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Chapter01

東三河「IT食農先導士」養成拠点の形成について/先端農業バイオリサーチセンター特任教授 三枝正彦(さいぐさ まさひこ)

三枝正彦 筆者東三河地域は愛知県の東部に位置し、静岡県、長野県に接する南北に長い地域で一級河川「豊川」に結ばれた全国有数の先端的農業地帯です。温暖な気候のもとに平野部を中心に全国トップレベルの先進的農業を展開し、平成17年度の市町村単位の農業生産額は田原市が全国1位、豊橋市が全国5位と極めて農業が盛んな地域であります。しかし近年の安い農産物の輸入増大、光熱費の高騰などにより、農業生産額は平成7年の1652億円をピークに最近では1550億円前後と停滞しています。また産業別65歳以上就業割合はIT産業では1.2%に過ぎませんが、農業では46.5%と極めて高い割合を示し、高齢化、後継者不足が顕在化しています。そして平成17年度における東三河地域の遊休農地は12.9%にも達しています。

農業は、収穫時期や生産量、品質などが気候や土壌、共存する生物などの環境要因に大きく支配されるため、これまでは長年の経験と勘を必要とし、若愛知県地図者や他産業からの参入を困難にしてきました。これらの問題を解決し、若者や他産業からの就農を可能にするには、生産環境をモニタリング・制御する先端的IT技術、システマティックな工学的技術を取り入れた収益性、競争力の高い攻めの農業を展開することが不可欠と思われます。豊橋技術科学大学では創立30周年を記念し、本学が有する優れた工学的技術を地域農業に還元するために、平成18年に先端農業バイオリサーチセンターを設立しました。そしてこの先端農業バイオリサーチセンターが中心となって、愛知県と地域自治体の連携の下に東三河地域の食農産業を振興するために、平成20年度文部科学省科学技術振興調整費、地域再生人材創出拠点の形成に応募し、「東三河IT食農先導士養成拠点の形成」事業が採択されました。本事業では、本学の培った先端的技術科学の情報と工学技術を体系的に導入し、IT生産管理・IT経営管理のできる人材、「IT食農先導士」を養成します。これによって、収益性、競争力の高い海外輸出をも見据えた攻めの農業を展開します。そして、若者や他産業からの就農を可能にし、後継者不足、遊休農地の解消、自給率豊橋技術科学大学の屋上から眺める農業ハウス群の向上を行い、自然と共生し、健康で豊かな東三河地域の再生を試みるものです。

受講生は東三河地域に居住あるいは勤務する農業者、自治体職員、農業に関心のある学生あるいは農業以外の産業従事者などを対象とし、修業年限2年、一期25名、5年で100名の「IT食農先導士」を養成します。受講料は無料です。

人材養成の目標は豊かな人間生活、先端的な科学技術、多様な生命を育む自然環境の調和を達成できる食農産業あるいはそれに関連した分野の先導士を作ることであります。すなわち、ITを武器とするシステマティックな最先端工学的技術と思考力、ファジーな生産現場に対応できる農学的技術と思考力を兼ね備えた人材を養成することであります。

受講生はまず、最近の最先端の農学を理解するための先端基礎農学コース(資源植物学、資源動物学、土壌・植物栄養学、植物保護学、農林統計学、農業経営学)を12月から3月にかけて毎土曜日終日教室講義(6単位)で行います。その後、受講者は自宅のパソコンを利用し、最近進歩が著しくかつ学習効果が高いインターネットを利用したE-Learning方式の講義(各コース6単位、合計12単位)をIT生産管理コース(IT生産環境モニタリング、IT精密農業、バイオテクノロジー、バイオマス利活用、土壌・作物栄養診断、IT管理施設園芸)とIT経営管理コース(IT情報管理、総合環境影響評価、地域再生法、食農リスク管理、IT Marketing 知的財産情報事業の実施体制管理)について行います。これらコースの修了者は近隣のIT最先端技術を導入している企業・機関の生産現場の実務訓練(4単位)を行い、全ての単位を修得したものに対し,豊橋技術科学大学より「IT食農先導士」の称号を授与致します。修了生は連帯感をもってIT食農産業を推進するように「東三河IT食農先導士ネットワーク」をつくります。そしてIT食農産業は日々進歩するので、豊橋技術科学大学に新設する「IT食農先導士サポートセンター」より、修了生に対し定期的にアフターケア(現場の課題の解決と最新農業情報、各種IT新情報と新技術の提供)を行います。
 
