豊橋技術科学大学五十年史

「技科大からの就職、変化する時代に求められること」 この度は、豊橋技術科学大学が創立 50 周年を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます。私は 2021 年に電気電子情 報工学専攻にて博士(工学)を修了し、現在は株式会社東芝の総合研究所にて電池技術の研究開発に従事しております。高専 からの編入以来、学部・大学院を通じた 7 年間を過ごした母校の節目に寄稿できることを大変恐縮ながら嬉しく思います。 1.実践の場が拓いた企業研究職への道 私が博士課程を経て企業就職を選んだ原点は、在学中の長期インターンシップにあります。編入当初から漠然と抱いていた 進路でしたが、学部・大学院時代に実際に企業の現場へ身を置き、「研究」と「モノづくり」の接続を体感したことで、その 意思は確信へと変わりました。アカデミアで学術を究める道もありましたが、自らの技術を社会実装という形あるものへ昇華 させたいという当時のビジョン、そしてそれを選択できるだけの技術的素地と広い視野を、技科大での実践教育が与えてくれ たと感謝しています。 2.技科大生へ:変化する時代における「苦労」の価値 偏見ながら技科大生には「楽をするために、あえて苦労をする」という特有の気質があると感じています。これは単なる怠 惰ではなく、効率化や技術革新を生み出すための原動力であり、人類の発展を支えてきた精神そのものです。一方で生成AI 等の台頭により「楽」の次元が変わる現代において、若いうちに「苦労を乗り越える経験」を積む機会は相対的に減少しつつ あります。学生当時よく理解できていなかったものの代表ながら、私自身の研究者としての現在地を支えているのは、学生時 代の試行錯誤の経験に他なりません。便利な世の中だからこそ、技科大という挑戦の機会に満ちた環境で、あえて泥臭い、あ るいは解が無いかもしれない課題に向き合い、その壁を越えなくても、限られた時間で乗り越えようとした経験を積んでいた だきたいと願っています。変化する世の中で、エンジニア・研究者が何をできるのか、するべきなのか、そんな問いかけを皆 様におすすめすると共に、私も考え続けたいと思います。 最後になりますが、豊橋技術科学大学のますますのご発展と、在学生、同窓の皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。 (2021 年 3 月 電気・電子情報工学専攻(博士後期課程)修了 村田 芳明) 279 Ⅲ 学園生活

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