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Chapter01

学長に就任して/学長 大西驕iおおにし たかし)
学長 大西
学長 大西
去る4月に本学の学長に就任した大西隆です。長く大学教員をしてきましたので、仲間内の取りまとめをしたような経験はありますが、大学全体を管理するのは初めてです。したがって、4月から始まった会議が連続する仕事には当初戸惑いました。もっとも、兼務している日本学術会議会長という仕事も、職名が示すとおり会議が多いので、教員としての研究中心の生活から、会議漬けの仕事のスタイルにここ数年で大きく転換したことになります。

仕事のスタイルの変化に戸惑いはありましたが、本学の学長という仕事にはやりがいを感じています。それは、高専から技科大へという人材育成のルートは、日本の特技である“ものづくり”を支えるもので、これまでの日本の発展を牽引し、そしてこれからの日本を引っ張っていくに違いない本流であるとの思いからです。国民性、気候風土に応じて、国による人々の特技というのはやはり存在していて、陽気で感情を体で表現するのが得意な人々、政治的駆け引きに長けた人々、深く哲学にふけるのが得意な人々等の国民性があるとするならば、日本人は、まさに緻密に、丁寧に物を作るのが得意な人々ではないかと思います。自分自身はその中の優等生とは思いませんが、日本人が世界の中で果たしている役割を少し客観的に観察すれば、そういうことになります。本学の追求している、技術科学を深め、高専卒業生にさらに教育を施し、実務指導者や研究の世界へと導くという目標は、まさしく日本人の得意技に磨きをかけるという意味で、その存在感を高めていくものです。

実は、私は、以前に技術科学大学、本学ではなく、長岡技術科学大学に7年間ほど勤務していたことがあります。その時に、技科大生には、一般の高校出身者と異なる優れた資質があることを、身をもって感じました。それは、多くの学生が、中学生でものづくりの面白さに目覚め、高専を志したことです。また、高専時代に寮生活を体験している学生が多く、自立心や友人達との協調的な生活術を身に着けていることです。これらは、恐らく、ものづくりへの関心を忍耐強く持続させることや、一人よがりにならずに最善の道を探っていく生き方に繋がっているのではないかと思います。

本学に来て、まだ、十分に学生諸君と語り合うような時間が取れていないのは残念なのですが、近い将来そういう時間を持って、私が抱いている印象が間違っていないことを確認したいと思っています。最後に少し辛口の印象を付け加えます。本流にいる者は、周りが見えなくなる嫌いがあるのも事実です。世界は物だけで動いているわけではなく、文化・芸術、さらに思想・信条など様々な無形の価値が人の生活を豊かにします。人と物という関係だけでは、潤いに欠ける世界になりがちなことも想像に難くありません。技科大生には、できるだけ文化に触れたり、教養に接する機会をつくり、広角的な知識の吸収や人格の陶冶に励んでもらいたいと思います。そういうことに心がけていると、日常性の中にも新たな世界が開けてくると思います。
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Chapter02

理事・副学長(総務担当)就任にあたって −技科大での21年を振り返りながら−/理事・副学長 大貝彰(おおがい あきら)
理事・副学長(総務担当) 大貝彰
私が本学に赴任したのが平成5年4月(1993年)ですから、21年が経ちました。前任地の九州大学工学部で助手となったのが1983年です。その10年後に豊橋の地に移り、助教授として11年を過ごし、2004年からは本学の教授として教育・研究に携わってきました。そして今(2014年)があります。私の大学遍歴はほぼ10年周期で変わっています。私の専門分野は都市計画ですが、ここでは豊橋技科大での21年間を振り返りながら、今の心境を述べることにします。

本学に着任した年から、故紺野昭先生の研究室をそのまま引き継ぎ、いきなり修論・卒論の指導が始まりました。研究テーマの設定には試行錯誤を繰り返しました。ただ最もこだわった点は技術科学大学の教員ということです。つまり都市計画という学問を技術科学の視点から探究することです。このこだわりを堅持しながら都市計画の実践に貢献できる計画支援技術の研究開発を進めてきました。当時、海外ではすでに実績が出ていましたが、国内ではこのようなテーマに取り組む研究者はほぼ皆無でした。セルラーオートマタ、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムなど異分野の手法を都市の計画策定支援技術に応用し、地理情報システムを基盤とする計画支援システムの研究開発に専念してきました。
Figure 1. The Planning Process as a Sequence of Computable Methods Enabling Decision Support (reproduced from Mike Batty and Densham, 1996):
このダイアグラムは20年前、私の都市の計画支援技術の研究開発に大きな影響を与えた。 

これらは助教授時代に蓄積した成果で、その研究業績に対して2004年に日本建築学会賞が授与されました。これが豊橋での前半約10年です。

2004年からは大学の法人化と同時に自分の立場も変わります。余談ですが、10年刻みでこれほど大きく環境が変化する人間もいないのではと考えています。助教授時代の11年は自分の研究に専念させてもらいましたが、以後の10年は系長、センター長、大型プロジェクト、社会貢献と環境が一変します。その中で研究室での教育・研究は、都市計画教育と従来からの研究開発を都市計画の実践に活かすことを自らのテーマとして進めてきました。
研究室で開発した防災まちづくり支援システムを都市計画の実践での活用可能性を検証する実証実験の様子
(地域住民による防災まちづくりワークショップ)