この「IT食農先導士」の養成によって生産環境の不安定な農業および関連産業が活性化し、IT最先端技術を用いた世界レベルの攻めの食農産業拠点が形成されます。またこのIT食農産業モデル(東三河モデル)を普及させれば、低迷する我が国農業の振興にも大きく貢献することが期待されます。

読者の皆様の本事業に対するご理解とご参加をお願い申し上げます。

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Chapter02

TUTロボコン in インド/ロボコン同好会顧問・機械システム工学系 准教授 鈴木新一(すずき しんいち)

豊橋技術科学大学応援席の様子本学学生の課外活動団体であるロボコン同好会は、6月8日に東京で開かれた「NHK大学ロボコン2008」で優勝しました。過去15年間で5度目の優勝です。また、8月31日にインドのプネで開かれた「ABUアジア太平洋ロボットコンテスト(ABUロボコン)」に日本代表として参加し、3位入賞を果たしました。参加国は17カ国18チームであり、1チームは学生6名、指導教員1名の構成です。国際大会であるため、国内大会では見られない激しいやり取りや、興味深い質問もありました。

7月15日(火)
ロボットをインドへ発送。競技の公平さを保つために、全ての参加チームはこの日にロボットを梱包し、発送しました。交通の不便な国に配慮し、試合の1ヶ月半前の発送です。次にロボットに手を触れられるのは、大会前日の8月30日、試合会場へ入場したあとです。

8月29日(金) 午後
全てのチームが参加して、競技ルールの最終確認が行われました。その席で主催者(インド)側から、試合会場へ持ち込む機材を厳しく制限する旨の説明がありました。これは翌日の出来事への布石でした。

大会会場のマハラシュトラ工科大学8月30日(土) 午前
試合会場への各チームの入場が始まりました。会場入口では、主催者側が、各チームが持ち込む荷物を全て開封し、厳しく検査しています。本学のチームは問題なく入場できました。

しかし、2つの国のチームが通過できません。これらのチームは、大きな箱の中に、新しく作ったロボットを入れて試合会場に持ち込もうとしたのです。これは、「公平を期すために、全ての国が7月15日にロボットを発送する」というルールに違反します。ひとつのチームの指導教員は、大声で怒鳴りながら会場に入ろうとします。しかし、主催者側は譲りません。結局、それらの「新しいロボット」の搬入は許可されませんでした。主催者側は、「この問題を十分に議論してきた」と言っていました。

この出来事を見ながら、私はルールが守られたことを嬉しく思いました。来年は日本でABUロボコンが開かれます。日本においても、海外チームからの圧力があっても、ルールの公平さが守られて欲しいと思います。

試合の様子8月30日(土) 午後
日本から送った梱包を開け、1ヶ月半ぶりにロボットと対面し、競技場でのテスト走行に臨みます。しかし問題が起こりました。梱包を開けたところ、一台のロボットの車輪が見当たりません。競技には4台の移動ロボットを用いますが、その中で最も高い得点を獲得するロボットの車輪がないのです。梱包し忘れたのか、輸送の途中で紛失したのか?このままでは試合に勝てません。

短い時間でいくつかの対策を検討し、最終的に、車輪を作ることに決めました。車輪の材料にはコルク板を用いました。試合を観戦しながらメモを取るために、たまたま、コルク製の下敷きを6枚持って来ていたのです。コルクは柔らかく、加工が容易なので最適です。コルク板に現物合わせで円を描き、円の中心を求め、糸鋸で切り、ヤスリで形を整え、ハンドドリルでモーターの軸を通す箇所を加工します。全て手作業です。出来上がったコルクの円盤を2枚重ね、外周にゴムを貼り付けて完成です。3時間後、立派な車輪が2つ出来上がりました。メイド・イン・インドです。

作った車輪をロボットに取り付け、テスト走行に臨みました。大成功です。ロボットは、計算された軌道を正確に走行しました。
本学は、1990年代に、木製のロボットを作っていました。木は金属と比べて加工しやすく、予期せぬトラブルが発生したときに対応が容易だからです。今回はその時の経験が生きました。また、ロボコンの学生は優れた技能をもっており、それが十分発揮された瞬間でした。

