEXT)と独立行政法人国際協力機構(JICA)の後援を得て開催されたこのシンポジウムは、「工学教育国際協力の将来像:大学間ネットワーキングへの期待」をテーマに、インドネシア、ベトナム、マレーシアから本学同窓など本学と深い関係にあり母国の大学で重要な役割を担う6氏の講演と、活発な総合討論がありました。

ホー・マレーシア工科大学国際交流部副部長
ビィン・ベトナム国家大学ハノイ校工科技術大学長
シンポジウムの様子
総合討論
冒頭、開会の辞で榊学長から、本学開学以来の国際活動の取り組みを振り返り、築かれてきた海外の諸大学・諸氏との信頼関係は本学の財産であるとした上で、今後ICCEED活動の一層の進化への期待が表明されました。来賓挨拶では池原充洋文部科学省大臣官房国際課長から、同省における最近の政策展開と密接に関係する今回のテーマに関する討議への高い期待が寄せられました。萱島信子国際協力機構人間開発部長からは、教育分野における国際協力の展望が紹介され、事業への今後一層の参画への期待が表されました。

海外からの招待講演者のうち、サムスル・シャクアラ大学副学長(インドネシア)、ホー・マレーシア工科大学国際交流部副部長、ヨー・マレーシア科学大学上級講師、ビィン・ベトナム国家大学ハノイ校工科技術大学長の4氏は本学同窓です。トゥアン・ベトナム国家大学ホーチミン市工科大学副学長はかつてICCEEDに勤務した客員教授であり、イクサン・バンドン工科大学質保証部門長は、20年余りに亘り本学と密接な協力関係にあるバンドン工科大学(インドネシア)のキーパーソンです。本学にゆかりの深い講演者から、本学開学35周年とICCEED設立10周年への賀詞とともに、今後の工学教育国際協力について様々な提言がありました。近年の国際分業を踏まえた学生間の国際協力を通じたデザイン力・協調力・コミュニケーション能力向上のための教育プログラムの立ち上げ、教育と並び研究における国際協力の推進、地球規模の課題に取り組むための国際連携、研究を重視した教育協力と支援、国際的に活躍できる日本人・外国人人材の育成、母校ごとの同窓会や日本への留学経験を共有する同窓会を活用した大学間ネットワーク構築などです。

また、国際研究協力の一例として、本学が昨年度に立ち上げた本学独自の国際研究プロジェクト事業による、水環境に関するインドネシアの諸大学との研究プロジェクトがジュマント特任准教授(ガジャマダ大学講師)から紹介されました。

穂積ICCEED教授をモデレータとする総合討論では、同窓と密接に連携したネットワーク形成、国際的な研究プロジェクトの推進方策、互恵的な大学間連携、また今後の世代に求められる高い国際性と国際連携能力について、活発な討論がなされました。会場ではICCEEDの主要活動に関するパネルの展示や、冊子「ICCEEDの10年」の配布がありました。

喜多ICCEED准教授の総合司会により総計200名の参加を得て開かれたシンポジウムは、今後の大学間ネットワーキングに関する多くの示唆を与えて、センター長(筆者)の閉会の辞により、5時間のプログラムを終え閉会しました。
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Chapter03

アジア太平洋異分野融合研究国際会議/エレクトロニクス先端融合研究所 准教授 岡田浩(おかだ ひろし)
2011年11月17日、18日の2日間にわたって、アジア太平洋異分野融合研究国際会議(The Asia-Pacific Interdisciplinary Research Conference 2011)が本学で開催されました。この国際会議は、科学者、技術者、政策立案者、基礎科学や応用分野にわたる様々な分野の専門家が参集し、それぞれの分野を越えた互いの理解を醸成する「異分野融合のプラットフォーム」を提供し、人類が直面する地球規模の問題解決に向けた議論をすることを目的として、本学エレクトロニクス先端融合研究所(EIIRIS)が主催して企画されました。
英国王立研究所 Q.Pankhurst教授
ミュンヘン工科大学 S.Hirche教授
ポスターセッションの様子
2日間の会議には招待講演8件を含む174件の学術論文の発表が行われ、そのおよそ半数は本学以外からの投稿でありました。韓国、インドネシア、ベトナム、ロシア、英国、フランス、アメリカ、ドイツ、スウェーデンといった海外からの論文や、国内の他大学・研究機関からも多くの論文投稿があり、まさに国際会議の名前に恥じないものとなりました。A-101大講義室での口頭発表、講義棟ホールでのポスター発表が行われ、熱心な議論が行われました。論文の一部を紹介しますと、英国王立研究所のQ.パンカースト(Q.Pankhurst)教授の大学の成果の実用化に関する英国での取り組み、韓国嶺南大学のJ.S.ジャン(J.S.Jang)教授のLEDの応用技術に関する取り組み、東北大学の江刺正喜教授からの東北大学の実験施設が受けた東日本大震災の被害と復興の取り組みの報告がなされました。ウルツブルグ大学のH.J.グロス(H.J.Gross)教授からは、蜂を例とした動物や人間が先天的に持つ数を認識する能力に関する研究や、ミュンヘン工科大学のS.ヒルシェ(S.Hirche)教授によるロボットと認知が可能なシステムの実現に向けた取り組み、インターメタリクス社の佐川眞人社長から、世界最強のNdFeB磁石の開発の歴史を開発者ご自身から解説していただきました。また、東京大学の鯉沼秀臣教授による北アフリカ地域でのサハラソーラーブリーダー(SSB)計画を通したエネルギー問題への取り組みが紹介されるなど、21世紀に生きる我々が直面する問題と、それに対する科学者たちの最新の取り組みが網羅されていました。参加者からは、一般的な学会ではともすれば専門的な話題に偏りがちだが、異分野の話題を凝縮して聞くことができて大変に有意義であったと、好評の声が多く聞かれました。また企業展示に地元企業、海外企業含め41件と多く参加していただき、豊橋での開催を印象付けました。総参加者数は300名を超え、ひばりラウンジで開催されたバンケットも大盛況でした。なお、この会議の会議録が英国出版協会IOP出版より、Journal of Physics Conference Series (JPCS) の査読付きオープンアクセスな論文としてオンライン出版されます。

こうした本格的な国際会議を本学で開催するのは、開学以来初のことであり、国際会議の企画や会場準備・運営などでは学外、学内の多くの方々にご助力をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。この国際会議は、第2回として2012年11月15、16日、伊良湖Sea-park & Spaホテルにて開催予定です。科学技術分野の研究者を中心に広範囲なテーマから地球規模の問題を議論する国際会議は他にありません。経済、産業、環境、エネルギー、食料、人口爆発の問題など地球規模の問題に科学者、技術者に寄せられる期待は極めて大きいものがあり、本学から21世紀の社会が直面する問題に向けた科学・技術分野からのソリューションを発信していければと願っております。
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