教育・研究を実践に活かすことはいまだ道半ばのまま、新しい学長を補佐する総務担当理事・副学長に就任しました。立場と環境がまたまた大きく変わりその順応に追われているというのが正直な心境です。ただ後半の10年間で経験してきた都市計画の実践は、私のこれからの総務担当理事としての任務に役立つ予感があります。実社会における都市計画の役割は、都市における居住、労働、余暇、移動といった多様な人間の諸活動が、安全に、効率的に、円滑かつ快適に行えるよう、その器となる住宅、商業、工業等の土地利用、交通施設等の様々な都市施設の配置と密度を調整し、その環境を整えることです。ここで都市を大学に、都市の諸活動を大学の教育・研究・社会貢献活動に置き換えて考えると、私の役割は、大学の教育・研究・社会貢献活動が円滑に行えるよう(さらに言えば、活性化するよう)、教職員の皆さんが働く環境をハード面はもちろんソフト面からも整備することにあると考えています。

国立大学は今、第3期中期目標・中期計画に向けた改革加速期間にあり、本学では国立大学改革強化推進事業(三機関連携事業)、研究大学強化促進事業、博士課程教育リーディングプログラム、など大型プロジェクトが動いています。これらの取組を引き継ぎながら第3期中期目標期間中に大きく飛躍し、世界トップクラスの工科系大学に列せられることを目指し、教員と職員、そして何よりも学生が生き生きとキャンパスライフを送れるような環境整備に努めていく所存です。皆様には、今後の大学運営に対するご理解とご協力をお願いする次第です。何卒よろしくお願い申し上げます。 
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Chapter03

理事・副学長(学務担当)就任にあたって/理事・副学長 井上光輝(いのうえ みつてる)
理事・副学長(学務担当)井上光輝
学務の守備範囲を縦割りで記してみると、教務、入試、学生、国際、高専連携、情報、総合教育院などになります。ここでは、大西学長が第三期中期目標に向け示された5つの挑戦(@多文化共生キャンパスの実現、A技術立国を支える人材の育成、B融合研究を軸とした研究力強化、C社会の発展に資する知・技術の創出、D研究者の継続性と流動性の促進)の中から、@からBの3つのテーマを具現化する学務の取り組みを紹介しましょう。
多文化共生キャンパスの実現:本学は昨年12月に、国立大学として初めての本格的な海外教育拠点をマレーシアペナン州に設置し(図1)、実務訓練や学生・教職員のグローバル化、あるいはASEANからの優秀な留学生獲得など、様々な活動を開始しました。多文化共生キャンパスの形成には、この海外教育拠点の整備・高度化や、そこで展開する教育プログラムの構築が不可欠であるため、グローバル工学教育推進機構委員会の下にワーキンググループ(WG)を組織して検討を行っています。
図1 海外教育拠点(マレーシア・ペナン)


この海外教育拠点の設置・整備は、本学と長岡技術科学大学、国立高等専門学校機構とが連携した大学改革強化推進事業(三機関連携事業)の一つに位置づけられますが、本学では更に、インドネシア、タイ、ベトナム、インド、ロシア、メキシコなどに位置する諸大学・研究所、あるいはクイーンズ・カレッジ(ニューヨーク)との連携強化を目的に、国・地域ごとの推進グループをグローバル工学教育推進機構の中に組織して、戦略的な対応を始めています。

図2 本学のスーパーグローバル大学構想
本年5月末には、スーパーグローバル大学創成支援事業への申請をまとめました。この提案の主題である「グローバル技術科学アーキテクト」を養成するキャンパスの創成(図2)は、まさに多文化共生キャンパスの形成に資するものです。このため、申請結果の如何によらず、できる所から実施することを念頭に、国際戦略本部の下にWGを組織して具体的な実施事項の検討・準備をしています。

優秀な留学生の獲得には、海外から見て魅力ある教育研究の展開が欠かせませんが、加えて、充実した留学生の支援体制の構築も必要です。昨年度から引き続き国費優先配置留学生の申請準備を行っている他、新たに国際プログラム留学生をパッケージとして支援できる制度(国際プログラム強化推進事業(仮称))を検討しています。これは、欧米などで実施されている例を参考に、渡航費や学費、滞在費などをひとまとめにパッケージとして支援することで、海外の優秀な学生を獲得しようとするものです。

図3 博士課程教育リーディングプログラム
技術立国を支える人材の育成グローバルな環境の中でイノベーションを起こす博士人材の育成を目的に、昨年度から博士課程教育リーディングプログラムを推進しています。このプログラムは、本学の全専攻を対象に、博士前後期課程一貫で「ブレイン情報アーキテクト」を養成するものです。(図3)今年4月に第一期生として、博士後期課程2名、博士前期課程6名の学生が履修を開始しました。本学のリーディングプログラムの特長の一つは、国内外の大学・研究所・企業に所属する研究者がグループ指導教員として研究指導を行うことにあり、既にマサチューセッツ工科大学やモスクワ大学などの教員が本学博士後期課程学生の共同指導を行っています。