表彰式の様子8月31日(日) 試合
試合当日です。試合は2チームによる対戦形式で進められます。全ての試合において、4台のロボットは順調に動きました。メイド・イン・インドの車輪を付けたロボットも完全に機能しました。残念ながら力及ばず、僅かな差で決勝戦に進むことは出来ませんでしたが、3位入賞を果たしました。次回は是非決勝戦を戦いたいものです。

8月31日(日) 試合後
全ての試合が終了した後、日本のピットには多くの見学者が訪れ、大変な人気でした。その中で、10人前後のインドの大学生に囲まれ、沢山の質問を受けました。質問の多くはロボットに関することではなく、日本の経済発展に関することでした。「日本はどのようにして現在の繁栄を手に入れたのか?」を訊きたかったのです。

彼らの質問に対して、「日本は、明治維新後に、西洋から約70年遅れて近代社会を形成してきたこと」、「第二次世界大戦後の経済発展は、朝鮮動乱が契機になったこと」などを話しました。しかし、彼等は納得しません。インドの学生は、日本を取り巻く外的環境よりも、「日本独自の文化的背景」に関心があったのです。

現地での交流の様子私は、日本の発展を日本の文化的背景だけに求めることには、慎重であるべきだと思います。しかし、文化的背景が全くなかったわけではないでしょう。

前述のように、ロボコンのメンバーは、なくなった車輪を、試合会場の限られた時間の中で作りました。これは、訓練された技能があって初めて出来ることです。明治維新以降の日本の繁栄には工業化の成功があり、その中に、優れた技能を持った人々が多数いたのだろうと思います。私は、その様な人々を大切にする文化が日本の中にあって欲しいと思います。


他方、数年前まで五千円札の顔であった新渡戸稲造は、その著書「武士道」の中で、「日本の伝統文化(武士道)には2つのものが欠けており、そのひとつが数理科学的思考である」と述べています。伝統的な文化というものは、常に不完全なものなのでしょう。

TUTロボコンチームは、インドで大活躍でした。今後、彼らが新しい日本の技術と文化を創っていってくれることを願っています。

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Chapter03

第25回(平成20年度)オープンキャンパス/広報室
オープンキャンパス受付付近の様子第25回目となる平成20年度オープンキャンパスを、8月2日(土)に開催しました。当日は晴天に恵まれ、北海道から宮崎県までの全国25の都道府県から、本学にとって過去最高となる1,300人を超える参加者がありました。

今年は昨年の約2.8倍となる83の「研究室公開」を開催し、また、特別企画として、『パラサイト・イヴ』等の著書で有名な瀬名秀明氏(作家・東北大学機械系特任教授)の特別講演会と小中学生向け体験学習教室を開催するなど、盛りだくさんな内容のオープンキャンパスとなりました。

<瀬名秀明氏特別講演会>
瀬名氏は「生命の知、テクノロジーの夢」と題して特別講演を行い、ユーモアを交えつつロボット工学を紹介し、工学と生物学との深い関わりについて語りました。また、講演後、榊佳之学長と「生命は最高の機械(マシン)か?」というテーマで対談を行い、未来に向けてのサイエンスのあり方について意見を交わしました。聴講していた参加者は、二人の話に真剣に聞き入り、「これからの研究は複合分野からのアプローチが大切であり、積極的に取り組んでいってほしい。」という次世代を担う受験生や学生に向けたメッセージに、大きくうなずいていました。未来のサイエンスを支える若い人たちに、大いに刺激となった講演会と討論会になりました。
対談:瀬名氏(右)と榊学長(左)
講演する瀬名秀明氏 対談:瀬名氏(右)と榊学長(左)

書店特設ブースにて、瀬名さんと榊学長のサイン本の販売が行われました。
瀬名さんはサインの際、何冊かに絵を描いてくれました。あなたの本には、何が描かれていたでしょうか?