図4 課題解決型インターンシップ
一方、高い課題解決能力をもつ人材の育成を目的として、国内外の企業や大学・研究所などの具体的な課題解決を行う課題解決型インターンシップ制度を整備しています。(図4)このインターンシップ制度は、これまで実施してきた2ヶ月の実務訓練の枠を超えて、学部4年次の1月から博士前期課程1年の6月上旬までの約6ヶ月間に渡り、学部・大学院プログラムをシームレスに継続して行う長期のインターンシップです。海外の企業で実際の課題に向き合い解決するには少なくとも6ヶ月程度の継続した期間が必要との意見を反映し、これを国内の場合についても総合的に展開するものです。

前述した三機関連携事業の中で展開しているイノベーション人材の育成も重要なテーマとなっています。後述する新しい入試制度の設計とも関係して、本学と高専教員とが長期に連携して技術者を育成するスキームが作られつつあります。これには、両技科大と全国51高専55キャンパスを結んだGIネットの本格活用が欠かせません。

リーディングプログラムを含む博士後期課程の学位審査についての検討も開始されています。本学は大掛かりな再編によって、課程・専攻とも一新しました。いよいよこの10月から、新たな専攻を履修した博士後期課程学生の学位審査が開始されます。全専攻が同じような足並みで博士の学位審査を行うため、9月上旬には博士後期課程委員会を新たに設置し活動を開始することになっています。この委員会では、学位審査に加え、博士課程への入学方法などについても議論することになっています。

本学独自の人材育成支援制度である「卓越した技術科学者養成プログラム」の充実も図られています。例えば、4月に本学の学部から大学院博士前後期課程に進学する学生を対象としたものを、国際プログラムを含む4月・10月の学内外からの入学者に対象を広げ、グローバル化に対応しようとしています。このためには財源の確保が必須なので、現在実施中のプログラムの一部見直しも含め、制度の充実を図っています。

学生は、自らが成長していく過程の中で様々な事柄に遭遇し、その解決を支援する体制の整備は重要です。学生支援室が中心となって、従来の学生相談体制に新たに学生・教職員の心身の健康保持増進を図る健康支援センターとの強い連携を反映させた手厚い学生相談体制を整備し、既に稼働しています。

図5 研究力強化特別入試
融合研究を軸とした研究力強化:大学の研究力強化と関係して、研究力に優れ研究を楽しむことのできる優秀な学生の受け入れも重要です。このために、新たな入試制度の検討が進んでいます。5月末に申請した大学教育再生加速プログラム(入試改革)もその一貫です。この申請では、入試前の高専在学中から、合格後の本学入学前までの期間を広く入学者選抜ととらえ、「点から線の入試への転換」を行うものです。具体的には、高専5年次の「卒業研究」を本学教員と高専教員とが協働して指導する中で「研究力(意欲・能力・適性)」を多面的・総合的に評価・判定し、入学前の早期から、その素養を「育成」する観点にたった新たな入試制度(研究力強化特別入試)です。(図5)さらに、この卒業研究の共同指導を通じて見出した研究能力の極めて高い優秀な学生は、博士後期課程への進学を前提として、新設する「研究力強化育成特別コース(学部第3年次編入後の3年間(学部・大学院一貫教育)で博士前期課程(修士)を修了させる教育プログラム)」で研究力を更に重点的に強くすることもできます。

この線の入試制度と関係し、また、三機関連携事業で行っているイノベーション人材育成の観点も強化して、高専との共同研究支援を大きく二つの枠組み(研究推進プロジェクト支援とグローバルイノベーション枠)に再編しました。後者は、次世代シミュレーション技術者育成支援、生命環境工学技術者育成プロジェクト、イノベーション教育枠の3つで構成され、いずれも高専学生を中心とした共同研究を行うものです。この次世代シミュレーション技術者育成、生命環境工学技術者育成はいずれも、本学が推進している時限付きの特別事業です。高専教育との連携も視野に、最終的に本学独自の教育プログラムとして定着させるものです。今年度からは新たに、多言語翻訳を効率的に進めるシステムの開発も加わり研究がスタートしています。

三機関連携事業では国立高専機構を通じて51の国立高専と協力していますが、この中には東京、大阪、神戸に位置する公立高専が含まれていません。上述した新たな入試制度とも関係して、これら公立高専との連携強化も進めています。

図6 高等専門学校との共同研究支援
本稿でご紹介した以外にも、大西学長の5つの挑戦を具体化する様々な取り組みを行っています。例えば「研究者の継続性と流動性の促進」と関係して、本学に定着を図っているテニュアトラック制度の推進があります。次の機会には、「社会の発展に資する知・技術の創出」も含め、更にたくさんの取り組みをご紹介できるよう進めてまいります。これらの活動を通じて、本学がより一層発展できますよう、学内外の皆さまの更なるご理解ご協力を深くお願いいたします。
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