<小中学生向け体験学習教室>
8つのテーマに分かれて小中学生向けに体験・実習形式のイベントを開催しました。子どもたちとその保護者の方々が詰めかけ、会場は超満員で参加者の熱気に包まれていました。
スライムや空気砲の工作やコンピュータプログラムの作成等を体験した子どもたちは、みんな笑顔で、つくることの楽しさを実感してくれたようです。これをきっかけに、理科・科学に興味をもってもらえたらとてもうれしいです。この中から未来の科学者が生まれるかもしれませんね。
「空気砲を作ろう!」 スライム作りの様子
「空気砲を作ろう!」 「かたいスライム・やわらかいスライム」

<入試案内プログラム等>
大講義室で入試概要等を説明する「入試案内」を午前・午後各1回行いました。また、各課程・専攻ごとの教員に直接相談し、担当職員に入試・修学・学生生活等に関する質問ができる相談コーナーを設け、受験生や保護者の方の疑問にお答えしました。また、技科大生自身が質問に答えるブース(何でも聞こう「学生相談」)を併設しました。受験生や保護者の方々は、熱心に説明を聞いていました。本学の入試制度や課程・専攻の特色等、ご理解いただけたでしょうか。本学では、受験生や保護者の方からの質問にいつでもお答えしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
入試案内 課程・専攻ごとの相談コーナー
入試案内 技科大生による相談コーナー
課程・専攻ごとの相談コーナー 課程・専攻ごとの相談コーナー
課程・専攻ごとの相談コーナー

<研究室公開、体験学習、施設の開放・公開、見学ツアー>
今年は83の「研究室公開」、8つの「体験学習」、3つの「施設開放・公開」(附属図書館、情報メディア基盤センター、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー)を開催しました。また、これら研究室等を効率良く見学できる「見学ツアー」を実施しました。普段は目にすることのできない実験室や研究室を見学したり、最先端の研究・技術に実際に触れたりすることができたと思います。本学で行われている様々な研究内容に、驚きの表情を見せる訪問者がとても多く見られました。
機械システム工学系の研究室公開 生産システム工学系の研究室公開
電気・電子システム工学系の研究室公開 情報システム工学系の研究室公開
物質工学系の研究室公開 建設工学系の研究室公開
知識情報工学系の研究室公開 エコロジー工学系の研究室公開
研究室公開の様子

<課外活動団体紹介>
ロボコン同好会、自動車研究部、アニメーション&コミック研究会、茶道部、吹奏楽団、アカペラサークル、総合文化部の7団体の学生たちが、それぞれの部・サークルの魅力や活動内容を紹介・発表しました。今年のNHK大学ロボコンで全国優勝を果たしたロボコン同好会は、過去のロボコン大会出場マシンの実演・展示を行い、ロボット好きなチビッコたちは自らの手でロボットを操作できて感激の様子でした。吹奏楽部は、開学30周年記念事業の一環として昨年オープンした学生交流会館前で、演奏会を開き、オープンキャンパスをにぎやかに盛り上げてくれました。茶道部は、初めてお茶を体験する子どもたちに、親切に作法を教えていました。日本の文化も感じられるオープンキャンパスの一幕でした。
ロボコン同好会 茶道部
ロボコン同好会(NKHロボコン参加マシン実演) 茶道部によるお茶会体験
吹奏楽団 自動車研究部
吹奏楽団の演奏 自動車研究部:学生フォーミュラカー展示

(参加者の声:アンケートより)
・    いろいろな研究が行われていることが分かった。
・    学生やスタッフが親切に対応してくれてうれしかったです。
・    技科大のキャンパスや学生の雰囲気がわかって良かった。
・    1日では回りきれないほどたくさんの研究室が公開されていた。
・    この大学に入学できるよう、努力していきたい。
・    体験学習に参加できて良かった。
・    学食が食べられて良かった。味もおいしかった。
・    (小中学生向け体験学習教室について)とても素晴らしい企画なので、もっとたくさんの人に知ってもらって、より多くの人が参加できたら良いですね。

本年度は新しい試みが多く、うまくいくかどうかとても不安でありましたが、多くの参加者と大学内の教員・職員の努力のおかげで、成功裏に終わることができました。来年度は、より多くの方にもっと満足していただけるオープンキャンパスにしていきたいと思っています。

最後になりましたが、お越しいただいたたくさんの皆様、オープンキャンパスを盛り上げてくれた教職員・学生の皆様、本当にありがとうございました。
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